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第一章
第二節 物語は未だ好転せず4
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「まったく。これだからヘルグニカの騎士は好かないよ。融通が聞かないを通り越して頭が石化してるってレベルだ、辟易するね」
透き通る声に透き通るような薄水色の髪。ほのかにカールがかった毛先は月桂樹のような草の冠と混ざるように絡まり、神秘的な空気を作り出す。
森の方から出てきたのであろう、二人に気づかれることのなかつった少年はただゆったりと揺蕩うように歩いてきた。
薄水色の髪に蒼く煌めく瞳、服は白地にうっすら滲むように空色の染みがまさに湖面を彷彿とさせる。
半袖のワンピースに似た一枚着。腰元には蔦をベルトのように巻いている。その姿はまさしくギリシア神話の神、その一柱だと一狼は僅かに息を飲む。
その歩く姿は悠然としており、しかしその動きの一つ一つがあまりに気品に満ち溢れ、振る手の動きから踏み出す一歩に至るまで人知を超えた神々しさが見るものを圧倒する。
しかし、そこまで風格が違うにも関わらずその立ち居振舞いに一切の敵意がない。
それどころか一歩、また一歩近づくにつれてどこか安堵してしまう。警戒心を持とうとするにも関わらず不自然なほどに自然と薄らいでしまう。
ザッ……
自身のこの異常を不自然に思うことで無理矢理に体を作る。いつでも動けるように。
しかしそれでも意識はどうしても弛緩して止まない。心は安堵するにも関わらず、それでも体に緊張を強要する。冷や汗が出るのは果たして何が原因なのか、それすらもわからなくなりながらも。
「ふふ、普段はどんなに渇望したって姿を表さない僕を前にここまで警戒されるなんてね。初体験てやつかな。どきどきしちゃうよ」
やはり男子とも女子ともつかない声で、どこか悪戯っぽく語られる言葉は耳にする度脳が蕩けそうになる。
「お前……何者だ!?」
一狼とアスピスの数メートル前まで来たところで一狼は牽制をかけた。今はそんなことをしている場合ではないと理解していながらも、こいつはないがしろにしていい人間ではないと脳の奥深くが警鐘をならしているがために。
「な、なぜあなた様が……!?」
驚愕は自分だけではなかった。隣ではアスピスが片膝をつき頭を垂れて完全に萎縮してしまっている。
奴も自分と同じく少年に負の感情を抱けないでいるようではあったが、それとは別に恐怖に似た……敬意と畏怖の表情を浮かべていた。
少年はアスピスを横目に見つつも、そっけない口ぶりでこちらに話しかける。
「ふん。君は昔から好きじゃないけど、偶然とはいえ奴等の封印術式を崩してくれたからね。特別に拝謁の栄誉を与えたげるよ」
そういうと完全にこちらを向く少年。
「ふふふ、ここまで来てまだ『身構えられる』なんて、さしもの僕もショックだなぁ」
クスクスと笑う。無邪気なその姿は正に絵画のような美しさと無垢な艶やかさしかなく、普段の自分であれば小一時間ばかしお茶に誘ってしまいそうなくらいの違法なまでの魅力に溢れていた。
だが、それゆえに不自然さが浮き彫りになってしまう。
「二度も聞かねぇぞ?テメーは誰だ!」
「貴様ぁ!!!エリス様に向かいなんたる暴言をっっっ!!!」
「君、もうしゃべんないで?自己紹介に横やりいれるとか、不躾に過ぎるよ?」
その一言でアスピスはついに押し黙った。しかし僅かに震えているのはこの少年の正体を知っているからであろう。
そう、一狼が思っていた最中。
「ってん?エリスって……」
ビキニが最初にあの剣の能力発動させた祝詞の……
「まだ時間は多少ある。自己紹介位はさせてほしいな」
