余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

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攻略対象file5:狡猾な魔塔主

145.悪の組織のボス

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 とたとた。シモンとルルの傍に駆け寄ってしゃがみこみ、きゅっと結ばれた縄を何とか解こうと頑張ってみる。うーっと唸りながら縄を引っ張っていると、静寂の空間に困惑気味の声が降ってきた。


『…ちょ…え…少年よ、何をしとるのかね?』


 よかった、近付いてもシモン平気そうだ、とほっとしながら縄を解く作業に全力を注いでいる時にかけられた声。一度手を止めて頭上を見上げ、質問されたからには答えなければと口を開く。


「えらべないから、縄をほどいて、みんなで逃げようとしてるの」

「全部白状しちゃうフェリアル様ほんと可愛い天使」

「どうして正直に答えてしまうのか…」


 はっきり答えると、シモンとルルがそれぞれぼそりと呟きを零した。良く聞こえなくて振り返ると、シモンはにこにこしていてルルは何やら呆れ顔を浮かべていた。呆れ顔が少し気になるけれど、シモンがにこにこしているからまぁいいか。

 まずはシモンの縄を…と思いぐっぐと縄を引っ張って解こうとするけれど、かなり強く結ばれているのか中々解けそうにない。
 どうしようと悩んでいると、不意にシモンがごそごそと僅かに身じろいだ。ほんの数秒の間離していた視線を戻してぎょっとする。
 なんと一瞬目を離した隙に、シモンを拘束していた縄が綺麗に解かれていたのだ。


「……!?…ぼ、ぼくいつのまに…」

「ありがとうございますフェリアル様!フェリアル様のお陰で拘束から逃れることが出来ました!!」

「あ…う、うん…どういたし、まして…?」


 本当に、いつの間にシモンの縄を解いたのだろう。
 手が空いているのが僕だけな以上僕が解いたのだろうけれど、それにしたってびっくりだ。視線を逸らした瞬間縄が解けるなんて。

 でも、僕が解いた。確かに僕が解いたはずなのだ。


「僕すごい…!」

「えぇ凄いです!フェリアル様は天才です!」

「いや…自分で解いてたよね──」

「フェリアル様は天才です!!」


 ルルが何か言ったような気がしたけれど、全て「天才です!」に掻き消されて聞こえなかった。
 うんうんと頷いてわーいと喜び、シモンとやったやったと手を合わせる。
「僕の縄も取って欲しいな……?」というルルの引き攣った笑顔を見て、慌ててルルの縄も解いた。

 ちなみにルルの縄も固く結ばれていて取れなかったので、それはシモンに解いてもらった。


「クマ!ご主人様はすごいクマ!人助けして偉いクマ!」

「ありがとクマくん。クマくんも応援ありがと」


 僕がうーっと縄を解こうとしている間、ずっとふれーふれーしてくれていたクマくんにぺこりとお礼を言う。
 ありがとありがと、とクマくんをぎゅーしていると、その様子をじーっと見つめていたシモンが不意に尋ねてきた。


「……あの、フェリアル様。俺にもその…喋るぬいぐるみを紹介して頂いても……?」


 はっとして振り返る。もちろん、これから僕の友達になるクマくんのことはシモンにも伝えておかないと。
 こくりと頷いてクマくんを下ろし、もふもふの頭をぽんぽんと撫でながら答える。


「この子、クマくん。僕のお友だち。ウサくんともお喋りできるようになるの」


 ウサくんとお喋り。わくわく。
 頬を染めて語る僕に、シモンは更ににこーっと嬉しそうに笑ってくれる。


「大切な友人一号とついにお喋り出来るようになるんですね!おめでとうございますフェリアル様!」

「うんうん。ありがとシモン」


 相変わらずシモンは理解が早くてびっくりする。
 ウサくんと喋れるようになることも、見覚えのないクマのぬいぐるみが喋っていることも、こんなにすんなりと受けて入れてしまうなんて。


「ご主人様の仲間クマ?よろしくクマ!一緒にご主人様を守るクマ!」

「礼儀正しいクマさんですね。気に入りました」


 ガシッと熱い握手を交わす二人。仲良くなれたみたいで良かった。

 うんうんと頬を緩めていると、不意に背後から強い風が吹く。
 驚いて振り返ると、そこには小さな竜巻のようなものが現れ、ぐるぐるとした末にパッと風が散った。
 風の中から現れたのはローブを纏った一人のお爺さん。白髭を撫でながら現れたお爺さんに「あ……!」と目を見開いて立ち上がった。


「魔塔主さま!」


 どうしてこの人がここに…?とびっくりして硬直する。あんぐり開けた口のまま固まっていると、魔塔主様が穏やかに笑って語り始めた。


「いやはや、面倒な試練を強要させてしまってすまないの。今からネタばらしをしてあげるから混乱せず…──」

「うそ……」


 魔塔主様の言葉を遮るように愕然と声を零す。ん?と首を傾げた魔塔主様をじっと見つめ、うるうると瞳を滲ませて呟いた。



「魔塔主さま。あくのそしきのぼすだった……」


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