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第20章『聖夜の願い』
第114話
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「約束の話をお聞きしてもかまいませんか?」
《…友ちゃんと、一緒に雪を見ようって話してたんだ。だけどもう、それも叶えられないんだね》
女の子はとうとう泣きはじめた。
彼女にとって心の支えになっていたであろう約束は、残念ながら守ることができずに終わってしまったのだ。
孤独に押しつぶされそうだった彼女にとって、希望の光だったに違いない。
なんとかしたいけど、今できるのはハンカチを渡すことだけだった。
「ずっと辛い治療にも耐えて、沢山頑張ってきたんですね」
《でも、私はもう雪を見られない…。それじゃ駄目なの》
どうしようか迷っていると、氷雨君が別のカートを押して入ってきた。
「お客様、どうされましたか?」
《友ちゃんとの約束、守れない…》
氷雨君が首を傾げていたので、かいつまんで事情を説明した。
私にできないことでも、彼なら何かいいアイデアが浮かぶかもしれない。
「…残念ながら、あなたのご友人はあなたの姿を視ることはできないでしょう。それでも会いたいですか?」
《…!約束、叶えられるの?》
「難しいですが、なんとかできるようにします」
《ありがとう!》
「今はこの車両でゆっくりお休みになっていてください」
氷雨君に手を引かれて、一旦車両を離れる。
「どうやってお客様の願いを叶えるの?」
「…極稀に、徳が高い人に願いを叶える権利が与えられる場合がある。彼女はそれに選ばれたんだ。
相手に危害をくわえる以外のことなら、基本的になんでも叶えられる」
「そんな制度もあるんだね」
やっぱり列車のことは分からないことだらけだけど、氷雨君のおかげで思考がまとまった。
ただ、何故か申し訳なさそうな顔で私を見ている。
「氷雨君?」
「…ごめん。あのお客様に憑かれて」
一瞬何を言われたのか分からなかった。
憑かれるというのは、おそらく取り憑かれるという意味で…どうして私なんだろう。
「怖い?」
「ううん。ちょっと戸惑ってるけど、どうして私なの?」
「君が1番心を開かれているから。…無関係な人に取り憑くと、そのまま体を乗っ取られる可能性があるんだ」
辛い治療を我慢してきた女の子に、少しでいいから笑ってほしい。
「私にできることならなんでもやる」
「乗っ取られるかもしれないのに、それでもやるの?」
「うん。ずっと寂しそうに笑っていたから…さいごくらいほかほか笑顔が見たい」
多分死んだ人に取り憑かれるなんて初めてだけど、あの子の願いを叶えられるならやってみたい。
「俺が隣にいるから」
「ありがとう」
車両に戻って、氷雨君が女の子に説明する。
氷雨君の指示通りに動いた女の子の重みがずっしり肩にのった。
「では、行きましょうか」
《…友ちゃんと、一緒に雪を見ようって話してたんだ。だけどもう、それも叶えられないんだね》
女の子はとうとう泣きはじめた。
彼女にとって心の支えになっていたであろう約束は、残念ながら守ることができずに終わってしまったのだ。
孤独に押しつぶされそうだった彼女にとって、希望の光だったに違いない。
なんとかしたいけど、今できるのはハンカチを渡すことだけだった。
「ずっと辛い治療にも耐えて、沢山頑張ってきたんですね」
《でも、私はもう雪を見られない…。それじゃ駄目なの》
どうしようか迷っていると、氷雨君が別のカートを押して入ってきた。
「お客様、どうされましたか?」
《友ちゃんとの約束、守れない…》
氷雨君が首を傾げていたので、かいつまんで事情を説明した。
私にできないことでも、彼なら何かいいアイデアが浮かぶかもしれない。
「…残念ながら、あなたのご友人はあなたの姿を視ることはできないでしょう。それでも会いたいですか?」
《…!約束、叶えられるの?》
「難しいですが、なんとかできるようにします」
《ありがとう!》
「今はこの車両でゆっくりお休みになっていてください」
氷雨君に手を引かれて、一旦車両を離れる。
「どうやってお客様の願いを叶えるの?」
「…極稀に、徳が高い人に願いを叶える権利が与えられる場合がある。彼女はそれに選ばれたんだ。
相手に危害をくわえる以外のことなら、基本的になんでも叶えられる」
「そんな制度もあるんだね」
やっぱり列車のことは分からないことだらけだけど、氷雨君のおかげで思考がまとまった。
ただ、何故か申し訳なさそうな顔で私を見ている。
「氷雨君?」
「…ごめん。あのお客様に憑かれて」
一瞬何を言われたのか分からなかった。
憑かれるというのは、おそらく取り憑かれるという意味で…どうして私なんだろう。
「怖い?」
「ううん。ちょっと戸惑ってるけど、どうして私なの?」
「君が1番心を開かれているから。…無関係な人に取り憑くと、そのまま体を乗っ取られる可能性があるんだ」
辛い治療を我慢してきた女の子に、少しでいいから笑ってほしい。
「私にできることならなんでもやる」
「乗っ取られるかもしれないのに、それでもやるの?」
「うん。ずっと寂しそうに笑っていたから…さいごくらいほかほか笑顔が見たい」
多分死んだ人に取り憑かれるなんて初めてだけど、あの子の願いを叶えられるならやってみたい。
「俺が隣にいるから」
「ありがとう」
車両に戻って、氷雨君が女の子に説明する。
氷雨君の指示通りに動いた女の子の重みがずっしり肩にのった。
「では、行きましょうか」
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