ドSな幼馴染の分かりにくい愛情表現

めるてぃ

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【7話】 思い出せない記憶

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そんなに優しいキスされたら拒みたくても拒めないよ…
今日は何だか変だ。いつもなら怖いし、嫌悪感しかなかったのに。快人が少しだけ優しく感じた。
でも、たまたまかもしれない。

「…本当に流されていいいわけ?このまま抵抗しないならさっきより激しいのするけど」

「え…?」

さ、さっきより…!?放心しかけた脳内が一気に現実に戻る。きっと今の私の顔は茹でダコのように真っ赤になっているだろう。
ワタワタしている私を見てクックック…と笑いを堪えてこちらを見ていた。ま、まさか…

「嘘だけど?誰がお前なんかに欲情するんだよ」

やっぱり、からかってきただけだった…。まず快人の言葉を真に受ける事自体間違いだった。よく考えたら嫌がらせでしかないのに…。
直後、もやっとした感じが心を覆う。
……?何だろう。そんな私を他所に、荷物をまとめて言い放つ。

「おい、ボーッとしてると置いてくぞ」

「あ、ちょっと…」

私も立ち上がろうとすると、腰に鋭い激痛が走り、呻き声を漏らす。

「腰痛いの?」

「う、うん…」

ずっと座ってるだけでそんな痛みが出るわけないんだから、完全に快人のせい。
すると、私の目の前で腰を下ろして背中を見せる。

「ん」

乗れ、って事…?

「ありがとう…」

ずるい。何だかんだ見せてくるさり気ない優しさのせいで、怒れないじゃない。快人の背中は温かくて…私はそのまま小さい子供のように寝てしまった。

─────

快人side

寝てる…俺が男だって分かってて寝てんの?本当、無防備。

『んあぁっ』

…はぁ、あの顔はエロすぎ。誘ってんのかよ。このままだと本気で抑えらんねぇかも。そうしたら………。
あんな事ばっかやっても意味ねぇのに…。アイツはどうせそれ以外の事はどうなっても忘れるから。

─────

「ん…」

目が覚めると、ベッドの上にいた。

「起きた?」

「っ!!!?!?」

いつの間にか、隣に寝そべっている快人がいた。少しでも動けば触れそうな距離。

「な、ななな、なんで…」

「俺のベッドだからだけど」

それはそっか…、それもだけどそうじゃなくて…なんで私は快人の家に。しかもなんでベッドの上にいるの?あれから私は寝ちゃった…のかな?記憶が曖昧だ…起きたばっかりだからかも。
とゆーか、1日超したって事は…親が心配してる…怒られる…!!

「お前の両親には適当に言っといたから」

「ありがと…」

う、急に優しくなられたら調子狂うっちゃうよ…。
でもそれって、つい最近もなかった…?何か引っかかるんだけどあと少しの所で思い出せない。前もあった、この拭えないモヤモヤ感。でも、思い出さなきゃいけない気がする。

「とりあえずご飯は食ってけ」

「昨日の夜、食べてないからお腹空いてんだろ」

「あ、うん」

今日は好意に甘えてそうしてもらおう。昨日、昨日はあの快人とデートしたんだ。食べに行ったり遊びに行ったり…、あれ?どうしてだろう、何食べたのか、何処で遊んだのか、全然思い出せない。まるでわざと記憶を閉じ込められたような。おかしいな…昨日の事だよ?

どうして…思い出せないの─?

「どーぞ」

カタン、と皿を机に並べる。
目玉焼きとサラダ、ご飯に味噌汁、それから苺のヨーグルトがあった。

「苺…私の好きな食べ物をわざわざ?」

「ちげーし。たまたまあったから…」

ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。これもそうだ。多分私が強請った事がある。
幼稚園か小学1年生の頃、給食で苺のヨーグルトが出たんだよね。私はどうしてもおかわりしたくて、じゃんけんまでしにいった。それであと少しの所である男の子に負けたんだ。でも、何故か譲ってくれて…。
その男の子は快人に見えなくもなかったけど…あんなに昔の事なんだから覚えてないのも無理はないはず。

「な、んで…泣いてんだよ?」

珍しく狼狽える快人。その顔は酷く歪んで見えた。

「ううん…美味しくて。苺のヨーグルト、ありがとう」

─────

快人side

少しでも思い出せるようにって、苺のヨーグルトを出してやった。あれは、小1の頃。ヨーグルトは結構人気で沢山の奴等がじゃんけんで勝つ為に集まっていた。俺は大して好きじゃないけど、どうせなら全員に勝って後で咲にやろうと思ってた。それであげたヨーグルト。アイツは“嬉しそう”だった。今でも脳裏に焼き付いている。昔から苺系のスイーツ、デザートが好きだったから。

アイツが思い出せないのは俺に関する楽しい事、嬉しい事だけ。それら全て、全部あの親父のせいだった─。
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