皓皓、天翔ける

黒蝶

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第27章『散り桜』

第159話『蘇る光景』

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《氷空ちゃんは実の母親から暴力を受けていて、たまたまそれを見つけたのが私だったの》
「だからふたりで暮らしはじめたんですね」
《最初は心をひらいてくれなくて、私も接し方に戸惑ったわ。だけど、姉がしたことを許せなかったの》
女性はお茶をすすりながら、当時に思いを馳せているようだった。
《だけど、それからすぐ病気が発覚して…。もう長くないことは分かっていた》
女性は俯いてしまった。
「ハンバーグ、お持ちしますね」
《ありがとう。お願いします》
すぐにお持ちすると、丁寧に頭を下げられた。
…そういうところが星影氷空によく似ている。
《いただきます。…ありがとう。とっても美味しい》
「喜んでいただけたようでなによりです」
《…最近、ずっと検査をしていて数値が悪化してた。でも、体が軽かったから少し調子がよくなったかもしれないと思いこんでいたの》
女性ははっとしたように小さく呟く。
《…そう。私、お迎えが来たのね》
病死したお客様に多いことだが、自分が死んだことを自覚している場合がある。
おそらくこの女性もそうなんだろう。
《まさかこんな急だと思っていなかったから、氷空ちゃんにちゃんと説明できなかったわ。
病気のことも話していなかったし、きっと沢山泣かせちゃったんだろうな…》
「…とても仲がよかったんですね」
《長い休みのときは必ず会いに来てくれていたし、感謝しかないの。買い物をお願いしても嫌な顔ひとつしなかった。
…私ね、もう15年くらい前に夫になるはずだった人を亡くしているの》
初耳だ。もしかすると星影氷空も知らないことかもしれない。
《その写真を見て、あの子言ったの。離れ離れになっても、強い絆がほどけることはないって。
氷空ちゃんがどう思っていたかは分からないけど、私はその言葉に救われたのよ。…それに、少しずつ話ができるようになったしね》
「その出来事がきっかけだったんですね」
《みんな忘れろって言うのに、小さい氷空ちゃんは違った。今だって周りに気遣える子だから、施設の人たちからも羨ましがられていて…ちょっと照れくさかったわ。
お友だちもできたから寂しくなかったけど、氷空ちゃんは照れ屋さんだから心配。…ひとり暮らしで自分のことを疎かにしてないか、とか》
「…きっと大丈夫です。少なくとも昼食はしっかり摂っているはずですから」
星影氷空についてそこまで詳しく知っているわけではない。
だが、毎日欠かさず昼食を作ってきてくれるほどのお人好しで、自分の長所に気づいていないほど謙虚であることは分かる。
《…そう。それなら安心だわ。氷空ちゃんが困っていたら、どうか力になってあげて》
「何故私に仰るんですか?」
《なんとなく、かしら。どうしてあなたがここにいるのか分からないけど、氷空ちゃんのことをよく知ってる気がするの》
女性はまたにこやかに微笑んだ。
《最近の氷空ちゃん、とっても楽しそうだったの。怪我が増えたのは心配だったけど、もう不安はないわ》
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