魔王を倒して故郷に帰ったら、ハーレム生活が始まった

スタジオ.T

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第39話 大英雄、ようやくカルカットに到着する

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「魔力が異様に高ぶっているね。どうにも不思議だ」

 サティは気を失って倒れているナツの額に手をおいて、そう診断した。顔を真っ赤にして倒れていたナツの体温は、予想以上に熱かったらしい。

 それ以外には異変は見られず、ナツの呼吸は穏やかになり始めていた。

「それにしても、まさかこんなところでおっ始めるとは思わなかったから、私も油断していた。あともうちょっとだったのにね」

「俺も……熱に浮かされていて……」

「良いよ良いよ。こんな狭い部屋に男と女。何も起きないはずがなく……むしろ健全な証拠だ」

「…………はぁ」

 敵陣の真っ只中で発情してしまった自分が情けない。
 さっきからチャリが鋭い視線を向けながら、「グヒィ、グヒィ」と鳴いて俺に抗議している。

 サティは、ナツの身体を抱きかかえて立ち上がった。

「早くここを離れようか。命に別状は無いけれど、こんなに弱った状態の人間を放っておくのは良くないからね」

「ナツ……わるい」

「むしろ最後までヤっておいた方が、彼女の欲望も満たされてウィンウィンだったかもしれないけれどね。今日はここまでにしておいた方が良いだろう」

 ニヤリと笑ったあとで、サティはナツを抱えてチャリの上に乗った。「グヒィン」と大きくいなないたチャリは、そのまま納屋を飛び出して猛ダッシュで走り始めた。

 霧深い森の中をスイスイと進んでいくチャリは、明らかにさっきよりもスピードをあげている。

「おい……! ちょっと速くないか!?」

「ちょっと、反省しろってさー。あーはっはっはっ」

 サティの高笑いが遠くなっていく。

「くそっ。何も言い返せねぇ!」

 今回ばかりは自業自得だ。耐えず湧き出すドロハイエナたちを振り切りながら、俺は森の中を全速力で疾走しっそうした。


◇◇◇


 ようやく旧サラダ村地帯を抜けたころには、夕方近くになってしまっていた。出発してから2時間以上経っている。そこから街道に入って、急ぎ足でカルカットまで進んでいった。
 俺が追いついた時には、ナツも目を覚ましていてチャリの上に乗っていた。走ってきた俺にナツは顔を伏せて、ぺこりと頭を下げた。

「お、おはよう……ごめん、もう大丈夫だから」

「無事で良かった。危険な目に合わせてすまない」

「ううん、そんなことない」

「そうか……」

「うん」

 ……それ以上、互いになんと言葉を交わして良いのか分からずに、視線をらす。サティだけがニヤニヤと俺たちの顔を見ていたが、気にしないことにした。

 幸いにも夕方前にはカルカット市までたどり着くことが出来た。市の入り口近くまで行くと、多くの行商人や旅人でにぎわっていた。
 中に入るには身分証明などの検査が必要で、その列が門の外までずらりと並んでいた。その人の多さにさすがのサティも目を丸くしていた。

「人がゴミのようだ」

「やめろよ」

「いつもはこんなにいないよ。祭りが近いから今日はひときわ人が多いの。特にこっち側の門は業者さんとか多いから」

 ナツがなかなか進まない行列にため息を付きながら言った。
 四方に門を構えるカルカットは、西のイザーブとも呼ばれていて、経済活動が盛んに行われている。ただイザーブと違い治安も乱れていないのは、少なからず警察機構がきちんと機能しているお陰でもある。

「おぉ、大英雄さまではないですか! お会いできて光栄です!」

 その警察機構の役人に出迎えられて、顔パスでカルカット市に入っていく。本来は身体検査と滞在場所の申告と、ナツのように商売をしている人間は活動許可書が必要で、ブラックリスト入りしている悪徳業者が入れないようになっている。

 入国管理口を抜けると、街の喧騒けんそうが飛び込んできた。見渡す限り、屋台がところ狭しと並んで盛んに商売が行われている。

「中はこんな感じか。思っていたよりも綺麗だな。細々と見えるけれど、統制は取れている。相当金かけたんだね」
 
「サティちゃん、カルカットに来るのは初めて?」

「初めてじゃないよ。最後に見たのは20年くらい前かな。あの時はまだ区画もこんなに分かれていなかったし、屋台も出ていなかった。しょぼくれた田舎都市みたいなイメージだった」

「……ず、随分と小さい時のことをよく覚えているんだね」

 すらすらと何十年も前のことを説明してみせるサティに、ナツは困った様子で返した。俺が注意を促すと、サティは面倒臭そうに言った。

「20年前って言っても絵だよ。実家の壁に貼ってあった風景画がカルカットを描いていたんだヨー」

「あー、そっか。そういうことね」

 幸いにも笑って返してくれたナツは、チャリを誘導して一際広い大通りの方へと足へ進めた。

「私の卵、直接、店に仕入れているの。こっちこっち」

 ナツに案内されながら、俺は久々の都会の景色に少し胸を弾ませていた。

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