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八話 魔法と暖かい光
しおりを挟むフェルとお風呂場でキスをした後、僕たちはお風呂から出て部屋に戻って来た。
そしてふと気がついた。
……胸苦しくない……
転生してきてからずっと、胸に違和感があったけど、それが今は消えていて、呼吸も楽になっている。
「ルナ、どうしたの?」
「え?……えっと……」
違和感がなくなった胸元を触っていると、名前を呼ばれた。
顔を上げると、フェルが椅子に座って僕を見つめていて、少しだけ胸の鼓動が速くなった。
「実はね、胸、苦しくないんだ。ずっとあった違和感が消えてる。だからなんでかな?て思って……」
「ああ。それはキスの時、僕の魔力を送ったからだね。あれ?それで胸が痛く無くなるってことは、ルナの魔法属性は光属性なのかな?」
「え?なんでそうなるの?」
意味がわからなくて、フェルに尋ねると、フェルは椅子から立ち上がり、僕の手に触れ、手の平を上に向ける。
「フェル?」
「ルナ。手の平に魔力集中させて?」
「う、うん…」
言われた通りに、体内に流れる魔力を手のひらに集中させると、ぱちぱちって音が手のひらからして、そして黄色の光が現れた。
その光は柔らかくて、暖かい。まるで、フェルの魔法みたいだ。
「胸、痛くない?」
「大丈夫……」
さっき自分が魔力を集めた時に起こった胸の痛みは全くない。
「じゃあ、僕の魔力をこの光に注いで……」
「え?すごい……光が大きくなった」
フェルが僕の手のひらにある、黄色の光に、自分の魔力を注ぎ込む。すると、手のひらにあった黄色の光が大きな光となり、僕の手のひら全体を包み込む。
「思った通り。ルナの魔法は光属性だね。僕と同じ属性だから魔力を送られて一時的に体の回復効果が上がったんだと思う。けど思った以上に魔法の力が弱いから複数の属性持ってるかもだけど……」
「そ、そうなの?」
僕の問いにフェルは頷く。
「まだ憶測だけどね。けど、複数の属性を使える人ってすごく珍しいんだ。騎士団にも数人いるけど……」
確かにフェアリー・スクイズの世界は生まれ持った魔法属性は変えられないという設定がある。
だからキャラ達も大体、一個の魔法属性しか扱えない。
フェルなら光。アクアなら水という感じで……一属性のみだ。
「まぁ、そういうのも王都で調べられるから、引っ越しが決まったら、真っ先に調べて貰おうね」
「そうだね」
僕は手のひらの上にある黄色の光を見つめる。
魔法の事、まだあまり分からないけど、フェルと同じ属性なのは素直に嬉しい。
「それと、魔法の勉強も少しづつしていこう?知ってて損することはないし、この世界は魔法国家だから、使えた方がいい」
「そうだね!!あ、あのさ、フェル。もう一回フェルの魔法見せて?」
「いいよ。もしかして気に入った?」
「気に入った!!だから見せて?」
するとフェルは手のひらを天に向けて、ゆっくりと魔力を集める。すると、ぽっぽっという不思議な音を立てて、フェルの周りに無数の黄色い光の玉が現れた。
まるでそれは前世で両親と見た、蛍の光でみたいで、温かくて泣きそうになるほど、美しい光だ。
「すごく綺麗……」
「ルナもこれぐらいはすぐ出来るようになるよ」
「本当?」
「本当。みてて?」
フェルは人差し指をくるりと回す。すると、宙に浮かんで光の玉がクルクル回り始める。
「わわっ……すごい……」
「他にも、この玉に命令を与えたら、分裂させたり、戻したりなんかもできるよ」
そう言って、フェルが人差しをまた回すと、今度は光の玉が空中で引っ付いたり、離れたりする。
僕の光はただ、手の中にあるだけなのに、フェルの光の玉はまるで意識を持っているみたいに動いてる。
「凄い!かっこいい!フェル凄いよ!」
「ありがとう。これはまだ魔法の初歩だけどね。これを応用して、実践的なものに変えたりするんだよ?」
フェルはそう言いながら、光の玉を増やしたり減らしたりして遊んでる。
なんだろ?フェルって魔法が好きなのかな?
だって光の玉を操ってるフェル、凄く楽しそう。
そんな事を思いながら、僕はフェルが操っている光の玉をずっと見ていたのだった。
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