そういうと胸に手を当て唄うように言葉を紡いだ。
「はじめまして。僕はエリス、アクエラ・エリス。聖泉クヴェレ湖の主にしてザルツバークの守護精霊さ」
透き通る声に透き通るような薄水色の髪。ほのかにカールがかった毛先は月桂樹のような草の冠と混ざるように絡まり、神秘的な空気を作り出す。
森の方から出てきたのであろう、二人に気づかれることのなかつった少年はただゆったりと揺蕩うように歩いてきた。
薄水色の髪に蒼く煌めく瞳、服は白地にうっすら滲むように空色の染みがまさに湖面を彷彿とさせる。
半袖のワンピースに似た一枚着。腰元には蔦をベルトのように巻いている。その姿はまさしくギリシア神話の神、その一柱だと一狼は僅かに息を飲む。
その歩く姿は悠然としており、しかしその動きの一つ一つがあまりに気品に満ち溢れ、振る手の動きから踏み出す一歩に至るまで人知を超えた神々しさが見るものを圧倒する。
しかし、そこまで風格が違うにも関わらずその立ち居振舞いに一切の敵意がない。
それどころか一歩、また一歩近づくにつれてどこか安堵してしまう。警戒心を持とうとするにも関わらず不自然なほどに自然と薄らいでしまう。
ザッ……
自身のこの異常を不自然に思うことで無理矢理に体を作る。いつでも動けるように。
しかしそれでも意識はどうしても弛緩して止まない。心は安堵するにも関わらず、それでも体に緊張を強要する。冷や汗が出るのは果たして何が原因なのか、それすらもわからなくなりながらも。
「ふふ、普段はどんなに渇望したって姿を表さない僕を前にここまで警戒されるなんてね。初体験てやつかな。どきどきしちゃうよ」
やはり男子とも女子ともつかない声で、どこか悪戯っぽく語られる言葉は耳にする度脳が蕩けそうになる。
「お前……何者だ!?」
一狼とアスピスの数メートル前まで来たところで一狼は牽制をかけた。今はそんなことをしている場合ではないと理解していながらも、こいつはないがしろにしていい人間ではないと脳の奥深くが警鐘をならしているがために。
「な、なぜあなた様が……!?」
驚愕は自分だけではなかった。隣ではアスピスが片膝をつき頭を垂れて完全に萎縮してしまっている。
奴も自分と同じく少年に負の感情を抱けないでいるようではあったが、それとは別に恐怖に似た……敬意と畏怖の表情を浮かべていた。
少年はアスピスを横目に見つつも、そっけない口ぶりでこちらに話しかける。
「ふん。君は昔から好きじゃないけど、偶然とはいえ奴等の封印術式を崩してくれたからね。特別に拝謁の栄誉を与えたげるよ」
そういうと完全にこちらを向く少年。
「ふふふ、ここまで来てまだ『身構えられる』なんて、さしもの僕もショックだなぁ」
クスクスと笑う。無邪気なその姿は正に絵画のような美しさと無垢な艶やかさしかなく、普段の自分であれば小一時間ばかしお茶に誘ってしまいそうなくらいの違法なまでの魅力に溢れていた。
だが、それゆえに不自然さが浮き彫りになってしまう。
「二度も聞かねぇぞ?テメーは誰だ!」
「貴様ぁ!!!エリス様に向かいなんたる暴言をっっっ!!!」
「君、もうしゃべんないで?自己紹介に横やりいれるとか、不躾に過ぎるよ?」
その一言でアスピスはついに押し黙った。しかし僅かに震えているのはこの少年の正体を知っているからであろう。
そう、一狼が思っていた最中。
「ってん?エリスって……」
ビキニが最初にあの剣の能力発動させた祝詞の……
「まだ時間は多少ある。自己紹介位はさせてほしいな」
そういうと胸に手を当て唄うように言葉を紡いだ。
「はじめまして。僕はエリス、アクエラ・エリス。聖泉クヴェレ湖の主にしてザルツバークの守護精霊さ」
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