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第30章『満たされない感情』
閑話『大切にしたいもの』
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町で見つけたその人にどう声をかけるか迷ったが、なるようになるだろうと近づいてみる。
「こんにちは。有さんでいらっしゃいますか?」
「そうというか、違うというか…」
「遠坂ありさ様からお手紙が届いています」
「ありさから?そんなはず…。いや、でも、ちゃんと読まなくちゃ」
玉木有一は目の前でおきている事象を受け止め、封を切った。
【有ちゃん
あなたと初めて会ったあの日、本当は死のうとしてました。私なんかいらないって世界中に言われている気分になって…だけど、有ちゃんがその孤独から連れ出してくれたの。
そのおかげで、知らなかった景色を沢山見られました。全部有ちゃんのおかげです。ありがとう。
できれば一緒に夢を叶えたかった。ふたりでお店、出したかったな…。だけど、あなたを護れたから満足です。
自分のせいで、なんて言ったら怒るからね。私のためじゃなくて、有ちゃんは有ちゃんの人生を生きて。
ひとつ言えるのは、私はあなたの洋服の1番のファンです。それだけは胸をはって言える。
あともうひとつ。…どれだけ離れていても、私たちはずっと友だちだよ】
「ありさ…」
悲しみに暮れるその人に、星影氷空から預かったものを渡す。
「あなたに着てほしいと願っていたそうです」
「これ、ありさがサプライズって言ってた服…。そっか、縫い終わってたんだ」
有と呼ばれていたその人は、大切そうに洋服を抱きしめる。
「ありさは僕を逃して死んだんです。彼女は家庭環境が複雑で、ひとり暮らしをしていました。よく知らない義理の弟さんがいれば自分はいらないみたいだって、今にも消えそうな目をしてて…。
だけど、僕がこういう格好をしてもありさは笑わなかった。寧ろ、好きなものを好きと言って何が悪い、って怒ってくれました」
ふたりの絆は見ただけでは分からないほど深いものなのだろう。
「犯人の子は自滅したんですけど、その子は僕に男らしさを求めてつきまとってきました。
…僕がもっと強かったら、ありさを護れたかもしれない」
「あなたが彼女の好きを否定しなかったことによって彼女は生きられた。そして、あなたのことも肯定していた。
彼女が肯定したあなたをあなた自身が苦しめれば、きっと悲しまれます」
目の前の人物ははっとしたように顔をあげた。
「そっか。ありさがそのままでいいって言ってくれた僕のまま…。
ふたりの夢、絶対叶えようと思います。この服に誓って」
「…それでは、私はこれで失礼いたします」
一礼してその場を離れたが、俺の姿をずっと見送っている。
情が引き起こした悲劇、ということだろうか。
いつかその心が癒やされるよう願いながら、そのまま列車へ向かった。
「こんにちは。有さんでいらっしゃいますか?」
「そうというか、違うというか…」
「遠坂ありさ様からお手紙が届いています」
「ありさから?そんなはず…。いや、でも、ちゃんと読まなくちゃ」
玉木有一は目の前でおきている事象を受け止め、封を切った。
【有ちゃん
あなたと初めて会ったあの日、本当は死のうとしてました。私なんかいらないって世界中に言われている気分になって…だけど、有ちゃんがその孤独から連れ出してくれたの。
そのおかげで、知らなかった景色を沢山見られました。全部有ちゃんのおかげです。ありがとう。
できれば一緒に夢を叶えたかった。ふたりでお店、出したかったな…。だけど、あなたを護れたから満足です。
自分のせいで、なんて言ったら怒るからね。私のためじゃなくて、有ちゃんは有ちゃんの人生を生きて。
ひとつ言えるのは、私はあなたの洋服の1番のファンです。それだけは胸をはって言える。
あともうひとつ。…どれだけ離れていても、私たちはずっと友だちだよ】
「ありさ…」
悲しみに暮れるその人に、星影氷空から預かったものを渡す。
「あなたに着てほしいと願っていたそうです」
「これ、ありさがサプライズって言ってた服…。そっか、縫い終わってたんだ」
有と呼ばれていたその人は、大切そうに洋服を抱きしめる。
「ありさは僕を逃して死んだんです。彼女は家庭環境が複雑で、ひとり暮らしをしていました。よく知らない義理の弟さんがいれば自分はいらないみたいだって、今にも消えそうな目をしてて…。
だけど、僕がこういう格好をしてもありさは笑わなかった。寧ろ、好きなものを好きと言って何が悪い、って怒ってくれました」
ふたりの絆は見ただけでは分からないほど深いものなのだろう。
「犯人の子は自滅したんですけど、その子は僕に男らしさを求めてつきまとってきました。
…僕がもっと強かったら、ありさを護れたかもしれない」
「あなたが彼女の好きを否定しなかったことによって彼女は生きられた。そして、あなたのことも肯定していた。
彼女が肯定したあなたをあなた自身が苦しめれば、きっと悲しまれます」
目の前の人物ははっとしたように顔をあげた。
「そっか。ありさがそのままでいいって言ってくれた僕のまま…。
ふたりの夢、絶対叶えようと思います。この服に誓って」
「…それでは、私はこれで失礼いたします」
一礼してその場を離れたが、俺の姿をずっと見送っている。
情が引き起こした悲劇、ということだろうか。
いつかその心が癒やされるよう願いながら、そのまま列車へ向かった。
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