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4巻
4-2
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「そうですねぇ。周辺各国も含めた戦争の歴史なんて学んでみましょう」
「……? しゅーへ、かっこく、せんそー?」
先生がにこやかに語った内容を聞いて、思わず青褪めた。
ど、どうしよう。思ったよりもずっと難しそうだ。既に何を言っているのかさっぱりわからない。
とりあえず、戦争についての授業らしいけれど……それって確か、学園でも中等部以上の子が学ぶものじゃなかっただろうか。
以前お父様の書斎でそういう本を手にしてしまった時、お父様にそう教わった気がする。
「あの、それ、いまお勉強していいやつ、ですか?」
先生ったら、もしかして僕の年齢を勘違いしているのかも。
やんわりその意図を含んだ問いを投げかけると、先生はきょとんと首を傾げた。
「はい? どうしてそんなことを聞くんです? 先生が、今日は戦争について授業すると言っているんです。先生の決めたことに生徒が異論を唱えるのですか?」
「へ、あぇっ……」
こちら側にヌッと身を乗り出してくる先生を見上げて、思わず怯えて涙ぐむ。
気のせいだろうか、なんだか先生の様子がおかしい。
昨日はあんなに優しかったのに、今日はなんだか強引というか、ちょっぴり怖い……
「ぁ、あの、ぼく……っ」
じわりと視界が滲む。
至近距離まで迫る先生の顔を見て、僕はやがてきゅっと身体を縮こませた。
「……な、なんでも、ないです。きちんと、お勉強します……」
蚊の鳴くような震えて小さな声をなんとか紡ぐと、先生は嬉しそうにニコリと笑った。
「よろしい。ふふ、やっぱりフェリアル君は、素直でとっても可愛いですね」
そっと伸びてきた手が僕の頭を優しく撫でる。
その瞬間、昨日感じたものと同じ不気味な心地悪さがゾワッと身を襲った。
けれど、もし嫌がるような反応を見せて先生を怒らせてしまったらと思うと怖くて……
僕は俯きがちに愛想笑いを零しながら、シモンの名前を心の中で呼び続けた。
奇妙な空気が漂う中、二日目の授業は淡々と進んだ。
先生が分かりやすく説明をして、僕がそれを聞いて、たまに先生から問題を出される。
大体の流れは昨日と似通ったものだけれど、一つだけ大きく異なるところがあった。
それは、質問に間違った答えを返してしまった時の先生の反応である。
「フェリアル君、また間違えましたね。ついさっき説明したばかりでしょう」
「あぇっ、あ、ごめんなさ……っ」
「謝罪は結構です。もう一度、先生の問題に正しい答えを返してください」
この通り、なんだか先生の対応が冷たくなっている気がするのだ。
でも、それはきっと僕の頭が悪いせいだろうし……先生は悪くない。実際、僕がちゃんと問題に正解すれば、先生は昨日みたいに優しく褒めてくれるし。
だから、耐えなきゃ。ちゃんと授業に集中して、先生からの問題は間違わないようにしなきゃ。
授業って、きっとそういうものだろうから。
なんて思いながら授業を聞いていると、僕はまた先生から投げかけられた問題を間違えてしまった。
「あ……ご、ごめんなさい。あの、もう一度、教科書、みていいですか……」
この問題の正解はなんだっけ。
教科書に説明が書かれているだろうし、もう一度確認すればきっと分かる。
そう考えて先生に尋ねると、先生は冷たい顔をして僕をジッと見下ろしていた。
「ぁ……あの、せんせ……?」
ぷるぷると震えて、不安と恐怖で身体から力が抜ける。
何度も間違えてしまう僕が悪いのは分かるけれど、それにしたって先生の怒り方はすごく怖い。
だから、震えが止まらない。今度はどんなお説教をされるのかと。
「ぁの、ごめ、ごめんなさ……」
俯きがちに小声で謝罪しようとした時だった。
ふと視線の先にある机に、先生が持っていた教科書を勢いよく叩きつけた。
──バンッ‼
「ひぅ!」
机が揺れて、僕も思わずぴょんっと飛び上がる。
すぐにカタカタと震えながら身体を縮めた。一体何が起こったのかとものすごく混乱する。
僕がごめんなさいをしようとしたら、先生が僕の机に教科書を叩きつけて、それで……?
「っ、あ……ぁ」
あぁ、どうしよう。頭がきちんと回らない。怖くて、上手く呼吸が出来ない。
恐怖で血の気が引く音が聞こえるようだ。
やがて先生の淡々とした低い声が静かに響いた。
「フェリアル君、がっかりです」
失望に染まった声を聞いて、ついにじわりと涙が滲んだ。
がっかり。それは相手を突き放す言葉だ。つまり僕は今、先生に突き放されたのだ。
前世でも、それは何度も聞かされた言葉だった。
『──本当がっかり。優馬はあんなに出来た子なのに』
もうほとんど忘れかけていたのに、今になって前世の母親に言われたセリフを思い出した。
前世では、みんなが僕にがっかりしていた。
優秀な優馬とは違って、僕にはなんの取り柄もなかったから。
がっかりという言葉は、苦手だ。今だって、その言葉を聞くだけであの頃のトラウマが蘇って、震えが止まらない。
「っ……」
何も言えずにただ震える僕を見て何を思ったのか、先生はふと短いため息を吐いた。
「はぁ、もういいです。フェリアル君は、真面目に授業を受けたくないんですね」
「え……そ、そんなっ、僕、まじめに……」
涙目になりながら首を振ろうとすると、先生がのそりと動いて僕に一歩近付いた。
「フェリアル君、立ってください」
「へ?」
唐突な指示にきょとんと固まると、すぐに苛立ったような声で繰り返された。
「立ちなさい、と言っているんです」
「っ……!」
高圧的な態度を前に、困惑を言葉にする余裕もなく、慌てて立ち上がる。
いよいよ涙が溢れそうになると同時に、視界に大きな影がかかった。
