97 / 236
第15章『死者還り』
第82話
しおりを挟む
「おまたせしました」
マントを羽織った私を見て、男の子は目を輝かせている。
《お姉さん、かっこいい!》
「ありがとうございます」
折原さんはふっと微笑んで、バッジと箒を交互に見つめていた。
「かっこいいな」
「私なんて、まだまだ未熟で…」
「それでも、必死に食らいついてるんだろ?それに、笑顔で相手と話せればそれだけで幸せな気持ちは伝染していく」
折原さんもそうだけど、男の子ももう緊張した様子はない。
寧ろ楽しそうに笑っていて、私の学校に興味津々みたいだった。
「あと、私のことは詩乃でいい。年が近い相手に折原って呼ばれると距離を感じるから」
「分かりました。よろしくお願いします、詩乃さん」
《僕も名前で呼んでほしいな》
そういえば、この子の名前を聞いていなかった。
しゃがんで男の子と視線をあわせて、早速訊いてみることにする。
「あなたのお名前を教えていただけますか?」
《…そうま》
「では、そうまさん。何か食べたいものはありますか?」
《えっと…お子様ランチ》
「どんなものが入ってるやつがいいんだ?」
《えっと、ハンバーグとか、エビフライとか…》
「今なら調理室があいているはずなので、材料を用意してきますね」
エビフライは揚げると完成するものにして、ハンバーグは必要な材料を揃えて…買い出しして調理室に行くと、詩乃さんがご飯を炊いてくれていた。
「設備の使用許可は先生にとってもらってる」
「室星先生、ですか?」
「うん。あんまり喋らないけどいい人なんだ」
てきぱき用意してお皿に盛りつけていると、そうまさんが目を輝かせていた。
《すごい、お店のだ!》
「お店ほど上手にはできませんでしたが、お召しあがりください」
「こっちもできたからどうぞ」
ふわふわ卵に包まれたバターライスの香りがここまで広がって、詩乃さんが持っているお皿が光って見えた。
《ふわふわオムライス、食べてみたかったんだ…。でも、本当に食べていいの?》
「ゆっくりお召しあがりください」
《ありがとう。いただきます》
そうまさんは一口食べる度に、美味しいと感動していた。
喜んでもらえたなら作ったかいがある。
けど、ここから先のことが不安だ。
詩乃さんの方を見ると、優しく声をかけてくれた。
「料理、得意なのか?」
「そこまでではないと思います」
「私はあんなに手際よくできないよ」
「し、詩乃さんみたいに、ふわふわに仕上げられません」
「あれはコツがあるんだ。今度教えるよ」
そんな話をしていると、かたんと箸が転がる音がする。
《あ、あ……》
「そろそろ時間みたいだ」
そうまさんの体はみるみるうちに透明になっていき、そのまま溶けるように消えてしまう。
「やっぱり氷空の仮説が合ってたみたいだ。行こう」
「は、はい」
できればおこってほしくなかったことが、目の前でおきてしまった。
今私にできることをせいいっぱいしよう…そう心に決め、箒を握る。
護られてばかりじゃいられない。
マントを羽織った私を見て、男の子は目を輝かせている。
《お姉さん、かっこいい!》
「ありがとうございます」
折原さんはふっと微笑んで、バッジと箒を交互に見つめていた。
「かっこいいな」
「私なんて、まだまだ未熟で…」
「それでも、必死に食らいついてるんだろ?それに、笑顔で相手と話せればそれだけで幸せな気持ちは伝染していく」
折原さんもそうだけど、男の子ももう緊張した様子はない。
寧ろ楽しそうに笑っていて、私の学校に興味津々みたいだった。
「あと、私のことは詩乃でいい。年が近い相手に折原って呼ばれると距離を感じるから」
「分かりました。よろしくお願いします、詩乃さん」
《僕も名前で呼んでほしいな》
そういえば、この子の名前を聞いていなかった。
しゃがんで男の子と視線をあわせて、早速訊いてみることにする。
「あなたのお名前を教えていただけますか?」
《…そうま》
「では、そうまさん。何か食べたいものはありますか?」
《えっと…お子様ランチ》
「どんなものが入ってるやつがいいんだ?」
《えっと、ハンバーグとか、エビフライとか…》
「今なら調理室があいているはずなので、材料を用意してきますね」
エビフライは揚げると完成するものにして、ハンバーグは必要な材料を揃えて…買い出しして調理室に行くと、詩乃さんがご飯を炊いてくれていた。
「設備の使用許可は先生にとってもらってる」
「室星先生、ですか?」
「うん。あんまり喋らないけどいい人なんだ」
てきぱき用意してお皿に盛りつけていると、そうまさんが目を輝かせていた。
《すごい、お店のだ!》
「お店ほど上手にはできませんでしたが、お召しあがりください」
「こっちもできたからどうぞ」
ふわふわ卵に包まれたバターライスの香りがここまで広がって、詩乃さんが持っているお皿が光って見えた。
《ふわふわオムライス、食べてみたかったんだ…。でも、本当に食べていいの?》
「ゆっくりお召しあがりください」
《ありがとう。いただきます》
そうまさんは一口食べる度に、美味しいと感動していた。
喜んでもらえたなら作ったかいがある。
けど、ここから先のことが不安だ。
詩乃さんの方を見ると、優しく声をかけてくれた。
「料理、得意なのか?」
「そこまでではないと思います」
「私はあんなに手際よくできないよ」
「し、詩乃さんみたいに、ふわふわに仕上げられません」
「あれはコツがあるんだ。今度教えるよ」
そんな話をしていると、かたんと箸が転がる音がする。
《あ、あ……》
「そろそろ時間みたいだ」
そうまさんの体はみるみるうちに透明になっていき、そのまま溶けるように消えてしまう。
「やっぱり氷空の仮説が合ってたみたいだ。行こう」
「は、はい」
できればおこってほしくなかったことが、目の前でおきてしまった。
今私にできることをせいいっぱいしよう…そう心に決め、箒を握る。
護られてばかりじゃいられない。
0
あなたにおすすめの小説
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
【完結】探さないでください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
私は、貴方と共にした一夜を後悔した事はない。
貴方は私に尊いこの子を与えてくれた。
あの一夜を境に、私の環境は正反対に変わってしまった。
冷たく厳しい人々の中から、温かく優しい人々の中へ私は飛び込んだ。
複雑で高級な物に囲まれる暮らしから、質素で簡素な物に囲まれる暮らしへ移ろいだ。
無関心で疎遠な沢山の親族を捨てて、誰よりも私を必要としてくれる尊いこの子だけを選んだ。
風の噂で貴方が私を探しているという話を聞く。
だけど、誰も私が貴方が探している人物とは思わないはず。
今、私は幸せを感じている。
貴方が側にいなくても、私はこの子と生きていける。
だから、、、
もう、、、
私を、、、
探さないでください。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
同期に恋して
美希みなみ
恋愛
近藤 千夏 27歳 STI株式会社 国内営業部事務
高遠 涼真 27歳 STI株式会社 国内営業部
同期入社の2人。
千夏はもう何年も同期の涼真に片思いをしている。しかし今の仲の良い同期の関係を壊せずにいて。
平凡な千夏と、いつも女の子に囲まれている涼真。
千夏は同期の関係を壊せるの?
「甘い罠に溺れたら」の登場人物が少しだけでてきます。全くストーリには影響がないのでこちらのお話だけでも読んで頂けるとうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる