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第16章『怖い帰り』
第89話
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「開けられる前にあれについて少し説明しておく」
氷雨君は持っていた紙に書きながら、ゆっくり解説してくれた。
「あれは妖の類のもので、お客様…死霊を喰らうんだ。それで力を得て、列車ごと破壊しようとしてる」
もしそうなってしまったら、確実にお客様に危険が及ぶ。
「本来であればマスクをつけておいてほしいけど、取りに行ってもらう時間がない」
「周りの瘴気を吸っちゃったら危ないってこと…?」
「うん。生身の人間が長時間相手していいものじゃない」
話を聞いている間にも扉にがんがん体当たりされているようで、扉が変形してきている。
もっと氷を出そうと箒をかまえたら氷雨君に止められた。
「もうちょっと待って。今霊力を削ると確実に後で大変なことになるから」
「分かった。私にできること、何かある?」
「ここにいて。それだけでいい」
その言葉に頷くと同時に扉が破壊された。
相手は奇声をあげながら棒のようなものを振り回している。
《開イタアア!》
嬉しそうに叫ぶその人にも、何か悲しい過去があるのだろうか。
「しゃがんで」
言われたとおりしゃがむと、頭上を真っ黒な煙が通過していった。
暴走者と違って、煤が全身を覆っているみたいだ。
「…これだから死者還りの後の仕事は面倒なんだ」
氷雨君はそう呟いて、両手から小さな旋風を出して相手に当てる。
《イヤ、ナンデ…?》
「ここはあなたが来る場所ではありません」
《強クナッタラモウ怒ラレナイノ。怒ラレタクナイ…怒ラレタクナイノオオ!》
ものすごい速さで突風を避けて、黒コートをひらひらさせなからこちらに迫ってくる。
「や、やめてください。一旦落ち着いてくださ、」
《怒ラレタクナイノ…》
「ど、どなたにかは分かりませんが、怒られたくない気持ちは分かります。だから、一旦話をしませんか?」
《話…》
「私でよければ、色々聞かせてください」
《怒ラナイノ…?》
「怒りません」
そっと黒コートごと抱きしめると、妖らしき人は泣きはじめた。
正直少し煤を吸いこんでしまって苦しいけど、今はそんなことより少しでも苦しみを取り除く手助けがしたい。
《強くなイナラいラナいって、あの人に言ワレテ…》
「あなたはとても強いです。精神面でも、戦い方も」
《本当?》
「私はそう感じました」
ただの妖かと思っていたけど、そういうわけではないみたいだ。
「失礼ですが、あなたは捨てられた式神ですか?」
《多分アノ人ハ私を捨てた》
「そうでしたか。…一先ず今は休んでください。もう人間の魂を喰らおうとしないなら、あなたさまもお客様です」
《……いいの?》
「あ、あの…飲み物、持ってきます」
《ありがとう…》
さっきまで表情がなかったのに、体を離すときにちらっと見えたのはゆるゆる微笑む優しい顔だった。
だいぶ落ち着いたみたいで安心する。
ただ、捨てられた式神とはどういうことだろう。
氷雨君は持っていた紙に書きながら、ゆっくり解説してくれた。
「あれは妖の類のもので、お客様…死霊を喰らうんだ。それで力を得て、列車ごと破壊しようとしてる」
もしそうなってしまったら、確実にお客様に危険が及ぶ。
「本来であればマスクをつけておいてほしいけど、取りに行ってもらう時間がない」
「周りの瘴気を吸っちゃったら危ないってこと…?」
「うん。生身の人間が長時間相手していいものじゃない」
話を聞いている間にも扉にがんがん体当たりされているようで、扉が変形してきている。
もっと氷を出そうと箒をかまえたら氷雨君に止められた。
「もうちょっと待って。今霊力を削ると確実に後で大変なことになるから」
「分かった。私にできること、何かある?」
「ここにいて。それだけでいい」
その言葉に頷くと同時に扉が破壊された。
相手は奇声をあげながら棒のようなものを振り回している。
《開イタアア!》
嬉しそうに叫ぶその人にも、何か悲しい過去があるのだろうか。
「しゃがんで」
言われたとおりしゃがむと、頭上を真っ黒な煙が通過していった。
暴走者と違って、煤が全身を覆っているみたいだ。
「…これだから死者還りの後の仕事は面倒なんだ」
氷雨君はそう呟いて、両手から小さな旋風を出して相手に当てる。
《イヤ、ナンデ…?》
「ここはあなたが来る場所ではありません」
《強クナッタラモウ怒ラレナイノ。怒ラレタクナイ…怒ラレタクナイノオオ!》
ものすごい速さで突風を避けて、黒コートをひらひらさせなからこちらに迫ってくる。
「や、やめてください。一旦落ち着いてくださ、」
《怒ラレタクナイノ…》
「ど、どなたにかは分かりませんが、怒られたくない気持ちは分かります。だから、一旦話をしませんか?」
《話…》
「私でよければ、色々聞かせてください」
《怒ラナイノ…?》
「怒りません」
そっと黒コートごと抱きしめると、妖らしき人は泣きはじめた。
正直少し煤を吸いこんでしまって苦しいけど、今はそんなことより少しでも苦しみを取り除く手助けがしたい。
《強くなイナラいラナいって、あの人に言ワレテ…》
「あなたはとても強いです。精神面でも、戦い方も」
《本当?》
「私はそう感じました」
ただの妖かと思っていたけど、そういうわけではないみたいだ。
「失礼ですが、あなたは捨てられた式神ですか?」
《多分アノ人ハ私を捨てた》
「そうでしたか。…一先ず今は休んでください。もう人間の魂を喰らおうとしないなら、あなたさまもお客様です」
《……いいの?》
「あ、あの…飲み物、持ってきます」
《ありがとう…》
さっきまで表情がなかったのに、体を離すときにちらっと見えたのはゆるゆる微笑む優しい顔だった。
だいぶ落ち着いたみたいで安心する。
ただ、捨てられた式神とはどういうことだろう。
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