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20 オルグ騎士隊長との再会
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てっきり、革命が起こった時に死んだもの…と思っていた騎士隊長が目の前に現れ、シャルリンテは一瞬思考が止まる。
まさに、今、話に出ていた張本人だった事もあり、噂をすれば影…というのは本当なのだな…と頭の片隅でぼんやりと思った。
「…騎士や近衛は命に代えても王をお守りする事が、一番の仕事なのに…。軍部の暴走を止められず…生き延びている自分が恥ずかしいです」
そう言って、オルグ騎士隊長はシャルリンテから、辛そうに顔を背けた。
そんなオルグ騎士隊長の腕を取って、すっと横に立ったのは、背の低い黒髪の女だった。
その女は、華やかな印象のオルグ騎士隊長とは真逆で、陰気な印象を与え、そばかすだらけで地味だった。
オルグ騎士隊長と並ぶと、ちぐはぐで、不釣り合いとしか言いようがない。
「ああ…シャルリンテ様、こちらはナーシュという者で、王宮では下女として働いていた者です」
その、ナーシュと紹介された女は、正式な挨拶があるという事も知らないようで、頭を少しだけぺこっと下げた。
オルグ騎士隊長は、そんなナーシュを特別咎める様子もなく、シャルリンテに代わりに謝った。
「色々と…無礼をお許しいただきたい。ナーシュは身分が低く、礼儀も知らない…。けれど自分に惚れていて…。命懸けで助け出してくれました。尽くしてくれますので…私も段々絆されて…」
そう話すオルグ騎士隊長を、ナーシュの榛色の瞳は、愛しそうに追いかける。
その瞳を見ただけで、オルグ騎士隊長に恋をしているのが、痛いほど分かった…。
きっと、命を差し出しても構わないほど…。
その瞳は美しかった。
「…革命で、そうやって助け出された仲間も沢山います。私はこれから、彼女の故郷へ行き、結婚しようと思っています…」
オルグ騎士隊長は、そう言うとシャルリンテから目を離し、横にいたスーリに向き直った。
「…スーリ様。あなたには、とっくの昔に振られておりますが…またお会いできてよかった…。長かった髪を切っておしまいに?けれど、相変わらずお美しい…」
オルグ騎士隊長は、未練たっぷりの様子で愛しそうにスーリを見つめ、許可なくスーリの手を取り、そこに口付けした。
スーリは品よくほほ笑むと、空いている方の手でスカートを小さく広げ、(光栄です)という返事をした。
オルグ騎士隊長は、スーリへの気持ちが湧き上がってきたせいで、離れがたくなってしまったようだった。
いつまでも立ち去らないオルグ騎士隊長のマントを、ぐっと引っ張ったのは、ナーシュだった。
顔は無表情だったが、その瞳は嫉妬に燃えていた。
「…ああっ…では、名残り惜しいですが失礼…いたします。ご多幸を…お祈り…して…おりまっ…す…」
最後の言葉はナーシュに力強く引っ張られ、引きずられるように去って行ったので、聞き取りにくかった。
長身のオルグ騎士隊長が、人混みに紛れて見えなくなると、スーリが舌打ちした。
「…あいつ…殴りたい。許可なく人の手に……」
「…よかったわね。まだ、オルグ騎士隊長に想われていて…。オルグ騎士隊長も、ナーシュに想われて幸せね」
シャルリンテは、見えなくなった二人を見つめたまま言った。
「突然、革命が起こったから…逃げるという選択肢は、私にはなかったのだけれど…。私に、想いを寄せる男性が助け出してくれていたら…あんな風にドラマチックな展開になって…今頃、愛の逃避行をしていたのかもしれない…」
そして、心の中で思った。
オルグ騎士隊長と自分は、同じように王宮から脱出したのに、片方は愛してくれる者との結婚が待っている。
自分は、売り飛ばされ、サシュナでの拷問が待っている…。
