皓皓、天翔ける

黒蝶

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第20章『聖夜の願い』

第111話

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もうすぐ2学期も終わる。
結局私が列車に乗れた理由は分からないけど、それなりに楽しく過ごせているからそれでいい。
「…テスト、大丈夫だった?」
「うん。それにしても、氷雨君はすごいね」
「別に。大したことじゃない」
全教科ほぼ満点でそれを言われたら、私の点数なんてゴミみたいなものだ。
「いつ勉強してるの?」
「授業以外は、列車の中で暗記教科をやってる。あとは企業秘密」
「秘密なんだ」
私が作ったお弁当を食べながら、氷雨君は白い息を吐いた。
「あの、これ…」
「もらっていいの?」
「どうぞ」
「なら、交換」
「え…?」
温かいココアの缶を渡されて、温かいお茶と交換する。
飲もうとしたけど、上手く飲めなかった。
「嫌いだった?」
「そうじゃなくて、その…」
「お客様のことを思い出した?」
その問いかけに、小さく頷く。
ミルクセーキを飲んで笑っていたお客様のことが頭にちらついて、上手く切り替えられていない。
「…あの家、今大揉めになってるらしい」
「そうなの?」
「詳しいことは知らないけど…答え、なくさないようにね。…弁当箱、洗って返すから」
相変わらず日課は続いているけど、少し変わったのは氷雨君がお礼にお菓子を持ってきてくれるようになったことだ。
毎日別のお菓子を少しずつくれる。
この前はチョコレートだったし、その前は豆菓子で…今日返ってきたお弁当袋にはクッキーが入っていた。


「…というわけで、今夜もよろしくお願いします」
今日も検査だからとおばさんには会えなかった。
こんなに電話越しでしか話せない日が増えると心配になる。
「行こう」
「…うん」
花だけは届けてもらえているけど、次は何を渡してもらおうか…なんて考えながら、1階の掃除を進めていく。
「今夜はこの車両の掃除が終わったら、あとはヘルプ」
「分かった」
氷雨君と少しだけ話して、その後は黙々と掃除を終わらせた。
ひと息つこうと思っていると、後ろから誰かにぶつかられる。
《あ…ご、ごめんなさい!》
「いえ。お客様、お怪我はありませんか?」
《私は大丈夫です》
ぬいぐるみと手を繋いでいる、パジャマを着た女の子が困り顔で立っている。
《あの、迷子になっちゃって…自分の席が分からなくなっちゃったんです》
「それなら、ここでゆっくり休んでいってください。今掃除が終わったばかりなので、汚れているところはないと思います」
《ありがとうございます》
この子がどの車両から来たか分からない以上、沢山歩かせてしまうのは申し訳ない。
ワゴンを持ってきて、話を聞いてみることにした。
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