魔王を倒して故郷に帰ったら、ハーレム生活が始まった

スタジオ.T

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第41話 大英雄、レッツショッピング!

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 ベネディ菓子店は月並みな表現で言うと、おしゃれなカフェみたいな雰囲気だった。天井は高く、席の感覚も広々としている。窓は大きく、店内を照らす明かりも火を使わずに、魔法の光でまかなっている。
 
「綺麗な店だな、なんか……オシャレっていうか。サラダ村にはこういう感じの店って無いよな」

「最近の流行りらしいよ。カルカットの路面店だからね。最先端を取り入れないと、時代に置いていかれちゃうから」

 ナツが説明するところによると、この食品街(別名:美食ストリート)における店舗の入れ替わりは相当激しいらしく、土地代ショバだいも高い。よほど強いアピールポイントが無いと、すぐに客足が遠のいてしまうらしい。

「いくら味が美味しくても、やっぱりみんな特別な空間を求めているからね。そう考えると、こういう感じの店構えの方が客は入るんだ……ってベネディさんが言ってた」

「なんか時代が変わったみたいだな」
 
「カルカットは特にね。すごいよ、最近出来たのショッピングタワーとか見てみると腰抜けるんじゃないかな」

「ショッピングタワーねぇ……今日はそこに行くのか?」

「うん、せっかくだから行こー!」

 はしゃぐナツの横でサティが「うーん」と不満そうに言った。

「タワーねぇ。私が少し見ない間に高層建造物まで建てるようになったか。そういうのはあまり、好きじゃないんだけれどな」

 ムスッとした顔をして、サティはコーヒーをすすった。苦いことに更に腹が立ったのか、すぐに角砂糖を口に入れて、頬づえをついた。

 厨房の方をちらちらと見ながら、サティがつぶやいた。

「プディング、はやくこないかなぁ」

「さっきからそればっかりだぞ。少しは落ち着いて待てよ」

「むぅ……」

 駄々をこね続けたサティはつまらなそうにフォークで机を叩いた。
 こうしていると本当に子どもにしか見えない。どこかで入れ替わったんだろうか。もし、本当にそうだったら良いんだけど。

「お…………!」

 しばらくして、ベネディが大きな皿を持ってきた。
 鼻をくすぐる甘い匂いが漂ってくると、サティの顔色も不機嫌そうな顔から光が差し込んでサッと変わった。

「お待たせしました。こちら、当店おすすめのプディングです」

「へぇ、カスタードプディングか」

「どうぞ、ごゆっくり」

「ありがとう、ベネディおじさん」

 金と見紛うような光輝くカスカードプディングが目の前に置かれる。
 日本で良くみるようなプリンとは違って、カラメルソースはかかっておらず、その分卵の匂いが分かる。

「卵と砂糖と牛乳だけなんだけど、私も家で作ろうと真似して無理だったんだよ。どーも配分が難しくて……食べたら腰が抜けると思うよ」

「そんな大げさな」

「ふふん、そんなセリフは食べたあとで言って」

 自信たっぷりにナツは言った。
 
「じゃあ、いただきます」

 特にスイーツに対する料理技術という面では、プルシャマナはまだ発展途上だ。微細をらした現代の甘味を食べてきた俺にとっては、この世界のお菓子は少し大味だ。

「香りは悪くないな」

 ……口に入れた瞬間に自分の考えが間違っていたことに気がついた。
 まるで綿にでも触れるような柔らかさだった。スプーンが手応えがなくすんなりと入って、焼き目の香ばしい匂いがふわりと香ってくる。
 
「こんな……柔らかさ、どうやって」

「驚くのはまだ早いよ」

 ナツが不敵に微笑む。
 スプーンですくったその一口を舌で転がすと、口の中に絶妙な甘味が広がった。砂糖をふんだんに使いつつも、卵と牛乳の味をしっかり引き出している。この味のバランスは、あっぱれと言う他無い。

「なんじゃ……こりゃ……」

 腰が抜けた。
 冗談抜きで腰が抜けた。

「とんでもなく、うまい」

「へへへ、さすがの大英雄も敵わないでしょ」

「まさか……ここまでとは」

 焦げ目の具合も完璧だ。苦くなり過ぎないように計算されている。
 いつの間に、この世界にこんな美味いものが出来ていたんだ。数年前から一足飛びで進歩した調理技術にスプーンが止まらない。

「サティちゃんはどう?」

「……う」

 俺の隣でプディングを食べたサティはスプーンを持ったまま固まっていた。様子がおかしいとのぞき込むと、ほろほろと涙を流していた。

「サティ?」

「サティちゃん?」

「…………これは」

 サティは口の中にあったものを、ゴクリと飲み込むと弾んだ声で言った。

「うまい……!」

 店中に叫ぶように言い放つと、サティはまるでスコップで掘るようにスプーンを進め始めた。口へと運ぶ手は止まらず、みるみるうちに皿が空になっていく。

「うまい、うまい……!」

「気に入ってもらえて良かった!」

「こんなものが作れるようになったんだな。いやぁ、進歩したもんだ。僥倖ぎょうこう、僥倖」

 サティの言葉を聞いてナツが誇らしげに自分の胸を叩いた。

「私も頑張った甲斐かいがあった」

「ナツの卵もすごいな。こんなに良い味が出せるもんなんだな」

「パパの時代から改良してね。サラダ村時代から養鶏場も広くして、伸び伸びと鶏を育てるようにしたの。そしたら卵の味が良くなってね、ベネディおじさんが目をつけてくれたってわけ」

「なるほどね、ナツの養鶏場も昔より土地は広くなったもんな」

「そうそう、品質向上! サティちゃんも思うでしょ」

「発展もわるくない」

「よし、この調子でショッピングタワーへ行こー。ごー!」

「ごー」
 
 プディングの効果は凄まじく、あっという間に皿を平らげたサティをショッピングタワーへと急がせる分には十分だった。ベネディおじさんにお礼を言って、俺たちはレイナへの贈り物を買うために中心部へと向かった。

 歩いてみて分かったが、カルカットはとても広い。カサマド町の10倍はある。どこも人で賑わっていた。中心部へ向かうに連れて、人はますます多くなっていた。

「タワーか。プルシャマナに高層建造物が出来るなんて、思いもしなかったよ。何階建てだい? 4階建て、それとも5階?」

「ふふふ、それは見てのお楽しみだよ」

 やけにもったいぶった調子でナツは笑った。
 中心部までは徒歩で20分ほど。だがそこにたどり着くまでもなく、俺たちはタワーの姿を確認することが出来た。

「じゃーん、あれが噂のカルカットのショッピングタワーでーす!」

「……なんじゃ、ありゃ」

 見えてきたのは巨大な建造物。円形のタワー。
 青い空を貫く槍のような造形の建物は、10階建て以上のビルほどの高さがある。見上げると首が痛くなるほどの建造物を見たのは、この世界では初めてのことだった。

「はってん……」

 サティが俺の隣で唖然あぜんとしたようにつぶやいた。
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