「……? せんせ──」
一体何をするつもりなのかと、眉尻を下げながら先生を呼ぼうとした時。
その呼び掛けは、パシッ! と乾いた音が鳴り響いたことで遮られた。
「…………へ?」
一瞬、視界がぐるりと回った。
自分の意思とは関係なく顔が右を向いて、直後に左頬がジンジンと痛み出す。
「はぇ、え……?」
呆然と左頬に手を当てる。鈍い痛みを訴える頬は、そこだけ酷く熱を伴っていた。
指先にその熱さが伝わって、しばらく硬直した後にだんだんと状況の理解が追いつき始める。
あぁ、叩かれたのか。
未だにぐるぐると混乱が脳を支配する中、なぜだかとても冷静にそれを理解した。
けれど、突然叩かれたことへの困惑や衝撃も確かにあって、堪えていた涙がついに溢れてしまう。
ぽろぽろと机に落ちる滴を呆然と見下ろしていると、やがて先生が困ったように語り出した。
「これは罰です。物分かりの悪い馬鹿な子には、きちんと真面目になってくれるように罰を与えなければいけません。先生も心苦しいですが、これはフェリアル君のためですからね」
つい数秒前に頬を叩いた手で、今度は頭を撫でられた。
まるで壊れ物でも扱うみたいな、さっきとはまるで違う触れ方にゾワッと鳥肌が立つ。
「っ……!」
非対称な言動を繰り返す先生を前に、じわじわと恐怖が湧き上がって震えることしか出来ない。
俯きがちに黙り込んでいると、先生は僕の髪をぐしゃりと掴みながら穏やかな声を紡いだ。
「さぁ、もう一度問題を解いてみましょうか」
左頬はまだ熱を訴えたまま。
ニッコリと能面のような笑顔を貼り付けた先生が怖くて、不気味で。
堪えきれなくなった衝動が爆発してしまった僕は、震える足を叱咤してその場から走り出した。
「フェリアル君⁉」
驚いたような声が背後から聞こえるけれど、それも無視して部屋を飛び出す。
授業を放って逃げ出してしまった罪悪感と自己嫌悪と、先生から離れられた安堵……複雑な感情が渦巻く胸中に気持ち悪くなりながら、僕はとにかく全力で廊下を駆けた。
深いことは何も考えず、ただがむしゃらに走った後でふと我に返った。
「あ……」
呆然と目を見開き、周囲をぼんやりと見渡す。
どうやら無意識に温室へ足を運んでしまったらしい。冷たい雪に植物が埋まってしまっている庭園と異なり、色鮮やかな花々が咲き乱れる温室の最奥で、僕は一人ぼーっと突っ立っていた。
「……どうしよう。授業、さぼっちゃった……」
じわ、と視界が滲む。
どうしてこんなことをしてしまったのだろう。せっかくお父様たちが家庭教師を雇ってくれたのに、なんの期待にも応えられないどころか、授業そのものを放り出してしまうなんて。
僕はどうして、こんなにもダメな子なんだろう。
溢れそうな涙を堪えながら一歩踏み出す。でも、邸へ戻る気にはなれない。
先生が怖くて、不安で……そして、両親やシモンに見せる顔がなくて。
行く宛もなく放心していると、ふと少し先にある扉に視線が向かった。
「……ここって」
あの扉の先にあるものを、僕は知っている。
数年前にディラン兄様と入ったきり一度も足を踏み入れていないそこが、僕はなんだかものすごく気になった。
あそこにはまだ、例の花が咲き続けているのだろうか。
「……」
迷いつつも、その扉に手をかける。すると、扉はすぐに開いた。
いつもは鍵が掛かっている扉だけど、僕が扉に触れた瞬間開くように、いつだったかディラン兄様が魔法をかけてくれたのだ。
無言で足を進め、最奥に辿り着いた瞬間。
「──……っ」
まるで大海原が広がるみたいに咲き誇る瑠璃色の花々を見て、涙腺は完全に決壊してしまった。
ディラン兄様の優しい笑みが頭に浮かんで、纏めきれない色んな感情が濁流みたいに湧き上がる。
「あぁ……ぼく……ごめっ、ごめんなさい……っ!」
自分でも、自分が今どんな気持ちを抱いているのか理解しきれない。
けれど、どうしようもない自己嫌悪が燻っていることだけは確かに自覚した。
「ごめんなさい……っ」
僕は、期待に応えたかった。
誰からの期待? なんの期待? 自分でもわからなかったけれど、今わかった。
両親の、兄様達の、シモンの、みんなの。
たくさん迷惑をかけてきたからこそ、そろそろ成長したかった。
両親にいい子だと思われたかった。兄様達に追い付きたかった。シモンに褒められたかった。
『生まれてきてくれてありがとう』
数年前のあの日、ディラン兄様からもらった言葉を思い返す。
僕なんかにあれほどもったいない言葉をくれるような兄様に、家族の皆に応えたくて。
でも、ダメだった。結局、僕は逃げ出してしまった。
授業は遊びと違うのだ。ほんのちょっとくらい受け入れられないことがあったって、それも成長のために必要なことだろうに。
僕は全てから逃げ出して、初めて『幸福』を感じられたこの場所まで逃げ込んでしまった。
「……にいさま」
力なく地面にしゃがみこむ。膝に顔を埋めてぽつりと呟いた。
兄様達に会いたい。きっと今も授業に向き合っているだろう兄様達に、僕も遠くからでも追いつきたかったけれど。
今はただ苦しい。行き場のない感情を抱えて蹲っていると、ふいに自分の影がゆらりと大きく揺らめいた。
「……?」
一歩も動いていないのに、まるで風に靡くように揺れる影をポカンと見つめる。
そしてすぐ、影がゆらりと立ち上がった。
「わっ!」
驚いて後ろに尻餅をつくと同時に、人型に膨張した影が色付き始める。
影から現れた人物を見上げた瞬間、暗く淀んでいた気持ちがぱぁっと明るくなった。
「シモン!」
なぜか焦燥を滲ませて現れたシモンも、僕の姿を視認するなり酷く安堵したような表情を見せた。
「フェリアル様……! よかった、ご無事だったんですね!」
シモンにしては珍しい、冷静さを欠いた声を聞いて首を傾げる。
どうしてこんなに震えているのだろう。不思議に思ってぱちくり瞬くと、シモンは呑気に首を傾げる僕を見て深くため息を吐いた。
「窓から庭を走るフェリアル様が見えたものだから、慌てて影に飛び込んだんですよ……」
そう言うと、シモンは脱力したようにふらりと膝をつく。
ぎゅうっと抱き締められて、僕も咄嗟にシモンの背に腕を回した。
どうやら僕はシモンのことをものすごく心配させてしまったらしい。そのことを申し訳なく思いながらも、内心あわあわと冷や汗をかく。
「シ、シモン、ぼく……その」
どうしよう。この状況をどう説明すればいいんだろう。
ただでさえ仮の授業で、それもまだ二日目。それなのに授業をサボってしまったなんて知られたら、シモンに失望されてしまうかも……
口ごもっていると、不思議に思ったのかシモンが僕の肩に埋めていた顔を上げた。
「フェリアル様? 一体何が……って」
シモンの視線が、ふと僕の左頬に集中する。
「は?」
突如として緑色の瞳が黒く染まり、シモンの纏う空気が絶対零度に凍てついた。
「なんですか……ここ、すごく腫れてますけど」
シモンがそっと手を伸ばし、それを僕の左頬に添える。
そこは……そうだ、ついさっき先生に叩かれたところだ。
「あ、これ、バツなの。僕が、いっぱいまちがえちゃったから、先生おこらせちゃって」
お馬鹿なせいでお仕置きされるのは、前世でもよくあった。
何度も問題を間違えてしまったなんて、僕がお馬鹿なことをシモンに知られてしまうのはとても恥ずかしい。
自分を情けなく思いながらそう答えると、なぜかシモンの黒いオーラはますます激情を宿して濃くなった。
「……あの、教師が?」
「うん?」
「あの男が、フェリアル様の頬を叩いたんですか?」
「え……う、うん。でもね、これはバツで」
「フェリアル様」
圧のある声に思わず硬直する。
シモンは底知れぬ激憤を滲ませた瞳のまま、低く這うような声を出した。
「申し訳ありませんが、授業は今日で終わりです」
ゆらりと立ち上がったシモンの表情は、逆光による影でよく見えなかった。
シモンは僕を抱っこすると、影から取り出した氷嚢を僕の頬に当てながら無言で走った。
向かった先はお父様の執務室だ。
僕は困惑しつつもシモンに話しかける勇気もなく、ただ黙って様子を窺うことしか出来なかった。
シモンが静かな声で、入室の許可を問う。
即座にお父様は通してくれた。そして、シモンの腕の中にいる僕を見つけて言う。
「フェリアル? どうした、今は授業の時間じゃなかったか?」
お父様が不思議そうに首を傾げる。
そのセリフにどう答えたものかと焦ったのも束の間、お父様は僕の頬を見るなりサッと顔を強張らせた。
「その頬……怪我でもしたのか?」
慌ただしく立ち上がったお父様が、執務机を回り込んで駆け寄ってくる。
氷嚢をそっと離して僕の左頬を確認した途端、お父様は表情をみるみる怒りの色に染めた。
「これはッ! 一体どこの輩がこんな真似をした⁉」
見たこともないほど激しい憤りを見せるお父様を呆然と見上げる。
固まる僕をあやすように撫でながら、シモンがその問いに淡々と答えた。
「家庭教師のアドルフ・ライラです。授業中にフェリアル様の頬を叩いたようで」
「っあ、あの、でもね、これはバツで……」
なにがなんだか分からないけれど、とにかく二人がとっても怒っていることは分かった。
そしてその矛先は、どうやらアドルフ先生に向かっているらしい。そう察した僕は、慌てて先生の行動について説明しようとしたけれど、その弁明はお父様によって遮られた。
「どんな理由があろうと大人が子供に暴力を振るうのは犯罪だ。ましてやフェリアルは公爵家の令息なのだ、これがどれほどの重罪か……」
お父様が拳を握り締めてわなわなと震える。
そしてふいに力を抜くと、シモンの腕から僕の身体を抜き取った。今度はお父様に抱っこされて、僕はお父様が纏う淡い香りを目一杯吸い込んだ。
やっぱり、お父様の抱っこはすごく落ち着く。
「騎士団を呼べ。不敬な大罪人を今すぐ邸から追い出すのだ」
普段の温厚な雰囲気はどこにもない。
重々しい空気を纏いながら命令したお父様を見上げ、僕はぎょっと目を見開いた。
「お、おとうさま? おこ、おこってるの……?」
ぷるぷると震えながら尋ねると、お父様は僕をぎゅうっと抱え込んだ。
「当然だろう。私の大事な息子に傷を付けられたのだぞ」
その言葉を聞いてハッと息を呑んだ。
お父様の大きな手から底知れぬ怒りが伝わってくる。けれど、僕の背や頭を撫でるその手はとても優しかった。
なぜだか目頭が熱くなって、湧き上がってくる衝動を隠すようにお父様の肩にぐっと顔を埋める。
「……ごめんなさい、お父さま」
何に対する謝罪なのか、自分でもよくわからない。
なんだかとても苦しくなったのだ。僕は『僕』という存在に価値を感じていないから、僕のことでこんなに憤るお父様に対して、なぜだかすごく胸が締め付けられた。
僕が震える声で言うと、僕を抱き締めるお父様の腕にぎゅっと力が籠った気がした。
***
それからは、あっという間に事が過ぎ去った。
アドルフ先生は公爵令息に対する暴行という重罪を背負うことになり、お父様が直々に呼び出した騎士団に連行されていった。
帝国法では、貴族への暴行は極刑もあり得るほどの重罪と位置付けられているそうだ。先生は僕を躾のためにちょっぴり叩いただけだけれど、重い罰からはまず逃れることは出来ないだろう、と後から聞いた。
僕がお馬鹿なばっかりに起こった件だっただけに、なんだか罪悪感が否めない……
けれど、落ち込んでいるのはどうやら僕だけのようだった。
シモンもお父様もお母様も、それだけじゃない。エーデルス騎士団のみんなも使用人たちも、全員がアドルフ先生を憎み、心の底から憤っていた。
前世では躾と称して叩かれることなんてよくあったから知らなかったけれど、どんな理由があっても子供を叩くのはいけないことみたいだ。
痛々しく腫れた頬が治るまで、邸の皆がピリピリと怒りっぱなしだったけれど……正直、僕を全力で心配してくれる皆の様子が嬉しかった、なんてこの空気の中では絶対に言えない。
そんなこんなで、公爵家を騒がせた事件の余韻は、頬が癒えていくと同時に落ち着いていった。
そして僕は、しばらく家庭教師を雇うことを禁じられた。
今回のような前例が出来てしまった以上、他人に僕の教育を任せることを両親が忌避するようになってしまったのだ。
どれだけ厳正な採用基準を定めたところで誰も信用出来ないのだと泣きつかれてしまえば、僕に言えることなんて何もなかった。
今回ばかりはものすごく心配をかけてしまった自覚があるし、僕も家庭教師は諦めることにした。
そしてしばらくの間は、シモンが家庭教師の代わりを務めてくれることになった。
「ごめんね、シモン……」
例の事件から数日後。
あの授業で使っていた小難しい教科書じゃない、幼い子供向けのカラフルな教科書を抱えながら、僕はしょんぼりと眉尻を下げた。
机を挟んで向こう側にはシモンが立っている。
僕のセリフを聞くと、シモンはぱちくりと瞬いた。
「どうして謝るんです? フェリアル様は何も悪くないのに」
不思議そうに首を傾げるシモンを見上げ、むんと唇を尖らせる。
「だって、シモンいつも忙しいのに。なのに、僕のお勉強まで……いっぱい忙しくなっちゃう」
僕のただ一人の専属侍従として、シモンはただでさえ毎日大忙しだ。
通常は役割ごとに分けられるはずの僕のお世話を、シモンはたった一人でこなしてくれている。
そんな日々のお世話だけでも重労働だろうに、僕の勉強の面倒まで見るはめになるなんて。
シモンからしたら、こんなとばっちりはたまったものじゃないはずだ。
そう言うと、シモンは仕方なさそうに微笑んだ。
「急に何を言うかと思えば……まったく、フェリアル様は分かっていませんね」
「……?」
分かっていないって、どういうことだろう。
はて? と目を丸くすると、シモンがふふんと得意気に笑った。
「むしろ最高のご褒美ですよ! フェリアル様に勉強を教える役割を担えるなんて!」
心底嬉しそうに語るシモンを見て、今度は僕がぱちくりと瞬いた。
僕の先生をすることに、そこまで嬉しがる要素があるだろうか?
シモンに関しては今よりずっと忙しくなるだけで、メリットなんて一つもないように思うけれど。
困惑していると、シモンは何やら恍惚とした表情でブツブツ呟き始めた。
「俺がフェリアル様にこの世の全てを手取り足取り……ぐへへ」
「シモン、はなぢ、はなぢ」
によによと緩みきった笑みを浮かべているシモンの鼻から、ふいに鼻血がたらーっと伝った。
いつものやつか、と思いながら、汚れてもいいハンカチを慣れた手つきでそそくさと渡す。
シモンはハッとして、それを受け取ってくれた。
「あぁすみません、抑えを利かせずに全力で妄想してしまったもので、つい」
シモンの鼻血って、血流が騒いじゃうくらい妄想するせいで溢れるものだったのか……
鼻血を噴き出していたとは思えないほど、血を拭うシモンの動作はとってもスマートだ。
そんな今日も今日とて残念なイケメンさんのシモンを見上げ、僕は困り顔で微笑んだ。
「あんまり鼻血ぷしゃーすると、貧血なっちゃうから、もーそー? ほどほどにね」
そう言うと、シモンはニコリと笑って頷いた。
「えぇ、なんとか自重します。ですがそれならフェリアル様も、俺に鼻血ぷしゃーさせるような尊い言動は控えていただけると幸いです」
「とーとい?」
上目遣いでぱちくり瞬くと、シモンは「そういうとこです」と安らかな顔で呟いて再び鼻血を噴き出した。
それに対して僕が二枚目のハンカチを手渡し、シモンが血を拭う二度目の作業をサラッとこなす。
シモンは、二枚の血塗れハンカチを大事そうにポケットへ仕舞いつつ、コホンッと咳払いをした。
「とにかく! これからは俺がフェリアル様の先生を務めますし、そのことに一切不満を抱いていないどころか歓喜しているので、フェリアル様が不安になる必要はありませんからね!」
わかりましたか⁉ と前のめりに問われ、その勢いに押されてこくこくと頷く。
正直、まだ申し訳なさはあるけれど……シモンがここまで言うのだから、先生の話もありがたく受け入れておこう。
「シモン、ありがと。僕もね、ほんとはね、シモンが先生になってくれて、うれしいの」
頬を染め、もじもじと両手の指先を絡めて小さく語る。
するとシモンは、またもや「ぐはッ」と呻いて鼻血を噴き出した。なんだか、今日はいつにも増して鼻血ぷしゃーが激しい日だなぁ。
コホンッと咳払いをして、シモンが姿勢を正す。
緑色の目が僕を捉えた。
「……俺も、フェリアル様と一緒に居られる時間が増えてとっても嬉しいです」
そう言うと、シモンはふと膝に手を当てて屈みこんだ。
僕と同じ目線まで腰を折ると、ふわりと笑って僕の頭を優しく撫でてくれる。
「いいですかフェリアル様。知らないことは悪いことじゃないし、むしろ知らないことを知る楽しさを学ぶのが授業というものです。だからこれからは、色んなことを楽しく学びましょうね」
穏やかな声で紡がれるその言葉を聞いて、胸の奥までじわりとくすぐったい温もりに包まれた。
「……うん、ありがと。ありがとう、シモン」
『やさしい歴史』と書かれた教科書をぎゅっと抱え、そこに顔を埋めるようにして俯く。
なんだか目頭が熱くなった気がして、慌てて目を強く瞑ってそれを堪えた。
知らないことは、悪いことじゃない。
知らないことを知る楽しさを学ぶのが、授業というもの。
そんなの初めて聞いた。前世では、僕が「知らない」と言うと、みんなが僕を叱ったのに。
何かを学ぶって、もっと怖くて不安なものだと思っていた。実際、あの頃はそうだったから。
でも、ここでは違うみたいだ。
「……あのね、僕ね、おんなじところ、まちがえちゃうの」
ぽつり、ぽつり。
「……? しゅーへ、かっこく、せんそー?」
先生がにこやかに語った内容を聞いて、思わず青褪めた。
ど、どうしよう。思ったよりもずっと難しそうだ。既に何を言っているのかさっぱりわからない。
とりあえず、戦争についての授業らしいけれど……それって確か、学園でも中等部以上の子が学ぶものじゃなかっただろうか。
以前お父様の書斎でそういう本を手にしてしまった時、お父様にそう教わった気がする。
「あの、それ、いまお勉強していいやつ、ですか?」
先生ったら、もしかして僕の年齢を勘違いしているのかも。
やんわりその意図を含んだ問いを投げかけると、先生はきょとんと首を傾げた。
「はい? どうしてそんなことを聞くんです? 先生が、今日は戦争について授業すると言っているんです。先生の決めたことに生徒が異論を唱えるのですか?」
「へ、あぇっ……」
こちら側にヌッと身を乗り出してくる先生を見上げて、思わず怯えて涙ぐむ。
気のせいだろうか、なんだか先生の様子がおかしい。
昨日はあんなに優しかったのに、今日はなんだか強引というか、ちょっぴり怖い……
「ぁ、あの、ぼく……っ」
じわりと視界が滲む。
至近距離まで迫る先生の顔を見て、僕はやがてきゅっと身体を縮こませた。
「……な、なんでも、ないです。きちんと、お勉強します……」
蚊の鳴くような震えて小さな声をなんとか紡ぐと、先生は嬉しそうにニコリと笑った。
「よろしい。ふふ、やっぱりフェリアル君は、素直でとっても可愛いですね」
そっと伸びてきた手が僕の頭を優しく撫でる。
その瞬間、昨日感じたものと同じ不気味な心地悪さがゾワッと身を襲った。
けれど、もし嫌がるような反応を見せて先生を怒らせてしまったらと思うと怖くて……
僕は俯きがちに愛想笑いを零しながら、シモンの名前を心の中で呼び続けた。
奇妙な空気が漂う中、二日目の授業は淡々と進んだ。
先生が分かりやすく説明をして、僕がそれを聞いて、たまに先生から問題を出される。
大体の流れは昨日と似通ったものだけれど、一つだけ大きく異なるところがあった。
それは、質問に間違った答えを返してしまった時の先生の反応である。
「フェリアル君、また間違えましたね。ついさっき説明したばかりでしょう」
「あぇっ、あ、ごめんなさ……っ」
「謝罪は結構です。もう一度、先生の問題に正しい答えを返してください」
この通り、なんだか先生の対応が冷たくなっている気がするのだ。
でも、それはきっと僕の頭が悪いせいだろうし……先生は悪くない。実際、僕がちゃんと問題に正解すれば、先生は昨日みたいに優しく褒めてくれるし。
だから、耐えなきゃ。ちゃんと授業に集中して、先生からの問題は間違わないようにしなきゃ。
授業って、きっとそういうものだろうから。
なんて思いながら授業を聞いていると、僕はまた先生から投げかけられた問題を間違えてしまった。
「あ……ご、ごめんなさい。あの、もう一度、教科書、みていいですか……」
この問題の正解はなんだっけ。
教科書に説明が書かれているだろうし、もう一度確認すればきっと分かる。
そう考えて先生に尋ねると、先生は冷たい顔をして僕をジッと見下ろしていた。
「ぁ……あの、せんせ……?」
ぷるぷると震えて、不安と恐怖で身体から力が抜ける。
何度も間違えてしまう僕が悪いのは分かるけれど、それにしたって先生の怒り方はすごく怖い。
だから、震えが止まらない。今度はどんなお説教をされるのかと。
「ぁの、ごめ、ごめんなさ……」
俯きがちに小声で謝罪しようとした時だった。
ふと視線の先にある机に、先生が持っていた教科書を勢いよく叩きつけた。
──バンッ‼
「ひぅ!」
机が揺れて、僕も思わずぴょんっと飛び上がる。
すぐにカタカタと震えながら身体を縮めた。一体何が起こったのかとものすごく混乱する。
僕がごめんなさいをしようとしたら、先生が僕の机に教科書を叩きつけて、それで……?
「っ、あ……ぁ」
あぁ、どうしよう。頭がきちんと回らない。怖くて、上手く呼吸が出来ない。
恐怖で血の気が引く音が聞こえるようだ。
やがて先生の淡々とした低い声が静かに響いた。
「フェリアル君、がっかりです」
失望に染まった声を聞いて、ついにじわりと涙が滲んだ。
がっかり。それは相手を突き放す言葉だ。つまり僕は今、先生に突き放されたのだ。
前世でも、それは何度も聞かされた言葉だった。
『──本当がっかり。優馬はあんなに出来た子なのに』
もうほとんど忘れかけていたのに、今になって前世の母親に言われたセリフを思い出した。
前世では、みんなが僕にがっかりしていた。
優秀な優馬とは違って、僕にはなんの取り柄もなかったから。
がっかりという言葉は、苦手だ。今だって、その言葉を聞くだけであの頃のトラウマが蘇って、震えが止まらない。
「っ……」
何も言えずにただ震える僕を見て何を思ったのか、先生はふと短いため息を吐いた。
「はぁ、もういいです。フェリアル君は、真面目に授業を受けたくないんですね」
「え……そ、そんなっ、僕、まじめに……」
涙目になりながら首を振ろうとすると、先生がのそりと動いて僕に一歩近付いた。
「フェリアル君、立ってください」
「へ?」
唐突な指示にきょとんと固まると、すぐに苛立ったような声で繰り返された。
「立ちなさい、と言っているんです」
「っ……!」
高圧的な態度を前に、困惑を言葉にする余裕もなく、慌てて立ち上がる。
いよいよ涙が溢れそうになると同時に、視界に大きな影がかかった。
「……? せんせ──」
一体何をするつもりなのかと、眉尻を下げながら先生を呼ぼうとした時。
その呼び掛けは、パシッ! と乾いた音が鳴り響いたことで遮られた。
「…………へ?」
一瞬、視界がぐるりと回った。
自分の意思とは関係なく顔が右を向いて、直後に左頬がジンジンと痛み出す。
「はぇ、え……?」
呆然と左頬に手を当てる。鈍い痛みを訴える頬は、そこだけ酷く熱を伴っていた。
指先にその熱さが伝わって、しばらく硬直した後にだんだんと状況の理解が追いつき始める。
あぁ、叩かれたのか。
未だにぐるぐると混乱が脳を支配する中、なぜだかとても冷静にそれを理解した。
けれど、突然叩かれたことへの困惑や衝撃も確かにあって、堪えていた涙がついに溢れてしまう。
ぽろぽろと机に落ちる滴を呆然と見下ろしていると、やがて先生が困ったように語り出した。
「これは罰です。物分かりの悪い馬鹿な子には、きちんと真面目になってくれるように罰を与えなければいけません。先生も心苦しいですが、これはフェリアル君のためですからね」
つい数秒前に頬を叩いた手で、今度は頭を撫でられた。
まるで壊れ物でも扱うみたいな、さっきとはまるで違う触れ方にゾワッと鳥肌が立つ。
「っ……!」
非対称な言動を繰り返す先生を前に、じわじわと恐怖が湧き上がって震えることしか出来ない。
俯きがちに黙り込んでいると、先生は僕の髪をぐしゃりと掴みながら穏やかな声を紡いだ。
「さぁ、もう一度問題を解いてみましょうか」
左頬はまだ熱を訴えたまま。
ニッコリと能面のような笑顔を貼り付けた先生が怖くて、不気味で。
堪えきれなくなった衝動が爆発してしまった僕は、震える足を叱咤してその場から走り出した。
「フェリアル君⁉」
驚いたような声が背後から聞こえるけれど、それも無視して部屋を飛び出す。
授業を放って逃げ出してしまった罪悪感と自己嫌悪と、先生から離れられた安堵……複雑な感情が渦巻く胸中に気持ち悪くなりながら、僕はとにかく全力で廊下を駆けた。
深いことは何も考えず、ただがむしゃらに走った後でふと我に返った。
「あ……」
呆然と目を見開き、周囲をぼんやりと見渡す。
どうやら無意識に温室へ足を運んでしまったらしい。冷たい雪に植物が埋まってしまっている庭園と異なり、色鮮やかな花々が咲き乱れる温室の最奥で、僕は一人ぼーっと突っ立っていた。
「……どうしよう。授業、さぼっちゃった……」
じわ、と視界が滲む。
どうしてこんなことをしてしまったのだろう。せっかくお父様たちが家庭教師を雇ってくれたのに、なんの期待にも応えられないどころか、授業そのものを放り出してしまうなんて。
僕はどうして、こんなにもダメな子なんだろう。
溢れそうな涙を堪えながら一歩踏み出す。でも、邸へ戻る気にはなれない。
先生が怖くて、不安で……そして、両親やシモンに見せる顔がなくて。
行く宛もなく放心していると、ふと少し先にある扉に視線が向かった。
「……ここって」
あの扉の先にあるものを、僕は知っている。
数年前にディラン兄様と入ったきり一度も足を踏み入れていないそこが、僕はなんだかものすごく気になった。
あそこにはまだ、例の花が咲き続けているのだろうか。
「……」
迷いつつも、その扉に手をかける。すると、扉はすぐに開いた。
いつもは鍵が掛かっている扉だけど、僕が扉に触れた瞬間開くように、いつだったかディラン兄様が魔法をかけてくれたのだ。
無言で足を進め、最奥に辿り着いた瞬間。
「──……っ」
まるで大海原が広がるみたいに咲き誇る瑠璃色の花々を見て、涙腺は完全に決壊してしまった。
ディラン兄様の優しい笑みが頭に浮かんで、纏めきれない色んな感情が濁流みたいに湧き上がる。
「あぁ……ぼく……ごめっ、ごめんなさい……っ!」
自分でも、自分が今どんな気持ちを抱いているのか理解しきれない。
けれど、どうしようもない自己嫌悪が燻っていることだけは確かに自覚した。
「ごめんなさい……っ」
僕は、期待に応えたかった。
誰からの期待? なんの期待? 自分でもわからなかったけれど、今わかった。
両親の、兄様達の、シモンの、みんなの。
たくさん迷惑をかけてきたからこそ、そろそろ成長したかった。
両親にいい子だと思われたかった。兄様達に追い付きたかった。シモンに褒められたかった。
『生まれてきてくれてありがとう』
数年前のあの日、ディラン兄様からもらった言葉を思い返す。
僕なんかにあれほどもったいない言葉をくれるような兄様に、家族の皆に応えたくて。
でも、ダメだった。結局、僕は逃げ出してしまった。
授業は遊びと違うのだ。ほんのちょっとくらい受け入れられないことがあったって、それも成長のために必要なことだろうに。
僕は全てから逃げ出して、初めて『幸福』を感じられたこの場所まで逃げ込んでしまった。
「……にいさま」
力なく地面にしゃがみこむ。膝に顔を埋めてぽつりと呟いた。
兄様達に会いたい。きっと今も授業に向き合っているだろう兄様達に、僕も遠くからでも追いつきたかったけれど。
今はただ苦しい。行き場のない感情を抱えて蹲っていると、ふいに自分の影がゆらりと大きく揺らめいた。
「……?」
一歩も動いていないのに、まるで風に靡くように揺れる影をポカンと見つめる。
そしてすぐ、影がゆらりと立ち上がった。
「わっ!」
驚いて後ろに尻餅をつくと同時に、人型に膨張した影が色付き始める。
影から現れた人物を見上げた瞬間、暗く淀んでいた気持ちがぱぁっと明るくなった。
「シモン!」
なぜか焦燥を滲ませて現れたシモンも、僕の姿を視認するなり酷く安堵したような表情を見せた。
「フェリアル様……! よかった、ご無事だったんですね!」
シモンにしては珍しい、冷静さを欠いた声を聞いて首を傾げる。
どうしてこんなに震えているのだろう。不思議に思ってぱちくり瞬くと、シモンは呑気に首を傾げる僕を見て深くため息を吐いた。
「窓から庭を走るフェリアル様が見えたものだから、慌てて影に飛び込んだんですよ……」
そう言うと、シモンは脱力したようにふらりと膝をつく。
