皓皓、天翔ける

黒蝶

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第33章『かくしん』

第198話

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《あ、あの…》
「どうされましたか?」
《烏龍茶の温かいものをもらえますか?》
「勿論です」
急いで淹れていると、カーテン越しにもうひとつ注文される。
《それから…唐揚げ、ありませんか?》
「できあがりに時間がかかってしまうかもしれませんが、すぐご用意させていただきます」
《ありがとうございます》
男性はほっとした様子で何かを手にとっている。
食堂車から急いで戻ると、何かに集中しているみたいで声をかけられなかった。
料理が冷めてしまいそうで、
「あ、あの…」
《ごめんなさい。全く気づかなくて…》
「いえ。あ、あの、唐揚げ、おまたせしました」
《ありがとうございます。…美味しい》
男性はほっとしたようにそう呟いて、カーテンを開けた。
マスクはやっぱりつけていたけど、さっきより話しやすくなった気がする。
《僕、夢があるんです》
「夢、ですか?」
《はい。今は地方紙でモデルをやっているんですけど、いつか化粧品メーカーに勤めたいんです。
…あ、モデルって言っても手にマニキュア塗ってるのが載るやつなんですけど、肌が弱くて使える化粧品が少ないから、色々な人が使えるものがあればいいなって思うんです》
「素敵な夢だと思います」
《ありがとうございます。今はまだ研究所を探しているところなんですけど、できればいいなって…》
どんな言葉をかければいいのか、いつも以上に分からなくなってしまった。
男性の願いはもう叶わない。
《そういえば、僕か入りたい研究所の近くで殺人事件がおきたらしいんです。
詳しいことはあんまり知らないんですけど、怪しい人物を見てないかって聞かれました》
「…連続殺人事件ですか?」
《いえ。警察の方の話によると、どうも複数の人間から暴力を受けた痕があるらしいので…。
連続殺人事件って、遺体の一部がなくなってるやつですよね?》
「はい。新聞で読んだ程度なのですが、最近物騒ですね」
《そうですね》
そこまで話した後、男性は黙りこんでしまった。
何か失礼なことを言ってしまったんだと思っていたけど、そういうわけではないらしい。
《そういえば僕、あの日の帰りに研究員さんを見かけたんです。基本持ち出し禁止だって聞いてたのに、その人はがっつり薬品を持ち出していたので声をかけました》
男性は真っ青な顔で話を続ける。
《そのとき、相手が持っていた薬品みたいなものをかけられて…そうだ、たしか硫酸っぽかった。
美容品の研究でそんな物を使うのかと思うと同時に、体が痛くなって、それで…研究所の人に助けを求めたんです。
相手が持ち出した薬品ケースを奪って、持ち出そうとしていた人がいたと話したんです。…話したつもりです》
男性は最後に、真っ青な顔で呟いた。
《その人は資料を持ち出そうとしていたから、持っていたメモ用紙にこっそり相手の特徴やレポートの内容を書いて握ったけど》
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