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第18章『侵入』
閑話『関わり』
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「リーダーさん」
「…長田さん、知らせてくださりありがとうございました。おかげで彼女を死なせずすみました」
なんだか少し様子がおかしい星影氷空を、今は別室で休ませている。
なんとなく、ひとりになりたいように見えたから。
「あの、ひとつ訊いてもいいですか?」
「私に答えられることなら」
「氷空ちゃんって自分が好きじゃないんですか?」
「雪、それは…」
「──おそらくそうでしょうね」
矢田は止めようとしたが、別にその程度答えるなら問題ないだろう。
「本人に直接尋ねたことはないのですが、似たようなことがありましたので」
「そうなんですね。…もっと自由に生きればいいのに」
長田雪は思ったより鋭いようだ。
それとも、矢田が話したのだろうか。
「長田さんは彼女についてどこまで知っているんですか?」
「多分、私とは違うってことは分かります。私は運悪く死んじゃって、その結果ここにいますけど、氷空ちゃんは雰囲気が違うので…。
あと、なんだか危なげで放っておけないです」
「…そうですか」
長田雪の言葉に矢田がため息を吐く。
「それはまあ、僕たちとは違うけど…危なげというより儚い感じじゃない?…って、僕は思います」
「たしかにそうかもしれませんね」
今にも消えてしまいそうな雰囲気を、俺はよく知っている。
【宵月?…そっか。じゃあ、他の名前は私が考えるよ】
今思えば、すぐに消えてしまいそうな雰囲気だった。
「リーダー?」
「…すみません。彼女のことは任せて、ふたりはこのまま直帰してください。今宵もお疲れ様でした」
半ば強引にふたりを帰し、ぼんやりしている思考をまとめる。
星影氷空との関係は、そう簡単に言葉で表現できるものではない。
ただ、居心地がいいと感じる自分がいるのもたしかだ。
…そして、ある人物と重ね合わせてしまうことも。
「入るよ」
「氷雨君…」
また泣いていたのか。
「これ使って」
「でも、」
「いいから。目をこすったら腫れがひかなくなる。これも使って目を冷やして」
「…ありがとう」
はじめ見たときはできる限り関わらない方向でいくつもりだった。
だが、先程の言葉が本心ならそういうわけにもいかない。
「…本当に俺のこと、知りたいの?」
「うん。ちゃんと知れたらいいなって思ってる。だけど、話したくないことを無理矢理聞き出そうとは思ってない。
誰にも言えないことや言いたくないことがあるってことくらい、私も分かっているから」
彼女は目を冷やしながらそう答える。
「…そう」
誰にも話さず曖昧にしておくつもりだった。
だが、彼女のことなら信じてみてもいいのかもしれない。
これから関係がどうなっていくかは予想もできないが、俺ももう少し彼女に踏みこみたいと思った。
「…長田さん、知らせてくださりありがとうございました。おかげで彼女を死なせずすみました」
なんだか少し様子がおかしい星影氷空を、今は別室で休ませている。
なんとなく、ひとりになりたいように見えたから。
「あの、ひとつ訊いてもいいですか?」
「私に答えられることなら」
「氷空ちゃんって自分が好きじゃないんですか?」
「雪、それは…」
「──おそらくそうでしょうね」
矢田は止めようとしたが、別にその程度答えるなら問題ないだろう。
「本人に直接尋ねたことはないのですが、似たようなことがありましたので」
「そうなんですね。…もっと自由に生きればいいのに」
長田雪は思ったより鋭いようだ。
それとも、矢田が話したのだろうか。
「長田さんは彼女についてどこまで知っているんですか?」
「多分、私とは違うってことは分かります。私は運悪く死んじゃって、その結果ここにいますけど、氷空ちゃんは雰囲気が違うので…。
あと、なんだか危なげで放っておけないです」
「…そうですか」
長田雪の言葉に矢田がため息を吐く。
「それはまあ、僕たちとは違うけど…危なげというより儚い感じじゃない?…って、僕は思います」
「たしかにそうかもしれませんね」
今にも消えてしまいそうな雰囲気を、俺はよく知っている。
【宵月?…そっか。じゃあ、他の名前は私が考えるよ】
今思えば、すぐに消えてしまいそうな雰囲気だった。
「リーダー?」
「…すみません。彼女のことは任せて、ふたりはこのまま直帰してください。今宵もお疲れ様でした」
半ば強引にふたりを帰し、ぼんやりしている思考をまとめる。
星影氷空との関係は、そう簡単に言葉で表現できるものではない。
ただ、居心地がいいと感じる自分がいるのもたしかだ。
…そして、ある人物と重ね合わせてしまうことも。
「入るよ」
「氷雨君…」
また泣いていたのか。
「これ使って」
「でも、」
「いいから。目をこすったら腫れがひかなくなる。これも使って目を冷やして」
「…ありがとう」
はじめ見たときはできる限り関わらない方向でいくつもりだった。
だが、先程の言葉が本心ならそういうわけにもいかない。
「…本当に俺のこと、知りたいの?」
「うん。ちゃんと知れたらいいなって思ってる。だけど、話したくないことを無理矢理聞き出そうとは思ってない。
誰にも言えないことや言いたくないことがあるってことくらい、私も分かっているから」
彼女は目を冷やしながらそう答える。
「…そう」
誰にも話さず曖昧にしておくつもりだった。
だが、彼女のことなら信じてみてもいいのかもしれない。
これから関係がどうなっていくかは予想もできないが、俺ももう少し彼女に踏みこみたいと思った。
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