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第24章『冬が終わる』
第138話
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「氷雨君、あの…」
「暇だったから気にしなくていい」
先回りしてくるところが氷雨君らしい。
初めて連絡がきて舞いあがったけど、もし社交辞令だったらどうしようと返信した後ずっと思っていた。
けど、忙しかったら氷雨君から連絡がくることはないだろう。
「どこか行きたい場所があるの?」
「…まあ、そんなところ」
辿り着いたのは、期間限定でオープンしたチョコレート専門店だった。
「今の時間はあんまり人がいないんだね」
「あんまり混雑しないって広告に載ってたんだ」
「そうだったんだ…。ちゃんと見ておけばよかった」
一緒に入ってみると、そこに広がっていたのはチョコレートの国だった。
「すごい…」
「……ひとりじゃ、入りづらかった」
「え?」
意外だった。
私から見た氷雨君は、ひとりでなんでもこなしている気がするから。
「食べるのもそうだけど、フェイクチョコとか雑貨も充実してるんだ」
「私も何か買っていこうかな」
ここ最近、あまりおばさんと会えていない。
検査だからと看護師さんに遮られてしまうのだ。
どんな検査を受けているのか訊いても教えてくれないから、少し不安になってしまう。
「…それ、自分用?」
「あ、うん。こういうふわふわしたぬいぐるみが好きで…」
「…そう」
氷雨君はそう言って、私のかごからぬいぐるみを取り出す。
そのままレジまで行って、あっという間に会計をすませてしまった。
「欲しいものが分からなかったから…あげる」
「あ、ありがとう。…ホワイトデーに絶対おかえしする」
特に深い意味はなくくれたんだろう。
ここで断ってしまったら失礼な気がして、両手で受け取った。
「それじゃあ、また今夜」
「あ…」
氷雨君は沢山チョコレート菓子を買って、あっという間にいなくなってしまった。
追いかけようと思ったけど、おばさんとの面会時間がある。
「…行かないと」
施設までの道を真っ直ぐ走って、なんとか渡すことができた。
──その夜、氷雨君がじっと箱を見つめているところに声をかける。
「あの…氷雨君は、好きな食べ物ってある?」
「強いて言うなら林檎。あとは蜂蜜とか…珈琲や紅茶のおともになるもの」
「そうなんだ。ありがとう」
氷雨君はよく頭にある傷みたいなものを気にしている。
だから、帽子を買うのは決めているけどそれ以外も何か渡したかった。
「…そろそろ時間だ」
「今日はどの車両に行くの?」
「担当は特にない。誰かが困ってたらサポートして」
「分かった」
誰もいない最後尾に乗って、服装を整える。
誰が来てもいいように掃除をしていると、がたがたと開くはずがない方向の扉が鳴った。
《開ケテ、乗セテ》
「……!」
「暇だったから気にしなくていい」
先回りしてくるところが氷雨君らしい。
初めて連絡がきて舞いあがったけど、もし社交辞令だったらどうしようと返信した後ずっと思っていた。
けど、忙しかったら氷雨君から連絡がくることはないだろう。
「どこか行きたい場所があるの?」
「…まあ、そんなところ」
辿り着いたのは、期間限定でオープンしたチョコレート専門店だった。
「今の時間はあんまり人がいないんだね」
「あんまり混雑しないって広告に載ってたんだ」
「そうだったんだ…。ちゃんと見ておけばよかった」
一緒に入ってみると、そこに広がっていたのはチョコレートの国だった。
「すごい…」
「……ひとりじゃ、入りづらかった」
「え?」
意外だった。
私から見た氷雨君は、ひとりでなんでもこなしている気がするから。
「食べるのもそうだけど、フェイクチョコとか雑貨も充実してるんだ」
「私も何か買っていこうかな」
ここ最近、あまりおばさんと会えていない。
検査だからと看護師さんに遮られてしまうのだ。
どんな検査を受けているのか訊いても教えてくれないから、少し不安になってしまう。
「…それ、自分用?」
「あ、うん。こういうふわふわしたぬいぐるみが好きで…」
「…そう」
氷雨君はそう言って、私のかごからぬいぐるみを取り出す。
そのままレジまで行って、あっという間に会計をすませてしまった。
「欲しいものが分からなかったから…あげる」
「あ、ありがとう。…ホワイトデーに絶対おかえしする」
特に深い意味はなくくれたんだろう。
ここで断ってしまったら失礼な気がして、両手で受け取った。
「それじゃあ、また今夜」
「あ…」
氷雨君は沢山チョコレート菓子を買って、あっという間にいなくなってしまった。
追いかけようと思ったけど、おばさんとの面会時間がある。
「…行かないと」
施設までの道を真っ直ぐ走って、なんとか渡すことができた。
──その夜、氷雨君がじっと箱を見つめているところに声をかける。
「あの…氷雨君は、好きな食べ物ってある?」
「強いて言うなら林檎。あとは蜂蜜とか…珈琲や紅茶のおともになるもの」
「そうなんだ。ありがとう」
氷雨君はよく頭にある傷みたいなものを気にしている。
だから、帽子を買うのは決めているけどそれ以外も何か渡したかった。
「…そろそろ時間だ」
「今日はどの車両に行くの?」
「担当は特にない。誰かが困ってたらサポートして」
「分かった」
誰もいない最後尾に乗って、服装を整える。
誰が来てもいいように掃除をしていると、がたがたと開くはずがない方向の扉が鳴った。
《開ケテ、乗セテ》
「……!」
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