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休息『年末年始の話』
年末の話
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「皆さん、今年もお疲れ様でした」
車掌一同が列車を降り、今年最後の運行を終えた。
…といっても、年を越すのは列車の上になるが。
ここにいるメンバーのほとんどは別場所で年越しできるが、車掌を取りまとめる役目である以上簡単に休めない。
翌日はきっとひとりで忙しくなるだろう…そう思っていたのに。
「氷雨君、手伝わせて」
「家族と過ごさなくていいの?」
「クリスマスを一緒に過ごせたから、それだけで充分だよ。それに、すごく疲れてるみたいだったから休んでほしくて…」
「…そう」
流石に死期が迫っているとは伝えられず、そのまま全ての車両の掃除を進める。
「この前のプレゼント、本当にありがとう。なんだか勿体なくて今はこれしかつけてないけど、すごく嬉しかった」
彼女はなくさないように気をつけながらブレスレットを付けてくれているらしい。
ネックレスとセットにするとおしゃれになるとすすめられるままついでに買ったものだが、まさかここまで喜んでいるとは思わなかった。
「あとはもう帰るだけだし、蕎麦でも食べる?」
「え、いいの?」
「調理設備がついてる車両がある」
「それじゃあ、えっと…お邪魔します」
普段からあまり料理なんて作らないが、今日くらいはやってみよう。
近くに置かれていたレシピ本どおりに年越し蕎麦を完成させ、星影氷空に渡す。
「まずかったら言って」
「いただきます。…美味しい」
「…そう」
彼女が何故楽しそうにしているのか分からない。
ただ、いつもどおりの年越しが少しだけ明るいような気がする。
「いつも外で温かい缶コーヒーを飲んで終わりだったから、こんなふうに年越しするの初めて…。氷雨君はいつもここで蕎麦を食べながら年越ししてるの?」
「列車を動かさないわけにはいかないからね」
「そうなんだ…あ、よかったらどうぞ。家で作ってきたんだけど、食べる予定もなく余っちゃったから…」
「…いただきます」
クッキーを食べるのと同時に、ラジオから除夜の鐘の音が聞こえてくる。
「もうすぐ今年も終わりなんだね」
「しみじみする?」
「ううん。ただ、今年はちょっといい1年を過ごせたかもしれないって思ったんだ」
「…そう」
負担になっていないなら安心だ。
そこからは特に話すこともなく、そのまま年越しを迎えた。
「氷雨君、今年もよろしくお願いします」
「こちらこそ」
列車が駅に辿り着き、早く帰るよう促す。
「それじゃあ、また今夜」
「うん。また」
ポケットに入れたままだった彼女の連絡先を携帯に登録し、着替えをすませる。
…いつもより夜空が綺麗に見えたのは、慣れない年越しを経験したからだ。
車掌一同が列車を降り、今年最後の運行を終えた。
…といっても、年を越すのは列車の上になるが。
ここにいるメンバーのほとんどは別場所で年越しできるが、車掌を取りまとめる役目である以上簡単に休めない。
翌日はきっとひとりで忙しくなるだろう…そう思っていたのに。
「氷雨君、手伝わせて」
「家族と過ごさなくていいの?」
「クリスマスを一緒に過ごせたから、それだけで充分だよ。それに、すごく疲れてるみたいだったから休んでほしくて…」
「…そう」
流石に死期が迫っているとは伝えられず、そのまま全ての車両の掃除を進める。
「この前のプレゼント、本当にありがとう。なんだか勿体なくて今はこれしかつけてないけど、すごく嬉しかった」
彼女はなくさないように気をつけながらブレスレットを付けてくれているらしい。
ネックレスとセットにするとおしゃれになるとすすめられるままついでに買ったものだが、まさかここまで喜んでいるとは思わなかった。
「あとはもう帰るだけだし、蕎麦でも食べる?」
「え、いいの?」
「調理設備がついてる車両がある」
「それじゃあ、えっと…お邪魔します」
普段からあまり料理なんて作らないが、今日くらいはやってみよう。
近くに置かれていたレシピ本どおりに年越し蕎麦を完成させ、星影氷空に渡す。
「まずかったら言って」
「いただきます。…美味しい」
「…そう」
彼女が何故楽しそうにしているのか分からない。
ただ、いつもどおりの年越しが少しだけ明るいような気がする。
「いつも外で温かい缶コーヒーを飲んで終わりだったから、こんなふうに年越しするの初めて…。氷雨君はいつもここで蕎麦を食べながら年越ししてるの?」
「列車を動かさないわけにはいかないからね」
「そうなんだ…あ、よかったらどうぞ。家で作ってきたんだけど、食べる予定もなく余っちゃったから…」
「…いただきます」
クッキーを食べるのと同時に、ラジオから除夜の鐘の音が聞こえてくる。
「もうすぐ今年も終わりなんだね」
「しみじみする?」
「ううん。ただ、今年はちょっといい1年を過ごせたかもしれないって思ったんだ」
「…そう」
負担になっていないなら安心だ。
そこからは特に話すこともなく、そのまま年越しを迎えた。
「氷雨君、今年もよろしくお願いします」
「こちらこそ」
列車が駅に辿り着き、早く帰るよう促す。
「それじゃあ、また今夜」
「うん。また」
ポケットに入れたままだった彼女の連絡先を携帯に登録し、着替えをすませる。
…いつもより夜空が綺麗に見えたのは、慣れない年越しを経験したからだ。
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