ぎゅうっと抱き締められて、僕も咄嗟にシモンの背に腕を回した。
どうやら僕はシモンのことをものすごく心配させてしまったらしい。そのことを申し訳なく思いながらも、内心あわあわと冷や汗をかく。
「シ、シモン、ぼく……その」
どうしよう。この状況をどう説明すればいいんだろう。
ただでさえ仮の授業で、それもまだ二日目。それなのに授業をサボってしまったなんて知られたら、シモンに失望されてしまうかも……
口ごもっていると、不思議に思ったのかシモンが僕の肩に埋めていた顔を上げた。
「フェリアル様? 一体何が……って」
シモンの視線が、ふと僕の左頬に集中する。
「は?」
突如として緑色の瞳が黒く染まり、シモンの纏う空気が絶対零度に凍てついた。
「なんですか……ここ、すごく腫れてますけど」
シモンがそっと手を伸ばし、それを僕の左頬に添える。
そこは……そうだ、ついさっき先生に叩かれたところだ。
「あ、これ、バツなの。僕が、いっぱいまちがえちゃったから、先生おこらせちゃって」
お馬鹿なせいでお仕置きされるのは、前世でもよくあった。
何度も問題を間違えてしまったなんて、僕がお馬鹿なことをシモンに知られてしまうのはとても恥ずかしい。
自分を情けなく思いながらそう答えると、なぜかシモンの黒いオーラはますます激情を宿して濃くなった。
「……あの、教師が?」
「うん?」
「あの男が、フェリアル様の頬を叩いたんですか?」
「え……う、うん。でもね、これはバツで」
「フェリアル様」
圧のある声に思わず硬直する。
シモンは底知れぬ激憤を滲ませた瞳のまま、低く這うような声を出した。
「申し訳ありませんが、授業は今日で終わりです」
ゆらりと立ち上がったシモンの表情は、逆光による影でよく見えなかった。
シモンは僕を抱っこすると、影から取り出した氷嚢を僕の頬に当てながら無言で走った。
向かった先はお父様の執務室だ。
僕は困惑しつつもシモンに話しかける勇気もなく、ただ黙って様子を窺うことしか出来なかった。
シモンが静かな声で、入室の許可を問う。
即座にお父様は通してくれた。そして、シモンの腕の中にいる僕を見つけて言う。
「フェリアル? どうした、今は授業の時間じゃなかったか?」
お父様が不思議そうに首を傾げる。
そのセリフにどう答えたものかと焦ったのも束の間、お父様は僕の頬を見るなりサッと顔を強張らせた。
「その頬……怪我でもしたのか?」
慌ただしく立ち上がったお父様が、執務机を回り込んで駆け寄ってくる。
氷嚢をそっと離して僕の左頬を確認した途端、お父様は表情をみるみる怒りの色に染めた。
「これはッ! 一体どこの輩がこんな真似をした⁉」
見たこともないほど激しい憤りを見せるお父様を呆然と見上げる。
固まる僕をあやすように撫でながら、シモンがその問いに淡々と答えた。
「家庭教師のアドルフ・ライラです。授業中にフェリアル様の頬を叩いたようで」
「っあ、あの、でもね、これはバツで……」
なにがなんだか分からないけれど、とにかく二人がとっても怒っていることは分かった。
そしてその矛先は、どうやらアドルフ先生に向かっているらしい。そう察した僕は、慌てて先生の行動について説明しようとしたけれど、その弁明はお父様によって遮られた。
「どんな理由があろうと大人が子供に暴力を振るうのは犯罪だ。ましてやフェリアルは公爵家の令息なのだ、これがどれほどの重罪か……」
お父様が拳を握り締めてわなわなと震える。
そしてふいに力を抜くと、シモンの腕から僕の身体を抜き取った。今度はお父様に抱っこされて、僕はお父様が纏う淡い香りを目一杯吸い込んだ。
やっぱり、お父様の抱っこはすごく落ち着く。
「騎士団を呼べ。不敬な大罪人を今すぐ邸から追い出すのだ」
普段の温厚な雰囲気はどこにもない。
重々しい空気を纏いながら命令したお父様を見上げ、僕はぎょっと目を見開いた。
「お、おとうさま? おこ、おこってるの……?」
ぷるぷると震えながら尋ねると、お父様は僕をぎゅうっと抱え込んだ。
「当然だろう。私の大事な息子に傷を付けられたのだぞ」
その言葉を聞いてハッと息を呑んだ。
お父様の大きな手から底知れぬ怒りが伝わってくる。けれど、僕の背や頭を撫でるその手はとても優しかった。
なぜだか目頭が熱くなって、湧き上がってくる衝動を隠すようにお父様の肩にぐっと顔を埋める。
「……ごめんなさい、お父さま」
何に対する謝罪なのか、自分でもよくわからない。
なんだかとても苦しくなったのだ。僕は『僕』という存在に価値を感じていないから、僕のことでこんなに憤るお父様に対して、なぜだかすごく胸が締め付けられた。
僕が震える声で言うと、僕を抱き締めるお父様の腕にぎゅっと力が籠った気がした。
***
それからは、あっという間に事が過ぎ去った。
アドルフ先生は公爵令息に対する暴行という重罪を背負うことになり、お父様が直々に呼び出した騎士団に連行されていった。
帝国法では、貴族への暴行は極刑もあり得るほどの重罪と位置付けられているそうだ。先生は僕を躾のためにちょっぴり叩いただけだけれど、重い罰からはまず逃れることは出来ないだろう、と後から聞いた。
僕がお馬鹿なばっかりに起こった件だっただけに、なんだか罪悪感が否めない……
けれど、落ち込んでいるのはどうやら僕だけのようだった。
シモンもお父様もお母様も、それだけじゃない。エーデルス騎士団のみんなも使用人たちも、全員がアドルフ先生を憎み、心の底から憤っていた。
前世では躾と称して叩かれることなんてよくあったから知らなかったけれど、どんな理由があっても子供を叩くのはいけないことみたいだ。
痛々しく腫れた頬が治るまで、邸の皆がピリピリと怒りっぱなしだったけれど……正直、僕を全力で心配してくれる皆の様子が嬉しかった、なんてこの空気の中では絶対に言えない。
