24 / 47
24 ダート
しおりを挟む
「──がっついて食べている割には、食べ方が綺麗だな」
「そういう所は厳しく育てられたの…」
シャルリンテはダートと名乗ったその男と、サシュナの国境より手前の盛り場にある、静かな店で夕食をとっていた。
「やはり、カリスト貴族の家出娘ってとこか…?」
シャルリンテは、それには答えなかった。
てっきり、すぐに売り飛ばされるか、どこかに連れ込まれたりするのかと思っていたから食事に誘われ、内心、拍子抜けしていた。
ただ、頭の中でスーリの声が何回も響き、男の話も半分は聞き取れていなかった。
《──どこにいるんですか?シャルリンテ様》
《──連れ去られたんですか?応えてくださらなければ…助けに行けない…》
この頭の声を切るスイッチはないのだろうか?
もしくは、この婚姻石をどうにかして取り出す方法はないのだろうか?
スーリも、自分で取り出したとか何だとか、クースリューにごちゃごちゃ言っていたし、魔力があれば簡単に取り出せそうだった。
ただ、今は自分に魔力が全くない…。
無力感に襲われているその時、再び頭の中にスーリの声が響いた。
《……白状します。実は公開処女喪失の場が、あなたの本当の処女の喪失ではない。薬を使って寝入っているあなたを、何度か勝手に抱いた事があります…》
そんな言葉が頭に流れてきたシャルリンテは、思わず頭の中で聞き返した…。
《──嘘!》
《嘘に決まっているでしょう?…返事しましたね。ご無事ですか?…そもそもメッシュも消えていなかったし、魔術も使えていたでしょう…。私は、そんな鬼畜じゃない…》
シャルリンテは、スーリの嘘に思わず返事をしてしまった事を激しく後悔していた。
そこからスーリからの問いかけが一切無くなったのも、場所が分かってしまった事の裏付けのようで不安が募る。
冷や汗が、背中に伝ったのが、シャルリンテには分かった。
──逃げよう。
そう思って、急に立ち上がったシャルリンテに、ダートは言った。
「まだ…食事が終わってない。厳しく…育てられたんだろう?立ち上がるのはルール違反だ…」
魔力を失っている今、男の魔力がどのぐらいあるのか全く分からなかった。
だが、雰囲気から察するに、かなり力を持ってそうな気もする…。
父王は酒を飲まない男だったから、酒の入った男の相手をした事は一度もない。
ダートは機嫌は良さそうだが、突然怒り出しそうな気配もあり、得体が知れなかった。
シャルリンテは逃げたいという、焦る気持ちを押し殺して、静かに腰をおろした。
「お利口だ…」
ダートはそう言うと、微笑んだ。
しばらく二人は黙って食事を続けていた。
その沈黙に、耐えきれなくなったシャルリンテは口を開いた。
「…私を、どこに売るんですか?」
ダートは、飲んでいたワインを吹き出して、むせながら言った。
「いや…、俺は女衒ではないから女を商品にはしていない。まぁ、魔力も結構持っている方だから、商人をしながらフラフラしてる…。今日は、たまたま立ち寄ったこの国で少し人肌恋しくなって、すっ転んでいるあんたに声をかけただけ…」
咳が落ち着いてきたダートはワイングラスに、再び口をつけながら金色の瞳でシャルリンテを見た。
「まぁ…あわよくば…と思わないでもなかったが…」
ダートの瞳は妖しく煌めいた…。
「そういう所は厳しく育てられたの…」
シャルリンテはダートと名乗ったその男と、サシュナの国境より手前の盛り場にある、静かな店で夕食をとっていた。
「やはり、カリスト貴族の家出娘ってとこか…?」
シャルリンテは、それには答えなかった。
てっきり、すぐに売り飛ばされるか、どこかに連れ込まれたりするのかと思っていたから食事に誘われ、内心、拍子抜けしていた。
ただ、頭の中でスーリの声が何回も響き、男の話も半分は聞き取れていなかった。
《──どこにいるんですか?シャルリンテ様》
《──連れ去られたんですか?応えてくださらなければ…助けに行けない…》
この頭の声を切るスイッチはないのだろうか?
もしくは、この婚姻石をどうにかして取り出す方法はないのだろうか?
スーリも、自分で取り出したとか何だとか、クースリューにごちゃごちゃ言っていたし、魔力があれば簡単に取り出せそうだった。
ただ、今は自分に魔力が全くない…。
無力感に襲われているその時、再び頭の中にスーリの声が響いた。
《……白状します。実は公開処女喪失の場が、あなたの本当の処女の喪失ではない。薬を使って寝入っているあなたを、何度か勝手に抱いた事があります…》
そんな言葉が頭に流れてきたシャルリンテは、思わず頭の中で聞き返した…。
《──嘘!》
《嘘に決まっているでしょう?…返事しましたね。ご無事ですか?…そもそもメッシュも消えていなかったし、魔術も使えていたでしょう…。私は、そんな鬼畜じゃない…》
シャルリンテは、スーリの嘘に思わず返事をしてしまった事を激しく後悔していた。
そこからスーリからの問いかけが一切無くなったのも、場所が分かってしまった事の裏付けのようで不安が募る。
冷や汗が、背中に伝ったのが、シャルリンテには分かった。
──逃げよう。
そう思って、急に立ち上がったシャルリンテに、ダートは言った。
「まだ…食事が終わってない。厳しく…育てられたんだろう?立ち上がるのはルール違反だ…」
魔力を失っている今、男の魔力がどのぐらいあるのか全く分からなかった。
だが、雰囲気から察するに、かなり力を持ってそうな気もする…。
父王は酒を飲まない男だったから、酒の入った男の相手をした事は一度もない。
ダートは機嫌は良さそうだが、突然怒り出しそうな気配もあり、得体が知れなかった。
シャルリンテは逃げたいという、焦る気持ちを押し殺して、静かに腰をおろした。
「お利口だ…」
ダートはそう言うと、微笑んだ。
しばらく二人は黙って食事を続けていた。
その沈黙に、耐えきれなくなったシャルリンテは口を開いた。
「…私を、どこに売るんですか?」
ダートは、飲んでいたワインを吹き出して、むせながら言った。
「いや…、俺は女衒ではないから女を商品にはしていない。まぁ、魔力も結構持っている方だから、商人をしながらフラフラしてる…。今日は、たまたま立ち寄ったこの国で少し人肌恋しくなって、すっ転んでいるあんたに声をかけただけ…」
咳が落ち着いてきたダートはワイングラスに、再び口をつけながら金色の瞳でシャルリンテを見た。
「まぁ…あわよくば…と思わないでもなかったが…」
ダートの瞳は妖しく煌めいた…。
18
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる