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第32章『止まない雨』
第193話
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《ありがとうございました》
駅員さんに支えられながら、女性は私に向かって微笑んでくれた。
「いえ。私は特に何も…」
《あなたのおかげであたしまで幸せになれました。あと、ご飯も飲み物も美味しかったです》
まさかそんなふうに言ってもらえるとは思っていなかったので、慌てて一礼する。
「お客様が少しでも心安らぐ瞬間を提供できたなら、私にとってはそれが1番です」
やっぱり腕が痛そうだな…なんて呑気に考えながら、なんとか歩く姿を見送る。
ふと隣を見ると、いつの間にか氷雨君が立っていた。
「お疲れ」
「あ、うん…お疲れ様」
血だらけになった床を磨きながら、これだけ被害者が一気に列車にいることを疑問に思う。
「あ、あの…」
「連続殺人事件がおきた場合、こういう感じで集団でご案内することもある。
他のお客様の前で錯乱してしまう可能性もあるし、思い出した後やりたいことをしてほしいって思うから」
「そうだったんだ…」
「相手が何を望んでいるか分からないから難しいけど」
氷雨君は唇を噛みしめてもやもやしているように見える。
「どうかしたの?」
「特に変わったことはない。君は平気なの?」
「えっと…」
何か答えようと思ったのに、突然体に力が入らなくなる。
氷雨君はいつもみたいに体を支えてくれた。
「また苦しんでいたら起こす」
「う、ん…」
「こんなことしかできなくてごめん」
私にとってはそれがありがたい。
その気持ちを伝える前に、意識が奥深くへ沈んだ。
「あ、ブスが来たぞ!」
「貧乏人のばい菌くらえ!」
「逃げろ逃げろ!」
そんなことを言われながら登校した少女は、今にも泣き出しそうな顔をしている。
それからしばらくして保健室へ登校しはじめた彼女に、担任教師と思われる大人が怒鳴り散らした。
「やる気がないならやめてもらっていいのよ?」
「それならせめて、嫌がらせを…」
「打たれ弱い!そんなの甘えじゃない!」
この教師は少女の話を聞くつもりなんてない。
大切なのは自分の評価で、生徒の命ではないのだ。
「大きな声を出すのはやめてください。それから、彼女に問題があるのではなくまずは加害生徒に反省してもらうことが大切だと思いますが」
「……ちっ」
舌打ちして去っていく教師を見て、白衣を纏ったその人は大きく息を吐いた。
「あなたはこの学校には向かない。ここには打たれ強い子か性悪しかいないから」
「え……」
「俺もこの学校を今年度で辞めるつもりだから、母校をおすすめしておくよ。
逃げてもいい。死ぬほど辛いなら別の道もある」
そこに書かれていたのは、通信制の文字。
少女は白衣の教諭に相談しながら転入の手続きを進めた。
「名倉先生、ありがとうございました」
「俺が勝手にやったことだから。……元気で」
見送る教諭に背を向けて、少女はひとり呟く。
「……あたしが貧乏だから?ブスだからこうなるのかな」
けれど、この後の出会いが少女の運命を大きく変えていく。
駅員さんに支えられながら、女性は私に向かって微笑んでくれた。
「いえ。私は特に何も…」
《あなたのおかげであたしまで幸せになれました。あと、ご飯も飲み物も美味しかったです》
まさかそんなふうに言ってもらえるとは思っていなかったので、慌てて一礼する。
「お客様が少しでも心安らぐ瞬間を提供できたなら、私にとってはそれが1番です」
やっぱり腕が痛そうだな…なんて呑気に考えながら、なんとか歩く姿を見送る。
ふと隣を見ると、いつの間にか氷雨君が立っていた。
「お疲れ」
「あ、うん…お疲れ様」
血だらけになった床を磨きながら、これだけ被害者が一気に列車にいることを疑問に思う。
「あ、あの…」
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他のお客様の前で錯乱してしまう可能性もあるし、思い出した後やりたいことをしてほしいって思うから」
「そうだったんだ…」
「相手が何を望んでいるか分からないから難しいけど」
氷雨君は唇を噛みしめてもやもやしているように見える。
「どうかしたの?」
「特に変わったことはない。君は平気なの?」
「えっと…」
何か答えようと思ったのに、突然体に力が入らなくなる。
氷雨君はいつもみたいに体を支えてくれた。
「また苦しんでいたら起こす」
「う、ん…」
「こんなことしかできなくてごめん」
私にとってはそれがありがたい。
その気持ちを伝える前に、意識が奥深くへ沈んだ。
「あ、ブスが来たぞ!」
「貧乏人のばい菌くらえ!」
「逃げろ逃げろ!」
そんなことを言われながら登校した少女は、今にも泣き出しそうな顔をしている。
それからしばらくして保健室へ登校しはじめた彼女に、担任教師と思われる大人が怒鳴り散らした。
「やる気がないならやめてもらっていいのよ?」
「それならせめて、嫌がらせを…」
「打たれ弱い!そんなの甘えじゃない!」
この教師は少女の話を聞くつもりなんてない。
大切なのは自分の評価で、生徒の命ではないのだ。
「大きな声を出すのはやめてください。それから、彼女に問題があるのではなくまずは加害生徒に反省してもらうことが大切だと思いますが」
「……ちっ」
舌打ちして去っていく教師を見て、白衣を纏ったその人は大きく息を吐いた。
「あなたはこの学校には向かない。ここには打たれ強い子か性悪しかいないから」
「え……」
「俺もこの学校を今年度で辞めるつもりだから、母校をおすすめしておくよ。
逃げてもいい。死ぬほど辛いなら別の道もある」
そこに書かれていたのは、通信制の文字。
少女は白衣の教諭に相談しながら転入の手続きを進めた。
「名倉先生、ありがとうございました」
「俺が勝手にやったことだから。……元気で」
見送る教諭に背を向けて、少女はひとり呟く。
「……あたしが貧乏だから?ブスだからこうなるのかな」
けれど、この後の出会いが少女の運命を大きく変えていく。
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