なぜ、あの時、スーリが自分を助けてくれる…などと、一瞬でも思ったのか。
敵国の王子という事は、歪められない事実だったのに…。
まさに、今、話に出ていた張本人だった事もあり、噂をすれば影…というのは本当なのだな…と頭の片隅でぼんやりと思った。
「…騎士や近衛は命に代えても王をお守りする事が、一番の仕事なのに…。軍部の暴走を止められず…生き延びている自分が恥ずかしいです」
そう言って、オルグ騎士隊長はシャルリンテから、辛そうに顔を背けた。
そんなオルグ騎士隊長の腕を取って、すっと横に立ったのは、背の低い黒髪の女だった。
その女は、華やかな印象のオルグ騎士隊長とは真逆で、陰気な印象を与え、そばかすだらけで地味だった。
オルグ騎士隊長と並ぶと、ちぐはぐで、不釣り合いとしか言いようがない。
「ああ…シャルリンテ様、こちらはナーシュという者で、王宮では下女として働いていた者です」
その、ナーシュと紹介された女は、正式な挨拶があるという事も知らないようで、頭を少しだけぺこっと下げた。
オルグ騎士隊長は、そんなナーシュを特別咎める様子もなく、シャルリンテに代わりに謝った。
「色々と…無礼をお許しいただきたい。ナーシュは身分が低く、礼儀も知らない…。けれど自分に惚れていて…。命懸けで助け出してくれました。尽くしてくれますので…私も段々絆されて…」
そう話すオルグ騎士隊長を、ナーシュの榛色の瞳は、愛しそうに追いかける。
その瞳を見ただけで、オルグ騎士隊長に恋をしているのが、痛いほど分かった…。
きっと、命を差し出しても構わないほど…。
その瞳は美しかった。
「…革命で、そうやって助け出された仲間も沢山います。私はこれから、彼女の故郷へ行き、結婚しようと思っています…」
オルグ騎士隊長は、そう言うとシャルリンテから目を離し、横にいたスーリに向き直った。
「…スーリ様。あなたには、とっくの昔に振られておりますが…またお会いできてよかった…。長かった髪を切っておしまいに?けれど、相変わらずお美しい…」
オルグ騎士隊長は、未練たっぷりの様子で愛しそうにスーリを見つめ、許可なくスーリの手を取り、そこに口付けした。
スーリは品よくほほ笑むと、空いている方の手でスカートを小さく広げ、(光栄です)という返事をした。
オルグ騎士隊長は、スーリへの気持ちが湧き上がってきたせいで、離れがたくなってしまったようだった。
いつまでも立ち去らないオルグ騎士隊長のマントを、ぐっと引っ張ったのは、ナーシュだった。
顔は無表情だったが、その瞳は嫉妬に燃えていた。
「…ああっ…では、名残り惜しいですが失礼…いたします。ご多幸を…お祈り…して…おりまっ…す…」
最後の言葉はナーシュに力強く引っ張られ、引きずられるように去って行ったので、聞き取りにくかった。
長身のオルグ騎士隊長が、人混みに紛れて見えなくなると、スーリが舌打ちした。
「…あいつ…殴りたい。許可なく人の手に……」
「…よかったわね。まだ、オルグ騎士隊長に想われていて…。オルグ騎士隊長も、ナーシュに想われて幸せね」
シャルリンテは、見えなくなった二人を見つめたまま言った。
「突然、革命が起こったから…逃げるという選択肢は、私にはなかったのだけれど…。私に、想いを寄せる男性が助け出してくれていたら…あんな風にドラマチックな展開になって…今頃、愛の逃避行をしていたのかもしれない…」
そして、心の中で思った。
オルグ騎士隊長と自分は、同じように王宮から脱出したのに、片方は愛してくれる者との結婚が待っている。
自分は、売り飛ばされ、サシュナでの拷問が待っている…。
なぜ、あの時、スーリが自分を助けてくれる…などと、一瞬でも思ったのか。
敵国の王子という事は、歪められない事実だったのに…。
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