そんなこんなで、公爵家を騒がせた事件の余韻は、頬が癒えていくと同時に落ち着いていった。
そして僕は、しばらく家庭教師を雇うことを禁じられた。
今回のような前例が出来てしまった以上、他人に僕の教育を任せることを両親が忌避するようになってしまったのだ。
どれだけ厳正な採用基準を定めたところで誰も信用出来ないのだと泣きつかれてしまえば、僕に言えることなんて何もなかった。
今回ばかりはものすごく心配をかけてしまった自覚があるし、僕も家庭教師は諦めることにした。
そしてしばらくの間は、シモンが家庭教師の代わりを務めてくれることになった。
「ごめんね、シモン……」
例の事件から数日後。
あの授業で使っていた小難しい教科書じゃない、幼い子供向けのカラフルな教科書を抱えながら、僕はしょんぼりと眉尻を下げた。
机を挟んで向こう側にはシモンが立っている。
僕のセリフを聞くと、シモンはぱちくりと瞬いた。
「どうして謝るんです? フェリアル様は何も悪くないのに」
不思議そうに首を傾げるシモンを見上げ、むんと唇を尖らせる。
「だって、シモンいつも忙しいのに。なのに、僕のお勉強まで……いっぱい忙しくなっちゃう」
僕のただ一人の専属侍従として、シモンはただでさえ毎日大忙しだ。
通常は役割ごとに分けられるはずの僕のお世話を、シモンはたった一人でこなしてくれている。
そんな日々のお世話だけでも重労働だろうに、僕の勉強の面倒まで見るはめになるなんて。
シモンからしたら、こんなとばっちりはたまったものじゃないはずだ。
そう言うと、シモンは仕方なさそうに微笑んだ。
「急に何を言うかと思えば……まったく、フェリアル様は分かっていませんね」
「……?」
分かっていないって、どういうことだろう。
はて? と目を丸くすると、シモンがふふんと得意気に笑った。
「むしろ最高のご褒美ですよ! フェリアル様に勉強を教える役割を担えるなんて!」
心底嬉しそうに語るシモンを見て、今度は僕がぱちくりと瞬いた。
僕の先生をすることに、そこまで嬉しがる要素があるだろうか?
シモンに関しては今よりずっと忙しくなるだけで、メリットなんて一つもないように思うけれど。
困惑していると、シモンは何やら恍惚とした表情でブツブツ呟き始めた。
「俺がフェリアル様にこの世の全てを手取り足取り……ぐへへ」
「シモン、はなぢ、はなぢ」
によによと緩みきった笑みを浮かべているシモンの鼻から、ふいに鼻血がたらーっと伝った。
いつものやつか、と思いながら、汚れてもいいハンカチを慣れた手つきでそそくさと渡す。
シモンはハッとして、それを受け取ってくれた。
「あぁすみません、抑えを利かせずに全力で妄想してしまったもので、つい」
シモンの鼻血って、血流が騒いじゃうくらい妄想するせいで溢れるものだったのか……
鼻血を噴き出していたとは思えないほど、血を拭うシモンの動作はとってもスマートだ。
そんな今日も今日とて残念なイケメンさんのシモンを見上げ、僕は困り顔で微笑んだ。
「あんまり鼻血ぷしゃーすると、貧血なっちゃうから、もーそー? ほどほどにね」
そう言うと、シモンはニコリと笑って頷いた。
「えぇ、なんとか自重します。ですがそれならフェリアル様も、俺に鼻血ぷしゃーさせるような尊い言動は控えていただけると幸いです」
「とーとい?」
上目遣いでぱちくり瞬くと、シモンは「そういうとこです」と安らかな顔で呟いて再び鼻血を噴き出した。
それに対して僕が二枚目のハンカチを手渡し、シモンが血を拭う二度目の作業をサラッとこなす。
シモンは、二枚の血塗れハンカチを大事そうにポケットへ仕舞いつつ、コホンッと咳払いをした。
「とにかく! これからは俺がフェリアル様の先生を務めますし、そのことに一切不満を抱いていないどころか歓喜しているので、フェリアル様が不安になる必要はありませんからね!」
わかりましたか⁉ と前のめりに問われ、その勢いに押されてこくこくと頷く。
正直、まだ申し訳なさはあるけれど……シモンがここまで言うのだから、先生の話もありがたく受け入れておこう。
「シモン、ありがと。僕もね、ほんとはね、シモンが先生になってくれて、うれしいの」
頬を染め、もじもじと両手の指先を絡めて小さく語る。
するとシモンは、またもや「ぐはッ」と呻いて鼻血を噴き出した。なんだか、今日はいつにも増して鼻血ぷしゃーが激しい日だなぁ。
コホンッと咳払いをして、シモンが姿勢を正す。
緑色の目が僕を捉えた。
「……俺も、フェリアル様と一緒に居られる時間が増えてとっても嬉しいです」
そう言うと、シモンはふと膝に手を当てて屈みこんだ。
僕と同じ目線まで腰を折ると、ふわりと笑って僕の頭を優しく撫でてくれる。
「いいですかフェリアル様。知らないことは悪いことじゃないし、むしろ知らないことを知る楽しさを学ぶのが授業というものです。だからこれからは、色んなことを楽しく学びましょうね」
穏やかな声で紡がれるその言葉を聞いて、胸の奥までじわりとくすぐったい温もりに包まれた。
「……うん、ありがと。ありがとう、シモン」
『やさしい歴史』と書かれた教科書をぎゅっと抱え、そこに顔を埋めるようにして俯く。
なんだか目頭が熱くなった気がして、慌てて目を強く瞑ってそれを堪えた。
知らないことは、悪いことじゃない。
知らないことを知る楽しさを学ぶのが、授業というもの。
そんなの初めて聞いた。前世では、僕が「知らない」と言うと、みんなが僕を叱ったのに。
何かを学ぶって、もっと怖くて不安なものだと思っていた。実際、あの頃はそうだったから。
でも、ここでは違うみたいだ。
「……あのね、僕ね、おんなじところ、まちがえちゃうの」
ぽつり、ぽつり。
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