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第21章『解けた糸』
第120話
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「おまたせいたしました」
《ありがとうございます。オムライス、家では自分の味しか食べられなかったからお店のが食べたくて…。いただきます》
ぼろぼろになるまで読みこまれたであろう本の表紙を撫でて、少年はスプーンを持つ。
一口食べたところで感動の声をあげた。
《美味しい…。こんなにふわふわなものだったなんて知りませんでした。
姉と一緒に専門店へ行くと約束していたけど、果たせないまま終わったから…》
「そう、ですか。あ、あの、おかわりもありますので、ゆっくりお楽しみください」
《ありがとうございます》
「あの、よろしければその本の話も聞かせていただけませんか?」
《…この本を持ち歩いてること自体忘れていたんですが、とても大切なものなんです》
少年のほっとした表情に、私もなんだか安心する。
ずっと緊張している様子だったけど、オムライスを食べながら教えてくれた。
《僕は、やっぱり理学療法士になりたい。姉とも約束したんです。夢だけは捨てないようにしようって。最近は医学部向けの勉強ばかりしていてすっかり忘れていたけど、やっぱり認めてほしい…。
分かりあえないんだろうけど、もうあの人たちから解放されたい。…そうか、だから姉さんみたいに飛び降りようと思ったんだ》
冷静に話しているものの、また瞳から光が消える。
《なんだ、もう終わってたのか。ただ、これでやっと姉さんに会える》
どんな言葉をかけたら、少年の心は救われるだろう。
お茶のおかわりを淹れていると、氷雨君がさり気なく言葉を紡いだ。
「あなたはまだ生き返るチャンスがあります」
《どういうことですか?》
「今のあなたは意識不明の重体です。現実に戻りたいですか?」
《…けど、僕が戻ったらまたあの人たちの言うことを聞かないといけなくなる。それならもういいです》
「…あなたを想っている人がいますが、それでも考えは変わりませんか?」
《どうせ嘘なんでしょう?慰めなんていらないです》
氷雨君はいつものように鏡を持ってきて、少年の手に握らせる。
「それがあなたの体の今です」
『あなたたちが賢人を追いつめたんです。あなたたちが殺したんでしょ!』
『麻里奈、やめなさい。…天堂さん、娘が失礼なことを言いました。
ですが、私もひとりの子どもを持つ親としてそう思います。あなたがたがやっていたことは虐待です』
『あれはしつけの一環で、』
『ご飯を食べさせない、お姉さんの自殺をもみ消す、価値観を押し付ける…それが親なんですか?
賢人は毎日泣いてた。私のお弁当を美味しいって言ってくれたけど、あなたたちに怒られるから黙っててくれた!
あなたたちは間違ってる!治療費は私のバイト代から出すから、もう二度と賢人の前に現れないで!』
憤怒する少女を前に、何も言えない少年の母親。
『金なら私が出そう。…息子がそんな目に遭わされているなんて、全く知らなかった。
単身赴任して、家のことを顧みなかった私にも責任がある』
『おじさん…』
泣いている少女と優しく見守るその母親、離婚すると宣言した少年の父親と全てを失うその妻。
病室には機械音だけが鳴り響いていた。
《ありがとうございます。オムライス、家では自分の味しか食べられなかったからお店のが食べたくて…。いただきます》
ぼろぼろになるまで読みこまれたであろう本の表紙を撫でて、少年はスプーンを持つ。
一口食べたところで感動の声をあげた。
《美味しい…。こんなにふわふわなものだったなんて知りませんでした。
姉と一緒に専門店へ行くと約束していたけど、果たせないまま終わったから…》
「そう、ですか。あ、あの、おかわりもありますので、ゆっくりお楽しみください」
《ありがとうございます》
「あの、よろしければその本の話も聞かせていただけませんか?」
《…この本を持ち歩いてること自体忘れていたんですが、とても大切なものなんです》
少年のほっとした表情に、私もなんだか安心する。
ずっと緊張している様子だったけど、オムライスを食べながら教えてくれた。
《僕は、やっぱり理学療法士になりたい。姉とも約束したんです。夢だけは捨てないようにしようって。最近は医学部向けの勉強ばかりしていてすっかり忘れていたけど、やっぱり認めてほしい…。
分かりあえないんだろうけど、もうあの人たちから解放されたい。…そうか、だから姉さんみたいに飛び降りようと思ったんだ》
冷静に話しているものの、また瞳から光が消える。
《なんだ、もう終わってたのか。ただ、これでやっと姉さんに会える》
どんな言葉をかけたら、少年の心は救われるだろう。
お茶のおかわりを淹れていると、氷雨君がさり気なく言葉を紡いだ。
「あなたはまだ生き返るチャンスがあります」
《どういうことですか?》
「今のあなたは意識不明の重体です。現実に戻りたいですか?」
《…けど、僕が戻ったらまたあの人たちの言うことを聞かないといけなくなる。それならもういいです》
「…あなたを想っている人がいますが、それでも考えは変わりませんか?」
《どうせ嘘なんでしょう?慰めなんていらないです》
氷雨君はいつものように鏡を持ってきて、少年の手に握らせる。
「それがあなたの体の今です」
『あなたたちが賢人を追いつめたんです。あなたたちが殺したんでしょ!』
『麻里奈、やめなさい。…天堂さん、娘が失礼なことを言いました。
ですが、私もひとりの子どもを持つ親としてそう思います。あなたがたがやっていたことは虐待です』
『あれはしつけの一環で、』
『ご飯を食べさせない、お姉さんの自殺をもみ消す、価値観を押し付ける…それが親なんですか?
賢人は毎日泣いてた。私のお弁当を美味しいって言ってくれたけど、あなたたちに怒られるから黙っててくれた!
あなたたちは間違ってる!治療費は私のバイト代から出すから、もう二度と賢人の前に現れないで!』
憤怒する少女を前に、何も言えない少年の母親。
『金なら私が出そう。…息子がそんな目に遭わされているなんて、全く知らなかった。
単身赴任して、家のことを顧みなかった私にも責任がある』
『おじさん…』
泣いている少女と優しく見守るその母親、離婚すると宣言した少年の父親と全てを失うその妻。
病室には機械音だけが鳴り響いていた。
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