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前世

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『──葵ちゃん!これ!お願い一回やってみてくれない?ハマらなくても全然いいから!』

このゲームを勧めたのは親友の日鞠だった
『☆ぱにっく!恋する双子の大騒動☆』
というタイトルのゲームだった
『私は好きなんだけど他の人に勧めにくくてね⋯でもどうしても語り合いたいんだよね~ネットで探そうとも思ったんだけど
画面にの向こうにいるのが誰かも分からないし』と困ったように笑って話していた
そういえば社会人になってから彼女はストーカーに合っている気がすると相談してくれていた
見知らぬ人からラブレターをもらったが振った後から
時々視線を感じたり人影を見かけるようになったそうだ
警察に相談しようにも証拠がいつも掴めないないので出来ないのである

「乙女ゲームとか興味なくてやったことがないけど⋯」

不憫な親友の頼みだ
全部網羅して話し相手になってやろうと意気込んで始めた
友人はヒロイン含めての箱推しで強いて言うなら元暗殺者のラルフが好きなんだとか

私としては攻略対象達よりもヒロインの双子が好みで
どちらかといえば妹のミラ推しだ
明るい性格と可愛らしい見た目がとても好感がもてる
妹がいたらこんな子がいいなとプレイする際いつも思っていた

双子といえど二卵性双生児という設定なのでカラーリングは同じだが顔立ちは結構違う
姉は中くらいの背丈に腰まであるストレートの亜麻色の髪の毛に少し垂れ気味の薄紫の瞳
おっとりしていそうな印象だ
妹は姉よりも少し低めの背丈で肩につくくらいのショートのボブにクリッとした可愛らしい外見だ
最推しはミラではあるものの
綺麗なスチルとストーリーに自然とのめり込んでいった
内容は剣と魔法のファンタジー世界で
魔法の才能を持つ者はこの世界の成人(17歳)になった者から平民貴族関係なく最低3年~最大で5年間学園生活を義務付けられている
出てくる攻略対象は主に4人隠れルート含めると5人だ
プラチナブロンドの髪に若草色の瞳の王太子ルーク・ソレイユ
深緑の髪に髪より明るめの緑の瞳の宰相の息子リアム・ギルベルト
明るめの茶髪にオレンジの瞳の騎士団長の息子ライリー・エイダン
黒髪に赤い瞳の魔術師のリオ・クリント
追加でニーナ限定の隠れルートで元暗殺者のラルフの攻略対象達とこの学園で出会い
この中の誰かと恋に落ち
共に学園内のトラブルやイベントを乗り越えハッピーエンドを目指すストーリーだ
無事にハッピーエンドを迎えられたら
結ばれた攻略対象の卒業とともに学園を退学しし結婚するという形になる
ノーマルエンドでは誰とも結ばれず攻略対象とは友達のまま学園に5年生まで在籍し無事卒業

バットエンドでは王子の婚約者に嵌められ修道院行きか魔道士ルートではヤンデレになった攻略対象に監禁される
ラルフの場合はバットエンドでは殺されるという
私はまだラルフの攻略をクリアできていない何度も殺されている記憶しかない
何と言う振れ幅だろうか⋯

ヒロインによって選べる難易度が変わるこのゲーム
プレイヤーに選ばれなかった方のヒロインは
お助けキャラとして恋の相談に乗り
攻略のヒントや現在の高感度を教えてくれるというシステム
ミラを選べば難易度はイージーとノーマルで選べるが
ニーナは何故かハードモード専用だったため
数回しかプレイしたことがない
残念ながらまだ親友の推し
ラルフルートはクリアできていないまま死んでしまったようだ
ニーナの場合は彼女のその見た目通りのおっとりした性格とサポートに回るミラの独特な助言のため
なかなか高感度というか本人含め恋に落ちるのがゆっくりなのだ
もちろんライバルキャラも存在している
王太子ルークの婚約者ケイラ・マディソン
プラチナブロンドに深い青色瞳の美女だ
悪役令嬢はどの攻略対象を進もうとしても邪魔してくる彼女の最後もどのルートでも悲惨なものである

そんなゲームにドハマりしていた記憶が懐かしい
日鞠と遊ぶたびにこのゲームの話でもちきりだった
いつも通り休みの日に日鞠と楽しく話していたら

誰かに呼ばれている気がする



「──ちゃ⋯?⋯⋯⋯お姉ちゃん⋯お姉ちゃん大丈夫??」

あぁこれ⋯夢だったのか

ハッとなって目が醒めた
ミラが私の手を両手で掴みながらこちらを心配そうに見ている
ベットに寝かされているのかミントグリーンのカーテンと白い天井のへやにいる
「⋯⋯ミラ?⋯ここは?」
「保健室だよ お姉ちゃん倒れちゃったから⋯近くにいた人がここまで運んでくれたんだよ」
気絶した人間なんて重かったろうに
誰かが運んでくれたらしい
かなり動揺したのだろう
普段は「姉様」なのに「お姉ちゃん」に戻ってしまっている

「あら?気がついたー?具合はどう?」と言う声とともにカーテンが少し開く
のんびりした声の方を見れば白衣を着た先生が立っていた

倒れたのは貧血のせいで特に大きな異常は見られないということで早々に寮に返された
保険室の先生から話を聞けば入学式はとっくに終わった時間なんだそうな

私が寝こけている間
入学式が終わって先生とミラが戻ってくるまで運んでくれた人がミラの代わりに側にずっといて見ていてくれたそうだ
悪いことをしてしまったな⋯

今度お礼に行かなければ
寮に向かいながら「どんな人が運んでくれたの?」と聞くと
「それが名前聞こうとしたら⋯大したことはしてない⋯って言われて教えてもらえなかったの
お礼にも来なくていいって
それにしてもカッコいい人だったなぁ⋯綺麗な銀の髪に水色の目が印象的な人だったよ」


「えっ!?」
その言葉を聞いて思い当たるのは攻略対象のラルフしかいない


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王子の瞳の色と一部のキャラの名前変更しましたと
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