皓皓、天翔ける

黒蝶

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第16章『怖い帰り』

第87話

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「…というわけで、授業はここまで。分からないところがあれば遠慮なく質問してほしい」
室星先生の授業は分かりやすかった。
傷が少し痛むけど、そんなことなんか気にならなくなるくらい没頭した授業は初めてかもしれない。
いつもみたいに屋上へ行くと、久しぶりに氷雨君が来ていた。
「あの、お弁当…」
「わざわざ作ってきてくれたの?来るかどうか分からない俺に」
「今日からはいるんじゃないかって、矢田さんが教えてくれたから…」
「ありがとう」
氷雨君が食べようとしたところで誰かが入ってきた。
一瞬知らない人かと思って身構えたけど、顔を見て少しほっとする。
「やっぱりここにいた」
「他校の教師とその助手的な学生が入っていいの?」
「悪い。他にいられそうな場所がなくてな」
「あ、あの…授業、とても分かりやすかったです」
詩乃さんも室星先生も驚いた顔をしていたけど、ふっと微笑んで腰をおろした。
「それならよかった。そろそろ学園に戻るから、ここの生徒たちにどう受け止められたのか知りたかったんだ」
「そう、なんですね」
少し寂しい気もするけど、ふたりの目的が達成されたならそれでいい。
「何かあったときのために、私の連絡先も教えておくよ」
「いいんですか?」
「うん。いつでも連絡してくれ」
「あ、ありがとうございます」
詩乃さんはちらっと室星先生を見て、そのままどこかへ行ってしまった。
そういえば、氷雨君と室星先生はお友だちみたいなものだと言っていたし、私も離れた方がいいのかもしれない。
「それじゃあ、私もこれで失礼します」
「え?ちょっと…」
ご飯は食べきったし、今はふたりで話す時間を邪魔したくない。
何か言いかけていた気がするけど、そのまま駅に向かうことにした。
「やっちん、これってどう着るの?」
「それ、僕に訊くの?」
聞こえてきたのは、矢田さんの声と知らない人の声。
入っていいのか分からず戸惑っていると、がちゃりとドアが開いた。
「ごめんね、氷空ちゃん。僕は彼女に用があって…」
「えっと…はじめまして、ですよね」
「あ、はじめまして!長田雪です。今日から列車でお仕事することになりました。よろしくね」
「ほ、星影氷空です。こちらこそ、よろしくお願いします」
緊張して上手く話せなかったけど、長田さんはにっこり笑ってくれた。
「そ、そのローブは、パーカーを羽織るようにすると、多分…」
「こう?」
「は、はい」
「ありがとう。やっちんに聞いてばかりもいられないから、どうしようかと思ってたんだ」
「やっちん…?」
「ちょっと、それらふたりのとき以外禁止って言ったでしょ?ここは職場なんだから」
「そうだった!ごめん」
どうやらこのふたりは知り合いらしい。
もしかすると、それ以上に深い仲なのだろうか。
しばらくしてから、氷雨君に全員集められる。
「おまたせしました。今夜は荒れる可能性がありますので、各自気を引き締めてください」
どう危険なんだろうと考えていると、氷雨君に手招きされる。
「今夜の担当場所、危ないから離れないで」
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