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第27章『散り桜』
第157話
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「立てますか?」
「…ご、ごめんなさい」
いつの間にか崩れ落ちて泣いていたみたいで、看護師さんが手を引いて立たせてくれた。
「成川さんからエンディングノートやプランの話は聞いていますか?」
首を横にふると、看護師さんが説明してくれた。
どうやら、自分にもしものことがあったときのために書いてあるものがあるらしい。
ひとつは個人の病室にあるエンディングノート、もうひとつは施設で預かっているプランノートがある。
「は、初めて聞きました」
「成川さんは周りに心配をかけないように振る舞う人だものね…。他の部屋の患者さんたちを元気づけているのをよく見かけました。
それから、もし外出許可をもらえたら何がしたいかなんかを話して…」
「…おばさんらしいです」
足が悪くなったから入ったんだと思っていた施設は、もう長く持たない心臓に少しでもいい環境を求めて入ったらしい。
それから、私が通える範囲の場所で探してくれたことも。
「…私、本当に何も知らなかったんだ」
メッセージを送信して、空を見上げる。
星ひとつ輝いていないそれは、どこまでも広がる闇のようだった。
【今夜からしばらく仕事に行けそうにありません。ごめんなさい】
それから数日ばたばたした。
葬儀の手配は施設の人たちがやってくれて、申し訳ないのとありがたいのでいっぱいだ。
おばさんがそういう契約にしていたんだとスタッフの人が教えてくれたけど、私はおばさんを知っている人を知らない。
「小さなお葬式で、というのがご希望だったようです」
「あ…そう、なんですね」
きちんとおばさんを送り出したいのに、施設の人たちに支えられる形でただ手を合わせることしかできない。
私が知る限り一度もお見舞いに来ていないあの人にも連絡したけど、やっぱり現れなかった。
…やっぱりそういう人なんだ。
「氷空ちゃん、その…」
「雪」
「お菓子食べない?」
「…すみません。今は大丈夫です」
「そっか。じゃあ、食べたくなったらいつでも言ってね」
ある程度やらないといけないことが片づいて、仕事に出ることにした。
…そうでもしないと気が紛れないから。
「今夜はこの部屋にいて。いいって言うまで絶対に扉を開けないこと。いい?」
「……分かった」
もしここでも必要とされなくなったら、私はどうなるんだろう。
もう救いなんて求めていないけれど、この場所にいられなくなったら…。
そんな不安を口にできなくて、黙って氷雨君の背中を見送る。
動いていないと余計なことを考えてしまいそうで、持っていた本の続きを読むことにした。
……どれくらい時間が経っただろう。
ふと近くのモニターに目を向けると、そこには見知った顔が映し出されている。
「…おばさん?」
そこには、にこやかに微笑むおばさんと淡々と接客する氷雨君がいた。
「…ご、ごめんなさい」
いつの間にか崩れ落ちて泣いていたみたいで、看護師さんが手を引いて立たせてくれた。
「成川さんからエンディングノートやプランの話は聞いていますか?」
首を横にふると、看護師さんが説明してくれた。
どうやら、自分にもしものことがあったときのために書いてあるものがあるらしい。
ひとつは個人の病室にあるエンディングノート、もうひとつは施設で預かっているプランノートがある。
「は、初めて聞きました」
「成川さんは周りに心配をかけないように振る舞う人だものね…。他の部屋の患者さんたちを元気づけているのをよく見かけました。
それから、もし外出許可をもらえたら何がしたいかなんかを話して…」
「…おばさんらしいです」
足が悪くなったから入ったんだと思っていた施設は、もう長く持たない心臓に少しでもいい環境を求めて入ったらしい。
それから、私が通える範囲の場所で探してくれたことも。
「…私、本当に何も知らなかったんだ」
メッセージを送信して、空を見上げる。
星ひとつ輝いていないそれは、どこまでも広がる闇のようだった。
【今夜からしばらく仕事に行けそうにありません。ごめんなさい】
それから数日ばたばたした。
葬儀の手配は施設の人たちがやってくれて、申し訳ないのとありがたいのでいっぱいだ。
おばさんがそういう契約にしていたんだとスタッフの人が教えてくれたけど、私はおばさんを知っている人を知らない。
「小さなお葬式で、というのがご希望だったようです」
「あ…そう、なんですね」
きちんとおばさんを送り出したいのに、施設の人たちに支えられる形でただ手を合わせることしかできない。
私が知る限り一度もお見舞いに来ていないあの人にも連絡したけど、やっぱり現れなかった。
…やっぱりそういう人なんだ。
「氷空ちゃん、その…」
「雪」
「お菓子食べない?」
「…すみません。今は大丈夫です」
「そっか。じゃあ、食べたくなったらいつでも言ってね」
ある程度やらないといけないことが片づいて、仕事に出ることにした。
…そうでもしないと気が紛れないから。
「今夜はこの部屋にいて。いいって言うまで絶対に扉を開けないこと。いい?」
「……分かった」
もしここでも必要とされなくなったら、私はどうなるんだろう。
もう救いなんて求めていないけれど、この場所にいられなくなったら…。
そんな不安を口にできなくて、黙って氷雨君の背中を見送る。
動いていないと余計なことを考えてしまいそうで、持っていた本の続きを読むことにした。
……どれくらい時間が経っただろう。
ふと近くのモニターに目を向けると、そこには見知った顔が映し出されている。
「…おばさん?」
そこには、にこやかに微笑むおばさんと淡々と接客する氷雨君がいた。
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