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第25章『届けたい想い』
第148話
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どうやらそこは病院みたいで、女性が女の子に優しく話しかけていた。
『千佳ちゃん』
『お父さんは?』
『…天国に行ったの。お星さまになったんだよ』
『嘘だ』
『千佳ちゃん、』
『嘘だ!だってお父さん、ひとりにしないって、今度一緒にお出かけするって…』
周りにいるのは彼女のお友だちとその保護者だろうか。
左足の火傷を見つめながら、お手伝いさんが必死に語りかけている。
『お父さんは、きっとお空でずっと見てるよ』
『…本当?』
『本当。私、嘘吐いたことないでしょ?』
『お父さんだってそうだった。でも私はひとりだよ』
『千佳ちゃん…』
『ねえ、美代子お姉さん。私がお料理しなかったら、悪い人に気づいていたら、お父さんは一緒にいてくれたの?』
まだ意味がよく分かっていないであろう子どもたちと、意味が分かるからこそ悲しむ大人。
…そして、覚悟を決めた目をしている家政婦さん。
『千佳ちゃんさえよければ、私と家族になろう』
『え…?』
『私ね、お父さんもお母さんもいないの。千佳ちゃんのお父さんと同じで、お星さまになったんだ。
…小さい頃から寂しかった。でも、誰にも言えなかった。今の千佳ちゃんは、あのときの私によく似ている』
『私たちもサポートします』
『後見人制度を使えればどうにかできるはずです。養子縁組という線もありますし…。私、行政に多少顔が利くので』
『ありがとうございます。助かります』
大人たちで話がまとまってきたところで、女の子が問いかける。
『…私を置いていったりしない?』
『ごめんね。絶対とは言えない。だけど、ひとりじゃないよ』
『…!私、美代子お姉さんとなら家族になりたい!』
『それじゃあ決まり。…その前に、お父さんにいってらっしゃいしよう。明後日帰ってくるから』
『本当?』
『本当』
ふたりの会話は本当の家族のようで、見ているだけで心が温まった。
「──以上になります」
《曽根さん…》
男性は拳を握りしめ、静かに涙を流す。
《あの子の為に頑張ろうと思っていた。でも、こんなにも沢山の人たちに助けられていたんですね》
「娘さんの笑顔はあなたが作り続けてきたんです。成長したとき、きっとあなたを誇りに思うでしょう」
《…手紙を書いてもいいですか?》
「勿論です」
どうしてこの人は手紙の存在を知っているんだろう。
もしかして、この列車のお客様の手紙は全部相手のところに届けられている…?
「こちらがレターセットになります」
《ありがとう。あなたたちのおかげで心配事がなくなりました。幸せに過ごしてくれることを祈ることにします》
男性はそう言ってすぐに手紙を仕上げた。
これが親の愛…なんて温かいものなんだろう。
おばさんが私に接してくれた優しさを思いおこして、なんだか胸が熱くなった。
『千佳ちゃん』
『お父さんは?』
『…天国に行ったの。お星さまになったんだよ』
『嘘だ』
『千佳ちゃん、』
『嘘だ!だってお父さん、ひとりにしないって、今度一緒にお出かけするって…』
周りにいるのは彼女のお友だちとその保護者だろうか。
左足の火傷を見つめながら、お手伝いさんが必死に語りかけている。
『お父さんは、きっとお空でずっと見てるよ』
『…本当?』
『本当。私、嘘吐いたことないでしょ?』
『お父さんだってそうだった。でも私はひとりだよ』
『千佳ちゃん…』
『ねえ、美代子お姉さん。私がお料理しなかったら、悪い人に気づいていたら、お父さんは一緒にいてくれたの?』
まだ意味がよく分かっていないであろう子どもたちと、意味が分かるからこそ悲しむ大人。
…そして、覚悟を決めた目をしている家政婦さん。
『千佳ちゃんさえよければ、私と家族になろう』
『え…?』
『私ね、お父さんもお母さんもいないの。千佳ちゃんのお父さんと同じで、お星さまになったんだ。
…小さい頃から寂しかった。でも、誰にも言えなかった。今の千佳ちゃんは、あのときの私によく似ている』
『私たちもサポートします』
『後見人制度を使えればどうにかできるはずです。養子縁組という線もありますし…。私、行政に多少顔が利くので』
『ありがとうございます。助かります』
大人たちで話がまとまってきたところで、女の子が問いかける。
『…私を置いていったりしない?』
『ごめんね。絶対とは言えない。だけど、ひとりじゃないよ』
『…!私、美代子お姉さんとなら家族になりたい!』
『それじゃあ決まり。…その前に、お父さんにいってらっしゃいしよう。明後日帰ってくるから』
『本当?』
『本当』
ふたりの会話は本当の家族のようで、見ているだけで心が温まった。
「──以上になります」
《曽根さん…》
男性は拳を握りしめ、静かに涙を流す。
《あの子の為に頑張ろうと思っていた。でも、こんなにも沢山の人たちに助けられていたんですね》
「娘さんの笑顔はあなたが作り続けてきたんです。成長したとき、きっとあなたを誇りに思うでしょう」
《…手紙を書いてもいいですか?》
「勿論です」
どうしてこの人は手紙の存在を知っているんだろう。
もしかして、この列車のお客様の手紙は全部相手のところに届けられている…?
「こちらがレターセットになります」
《ありがとう。あなたたちのおかげで心配事がなくなりました。幸せに過ごしてくれることを祈ることにします》
男性はそう言ってすぐに手紙を仕上げた。
これが親の愛…なんて温かいものなんだろう。
おばさんが私に接してくれた優しさを思いおこして、なんだか胸が熱くなった。
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