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第30章『満たされない感情』
第181話
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「遠坂さんって地味だよね」
「何考えてるか分からないし、なんか怖いし」
トイレから出た少女は息を吐いた。
それでも彼女は自分の好きを曲げない。
どれだけ笑われても、好きが元気をくれるから。
「ありさ、もっと普通の格好をしなさい」
「お母さんには迷惑かけてないんだからいいでしょ?小さい頃から貯め続けたお年玉とバイト代でまかなってるし、学費は特待で免除になってるから」
「恥ずかしくて隣を歩きたくないわ」
「…歩かなくていいよ。私のこと嫌いでしょ?私になんの説明もなく籍を入れた人とお幸せに」
「ありさ!」
家の中でも孤独だった彼女は、ひとり暮らしをしていたらしい。
中学校の入学式の写真以降、母親と写っているものは部屋になかった。
「…お父さん、いってきます」
笑顔の写真に手をあわせて、少女はフリルやリボンのモノトーンコーデで外に出る。
「有ちゃん、おはよう」
「おはよう。ありさ、何かあった?」
「急にどうしたの?」
「見れば分かるよ。…嫌なこと、言われたんじゃない?」
長い髪がゆられるその人は、全てを見透かしているみたいに尋ねる。
その姿に少女は降参したように話しはじめた。
「家に勝手に来られてたの。鍵を換えようか迷ってる」
「これはあくまで僕の意見だけど、辛かったらそれもひとつの手だと思う。
それにしても…自分の好きなものを真っ向から否定されるのって悲しいよね」
「有ちゃんも何か言われた?」
「髪を結んでいれば大丈夫だろうと思ったら、間違えて休日用のハンカチを持っていってたんだ。
それを見られてボロカス言われた。…休みの日と仕事でだけ楽しもうと思ってたのに」
「かっこいいものが好きな女の子だっているんだから、可愛い格好をしたい男の子がいたっていいはずなのにね」
「ありがとう。ありさはやっぱり優しいね」
ふたりはそんな会話をしながら、バイト先であろうお店に入っていく。
「ふたりとも、今日もよろしくね」
「「はい!」」
品出しやレジをしているふたりを見たお客さんたちは、なんだかとても楽しそうだ。
「この新作、すごく可愛い!」
「ほんとだ。あと、あの店員さんたちもおしゃれ…」
「ありがとうございました」
「こちらの財布は3色展開になっておりまして…」
そんなふたりを遠くから見つめる少女がひとりいる。
あろうことか、少女は品出しをしていた相手に声をかけた。
「有一く、」
「お客様、どうなさいましたか?試着でしたらあちらです」
すかさず別の少女が援護して、事なきを得た。
「モモの王子様に話しかけたのに、あんた誰?」
「…迷惑行為で通報しますよ」
またか、という反応を見る限り、初めてではなかったらしい。
人は誰しも知られたくないことのひとつやふたつある。
諦めるかと思いきや、レジの広告を指さして高らかに宣言した。
「決めた。モモもここで働く!」
「何考えてるか分からないし、なんか怖いし」
トイレから出た少女は息を吐いた。
それでも彼女は自分の好きを曲げない。
どれだけ笑われても、好きが元気をくれるから。
「ありさ、もっと普通の格好をしなさい」
「お母さんには迷惑かけてないんだからいいでしょ?小さい頃から貯め続けたお年玉とバイト代でまかなってるし、学費は特待で免除になってるから」
「恥ずかしくて隣を歩きたくないわ」
「…歩かなくていいよ。私のこと嫌いでしょ?私になんの説明もなく籍を入れた人とお幸せに」
「ありさ!」
家の中でも孤独だった彼女は、ひとり暮らしをしていたらしい。
中学校の入学式の写真以降、母親と写っているものは部屋になかった。
「…お父さん、いってきます」
笑顔の写真に手をあわせて、少女はフリルやリボンのモノトーンコーデで外に出る。
「有ちゃん、おはよう」
「おはよう。ありさ、何かあった?」
「急にどうしたの?」
「見れば分かるよ。…嫌なこと、言われたんじゃない?」
長い髪がゆられるその人は、全てを見透かしているみたいに尋ねる。
その姿に少女は降参したように話しはじめた。
「家に勝手に来られてたの。鍵を換えようか迷ってる」
「これはあくまで僕の意見だけど、辛かったらそれもひとつの手だと思う。
それにしても…自分の好きなものを真っ向から否定されるのって悲しいよね」
「有ちゃんも何か言われた?」
「髪を結んでいれば大丈夫だろうと思ったら、間違えて休日用のハンカチを持っていってたんだ。
それを見られてボロカス言われた。…休みの日と仕事でだけ楽しもうと思ってたのに」
「かっこいいものが好きな女の子だっているんだから、可愛い格好をしたい男の子がいたっていいはずなのにね」
「ありがとう。ありさはやっぱり優しいね」
ふたりはそんな会話をしながら、バイト先であろうお店に入っていく。
「ふたりとも、今日もよろしくね」
「「はい!」」
品出しやレジをしているふたりを見たお客さんたちは、なんだかとても楽しそうだ。
「この新作、すごく可愛い!」
「ほんとだ。あと、あの店員さんたちもおしゃれ…」
「ありがとうございました」
「こちらの財布は3色展開になっておりまして…」
そんなふたりを遠くから見つめる少女がひとりいる。
あろうことか、少女は品出しをしていた相手に声をかけた。
「有一く、」
「お客様、どうなさいましたか?試着でしたらあちらです」
すかさず別の少女が援護して、事なきを得た。
「モモの王子様に話しかけたのに、あんた誰?」
「…迷惑行為で通報しますよ」
またか、という反応を見る限り、初めてではなかったらしい。
人は誰しも知られたくないことのひとつやふたつある。
諦めるかと思いきや、レジの広告を指さして高らかに宣言した。
「決めた。モモもここで働く!」
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