美男子が恋をした【R18】

ちよこ

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ハッピーエンド

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【今週末は我が家でご飯を食べませんか?】

「え?」

木曜の夜、俺は愛しの絵莉たんからきたメールを二度見した。
待て待て。家に誘われた?絵莉たん家に誘われちゃっただと…!?
行っていいの?いいんだよね?行くよ?行っちゃうよ?

【お誘いありがとう。もちろん行くよ!絵莉ちゃんの手料理楽しみにしてる。】

こんなチャンスを逃すわけがない。
先週の日曜日は母親から大事な話があるから、ランチでもどうかとメールで指定されたホテルへ行くと、騙されてお見合いをさせられた。
ただでさえ貴重な絵莉たんとの時間を潰されてイラついていた俺は速攻で帰ったけどな。
その他にも仕事が忙しいのに姉からの電話を受けたりと、実家に振り回されて散々だった。

この疲れは天使に癒して貰おう、そうしよう。
心も体もスッキリさせて頂こう。


アプリもあるけど念の為と、絵莉たんが地図付きでアパートまでの道のりをメールしてくれたが、何度も"えりえり見守り隊"で往復したから勝手知ったる道筋だ。俺は駅から徒歩12分程の道を迷う事なく絵莉たん家まで速度を上げて歩いた。8分で着いた。新記録だ。


「道に迷わなかったですか?どうぞ上がって下さい。」

エプロン姿の天使が扉を開けて出迎えてくれた。そうか、ここが天国への入口か……

「詳しい地図を貰ってたから大丈夫。今日はお招きありがとう。」

天使に招かれ入った部屋は絵莉たんの香りがしたパワースポットだった。俺のアパートと似たような作りで、沢山の本が並ぶ大きな本棚が絵莉たんらしいシンプルな部屋だ。

「じゃあ、すぐ用意しますので座っていて下さい」

「うん」

キッチンからトントンと包丁の音と食欲をそそる匂いがする。
なんて幸せなんだ。幸せすぎる。
絵莉たんがキッチンに立つ姿を見れる、それだけで嬉しい。別に女の子に食事を作って貰うのはこれが初めてではない。
だが相手が絵莉たんだとまるで初めてかのように何もかもが新鮮に感じる。

食卓に並ぶ昼食は和食。
白米に大根の味噌汁、サバの味噌煮、筑前煮、油揚げとほうれん草のおひたし、胡瓜とワカメの酢の物。

手前にある味噌汁を口に含む
あぁ、俺のソウルスープ。
サバも煮物も惣菜も全てが美味しい。
料理の天才だ。天使で天才。

「すごく美味しいよ。」

「お口に合って良かったです。料理は亡くなった祖母から教えてもらっていたので、和食が中心になってしまって。」

「料理上手な方だったんだね。」


俺達は他愛のない会話を楽しみながら昼食を済ませた。その後は一緒に片付けをする。
食器を洗う絵莉たんとそれを拭く俺。
ヤバイ、この共同作業…幸せ過ぎる。ああ、幸せだ。幸せすぎて怖いくらいだ。



ーー
ーーー


なんだか食後から絵莉たんの様子がおかしい。
ソファーに座り緑茶を飲みながら様子を伺う。
視線が合わないし、さっきから会話も返事が最小限だ。
体調が悪い…ようではなさそうだし。
 

「何かあった?」

「えっと…」 

下を向き少し小さな声に慌てる。

「いや、話し辛いなら無理には聞かないよ。」

絵莉たんの視線が揺れる。言葉を発するのを躊躇うような仕草に、俺の鼓動も早まる。

何があったのだろうか?
仕事?それとも人間関係?

「え、えっと…一昨日の木曜日なんですが…」

木曜日?確か絵莉たんからお誘いのメールがあった日だ。

「会社近くの本屋に新刊を買いに行って、その時にある女性の電話での会話を聞いてしまって…その会話の相手が…その…え、瑛一さんだったんです。」

女性?電話?絵莉たんの就業時間は17時まで…
その時間に女から電話?
……

……………!!!

