皓皓、天翔ける

黒蝶

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第15章『死者還り』

閑話『知らないところで』

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星影氷空は列車の中でよく倒れる。
それは今回も同じらしい。
「なあ、氷空は大丈夫なのか?」
「一応怪我はしてないみたいだけど、もう少し見ておく」
何故倒れるのか分からないが、ただの寝不足というわけではなさそうだ。
「まさかおまえにパートナーができるとは思わなかった」
「…別に、パートナーってほどの関係じゃない」
「ならどういう関係なんだ?」
室星のこういうところが狡いと思う。
問いただすような尋ね方ではなく、あくまで相手が話すのを待つスタイル…俺も少なからず影響を受けているのかもしれない。
「仕事仲間」
「それにしては仲よさげに見えたけどな…」
夜紅はなんだか嬉しそうにしているけど、状況が呑みこめていない。
相変わらず彼女は起きそうにないし、無理に起こす必要もないだろう。
「いつもそうなるのか?」
「うん。あと、何か隠してるみたいだけど無理に聞こうとは思っていない」
「話しづらいことかもしれないって思ってるんだろうけど、氷空はおまえに聞いてほしいと思ってるんじゃないか?」
夜紅は人を見る目に長けている。
そんな彼女がそう感じるならそうなのかもしれない。
だが、俺が深入りすればするほど戻れなくなる。
「…怖いのか?」
「おまえには分かるんじゃない?」
「まあ、そうだな。折原にも理解できるだろう」
「何の話だ?」
「大切な相手を失う恐怖」
室星の答えに、夜紅ははっとした顔でこちらを見つめる。
「大切な相手がいたのか。…まあ、私より長生きだし不思議じゃないか」
室星の絶望も、夜紅の絶望も、色々あって過去のものになった。
だが、俺は違う。
【氷雨?それとも、宵月って呼んだ方がいい?】
目を閉じれば思い出される光景。
決して赦されない罪を背負い、今ここに立っている。
誰にも知られなくていい。
結局室星には知られてしまったが、できれば話さずに過ごしたいと思っている。
「本当に大切にしたいものを見失うな。あのことがおまえにとって大切なのは分かっているつもりだ。
だが、他の大切なものまで手放す必要はない」
室星は友人として言ってくれている。
だが、俺にそんな権利があるのだろうか。
「…他のことを始末してくる。また授業でな、車掌」
「俺ももう行く。…ひとりじゃないってことを忘れるな」
ふたりはそれだけ話してどこかへ行ってしまった。
…肩にかかった重みが少し心地いいのは、ここだけの話だ。
何故いつもうなされているのか、涙を流しているのか…聞きたいことは沢山ある。
ただ、一緒にいても不快な気持ちにならない。
寧ろ心地いい、手放したくないとさえ思っている。
明るく照らす月とは裏腹に、心がぐちゃぐちゃに黒くなるのを感じた。
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