!!!!!!!!!!

「てかあんた今どこ住んでんのよ?
ヒルズ行ったら住んでる気配はないし、家具や荷物はそのままなのに何故か本棚の中身だけははごっそりないし。」

「30前の男が何処に住もうが俺の勝手だろ。
てか部屋に入ったのかよ。プライバシー何処いった?」

「いい年した弟が仕事ばっかで浮いた話もないから母さん達が心配してお見合いをセッティングしたのに、あんたが素気無くすげなく帰ったからでしょ。あの後相手側に断るの大変だったのよ」


「それこそ知るか。そっちが勝手に仕組んだんだろ。俺は結婚する気は無い(絵莉たん以外と)し、しばらくヒルズにも実家にも帰らないから。母さん達には姉さんから言っといて。」


!!!!!!!!!!!


「その…会話を聞いてしまったのはすみません。瑛一さんの名前が聞こえて思わず立ち止まってしまって……そのままお姉さん?の話し声を聞いてしまったんです。あの、瑛一さんはやっぱりヒルズに住んでたんですよね?あのアパートは別に借りてるという事でしょうか?お見合いは…すぐ帰られたみたいですけど…そ、その…瑛一さんは……け、結婚される気は無いとの事で….…あっ、したいとかじゃないんです!ただ、その…いずれ別れる予定なら、その、長く付き合ってから別れを告げられるのは辛いので、それなら….今の…すみません、うっ、泣くつもりは無くて…今わ、別れ…」

「嫌だ」

「瑛一さ、ん?」

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、別れない、絶対に別れない。絵莉たんとは別れない。」

絵莉たん呼びしてしまった。だが今はそれどころじゃない。最後まで言わせない。

「絵莉ちゃん、お願いだから別れるなんて言わないで…。そんなの考えたくもないし、耐えられない。」

どうすれば伝わるだろうか。
絵莉たんへの愛がーーー。
この異常なくらいな想いがーー。

「好きなんだ、君が好きで好きで好きで好きで、おかしくなるくらい好きなんだ。お願い、お願いします。別れないで下さい。嘘ついてごめんなさい。ヒルズに住んでます。今はあのアパートだけどヒルズにも部屋があります。実家は金持ちです。でも次男だから別に跡取りがどうのこうのも無いし、お見合いもしたけど、すぐ帰ったよ。だから相手の名前も知らない。結婚する気は無いって言ったのも事実。でもそれは絵莉ちゃん以外とって意味なんだ。だから俺は絵莉ちゃんと別れる予定なんて未来永劫無い!だから本当に別れるなんて言わないで!思わないで!俺を捨てないで!!何でもするから。」
俺はみっともなく泣きながら絵莉ちゃんの足元に土下座した。

「え、瑛一さん!やめて下さい!」

絵莉たんが慌てて立ち上がろうとするのを抑えて俺は足に縋り付く。

「お願いします。別れるなんて言わないで。お願いします。俺を捨てないで下さい。お願いします。絵莉ちゃんがいないと俺は駄目なんです。絵莉ちゃんじゃないと駄目なんです。」

俺は土下座して縋り掴んだ絵莉たんの足から靴下を脱がせ、素足に口付ける。

「なっ!やめて下さい!瑛一さん!そんなき、汚いとこっ、んっ」

「嘘ついてごめんなさい。許して下さい。ごめんなさい。捨てないで下さい。」

右の5本の足の指を全て口に含む。親指の爪から小指の爪まで舌を真横に滑らせて、そのまま小指の腹の部分から親指の腹の部分までまた滑らせて舐める。そして唾液をチュッチュと啜る。

「何でもしますから許して下さい。」

そのまま足の間も舐める。駄目だ、こんなのご褒美じゃねえか!許しを乞う立場のくせに俺は泣きながらも興奮している自分に呆れる。

「もう、やめて、ん、くださ、ぁぃ。わ、別れないです、から。」

バッと見上げると涙を流しながら絵莉たんが俺を見つめている。

「本当に?本当に別れない?俺の事捨てない?」

「捨てるだなんて!わ、私の方が捨てられると思っていて…瑛一さんに直接聞いたわけでもないのに勝手に決めつけて……私の方こそごめんなさい。別れないで下さい。お願いします。好きです、瑛一さん。」


俺は何度も頷いた。
首が取れるんじゃないかってくらいに頷いた。
そして、体中の水分を目と鼻から流した。
泣きすぎて子供みたいにヒックヒックとしゃっくりが止まらなくなり、絵莉たんに笑われた。また絵莉たんの笑顔が見れた。俺に笑顔を見せてくれた。
側にいるだけで嬉しくて、笑顔を見ると幸せで、ずっと、ずっと一緒に居たい。


ずっと一緒に……そうだ!


「よし、今すぐ結婚しよう」

「え?」

「パソコンある?婚姻届をダウンロードして、今から区役所に出しに行こう。大丈夫、印鑑は区役所が俺の最寄駅の先だからアパート寄っていけばいいし、証人は俺の知り合いを誰か呼べば2人くらいすぐ捕まるから。」

「え、えっ? 」

「だって早く結婚すれば絵莉ちゃんが不安になる事もないし、誰にも邪魔出来ないし、何より俺がしたい!今すぐしたい!絵莉ちゃんをお嫁さんにしたい!!」

嫁、俺の嫁。
専用の紙に名前を書いて提出するだけで、世間は夫婦と認める。
夫婦
上から読んでも下から読んでも
ふ  う  ふ

そして絵莉たんが成瀬になる。
成瀬絵莉。誂えたあつらえたかの様に素敵な名前だ。
日本中探しても、こんなにピッタリ、しっくりくる名前はないんじゃなかろうか。
そして二人してイニシャルは《E.N》
お揃いなのだ。ペアなのだ。運命なのだ。

いい事づくしじゃないか。
何で俺はもっと早くに気づかなかったんだ。
気づいていたら、絵莉たんが無駄に傷つくこともなかったのに。

「ま、ま、待って下さい瑛一さん!そんな簡単に決める事じゃないです。私にはもういないですけど、瑛一さんにはご家族も親戚の方もいらっしゃるし、それに、まだ私も突然の事でまだ気持ちの整理が…」

絵莉たんの困った顔を見て、高揚していた気分が下降する。確かに、焦りすぎた感はある。まぁ親戚や家族への報告はどうでも良いが、一生に一度の事だ。本来ならゆっくりと愛を育み、ムードのある場所で甘いセリフのプロポーズをして…ん?…プロポーズ……?甘いセリフ?


!????


ああ、何てことを!
一生に一度の!
神聖なるプロポーズを!
俺は…よし、コンビニ行こう!的なノリで口にしてしまったなんてーー。


リセットだ。リセットしよう。リセット…出来ますかね?

「ごめん。何か、絵莉ちゃんの事になると暴走しがちになるみたいだ。」

なんだか、絵莉たんには格好悪いところばかり見せている気がする。
俺がしょんぼり落ち込んでいると

「ふふっ」


笑う絵莉たんの周りがキラキラとしている。
やっぱり絵莉たんは天使…。
好きなんだ。いや、愛してるんだ。だから、俺と一緒に居て欲しい。ずっと側に居て欲しい。
絵莉たんがいるだけで俺は幸せなんだ。

絵莉たんが俺の隣で笑っている、それがすごく幸せだーーー。





fin.












ーーっていい感じに終わらせないよ?瑛一です。
足舐めたくらいじゃ駄目でしょ。
皆、騙されないでしょ。

はい、続き、続き~
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