異世界マフィアの悪役次男に転生したので生き残りに励んでいたら、何故か最強の主人公達に溺愛されてしまった件

上総啓

文字の大きさ
161 / 241
五章

160.ロキばなれ

しおりを挟む
 
 今日も今日とて友達のロキを招待し、邸で遊ぶのももう何度目だろうか。

 会う度ロキは魅力を増していく。初めて会った時から子供にしては色気のある風貌だったから、それが十八歳の青年に成長したともなると尚更だ。
 雪みたいな純白の髪は変わらず艶やか。赤い瞳も底知れぬ仄暗さと美しさを宿していて、思わず見ているこっちが震えちゃうくらい。
 現実のロキからは、原作で読んだ以上の“攻め主人公っぽさ”を強く感じた。

 きっとこれからもっと魅力的になるであろうそんなロキに、今日は先日の近親結婚騒ぎの件を何気なく話してしまった。
 お友達との世間話みたいな、そんな感覚で話してみたわけなのだが……返ってきたのは、ものすごく重苦しい声音だった。


「──……ルカちゃん、ほんとにしちゃうの?アンドレアと、結婚……」

「するわけないし、できるわけないんだぞ」


 やーん酷い目にあったのねよしよし、みたいな女子会の共感的な返しが欲しかったのに、俺の話を聞いたロキが発した言葉はシクシクメソメソとした至って普通のメンヘラ男子っぽいものだった。

 そもそも俺ってば、どうしてこの話の吐き出し先をロキにしてしまったのか自分でもわけわかめである。こういう話で、ロキが一般的なご意見を返してくれるわけがないのに。
 とは言え、ロキ以外にこういう話が気軽にできる友達がいないのも事実。心に溜まったモヤモヤを家族以外に吐き出せる相手と言えばロキしかいないのである。

 不格好な花冠を作りながらうぅむと唸り、クオリティの高い売り物みたいな花冠を作るロキを見据えて呟いた。


「……おれ、ロキに依存、しすぎてたかも」

「えっ!?ルカちゃん、俺に依存してくれてたの!?うそッ!」


 ぽつりと独り言みたいに零した呟きに、ロキは過剰なくらい反応してポポッと頬を染めた。
「うそ、うそ、うれしい……」と乙女みたいにリンゴほっぺに手を添えるロキからスッと視線を逸らし、これまたぽつりとした呟きを零した。


「ほかにもお友だち、つくろうかな。ロキ以外にも、なかよしのお友だち。それで、ロキとはしばらく、遊ばないんだぞ」


 つい数秒前までの乙女な声音はどこへやら。焦燥を滲ませた「ルカちゃんッ!?」という呼び掛けが飛んできてぱちくり瞬いた。
 なにごとかね?と視線を戻すと、そこにはサーッと顔面蒼白したロキの姿がある。完成間近と思われるとっても綺麗な花冠は、ロキの手から滑り落ちて虚しく地面に伏せてしまった。

 あらま落ちちゃったぞ、と眉尻を下げつつ花冠を拾い上げる。その時、ちょうど花冠を持ち上げた手をロキにぎゅうっと握られてナヌッと硬直した。
 なんだなんだ、急にそういうことされるとびっくりしちゃうんだぞ。


「ル、ルルルカちゃん……?ど、どういうことっ?俺を捨てるの……?俺を捨てて、新しい男に乗り換えるってこと?なんで?ねぇなんで?」


 なんでなんで、と壊れた機械みたいに同じ問いを繰り返すロキにちょっぴりビビる。
 あわわと目を回しながらも、この状態のロキを放置したら碌なことにならない気がする……と本能が警鐘を鳴らしているので素直に答えた。


「だって……おれ、ロキのことばっかりなんだもん。遊びたいなーって思ったら、ロキしか浮かばない。これは、まずいぞ。こんなの、いつかロキのことぎゅってして、離せなくなっちゃうぞ……」


 ぷるぷる震えながら何とか答えると、何故かロキはピシャッと硬直してしまった。
 あんぐりと口を開き切った、珍しい間の抜けた表情を見てきょとんとしつつ言葉を続ける。


「流石にずっとぎゅってされるのは、いやだろ?おれ、ロキに嫌われたくない……だから、がんばってロキばなれ、するんだぞ」


 ふんすと意気込みをあらわに宣言する。
 “ただの友達”であるロキに異常なまでの依存をしてしまうのはいけないことだ。お友達ってのは距離感が大切なんだって、何かの本に書いていた。

 前世でも友達とかは全然いなかったから、距離感やら何やらはいまいち理解しにくいけれど……でも、ロキは前世含めて初めてとっても仲良しになれた人だから、嫌われたくない。
 大切で大好きな友達に嫌われたくないから、依存したくないから。だからこうしてもじもじ悩むなんて、誰にだってよくあることだよな?


「うぅ……ロキとはなればなれ、やだぞぉ……」


 クールに『ロキ離れするんだぞ(キリッ)』と宣言したは良いものの、ふえぇっと油断した隙に思わず本音を零してしまった。
 慌ててむぐっと口を噤み、聞こえちゃわなかったかなそわそわ……と慌ててロキをチラ見する。ロキは何やら俯いてぷるぷる震えていた。反応が何もないのを見る限り、聞こえていなかったと判断していいのかな。

 それならよきよき安心ほっ……と息を吐いた直後、ふいにロキがバッ!と顔を上げた。なぬっ、なにごとかねっ!はっ、まさか聞こえていたとか……ッ!


「──……こんなの」


 初めにポツリとした呟きが聞こえたかと思うと、ロキはクワッと目を血走らせて叫んだ。


「こんなの生殺しだぁッ!!」


 うえぇぇんッ!とめちゃんこ辛そうに嘆き泣き喚くロキを前にあわあわと慌てる。
 なにがなんだかわけわかめなのだが、とにかくロキが今とっても苦しんでいるのだということは察した。どうしてそんな辛そうなのかは分からないけれど。

 何はともあれロキがすごく苦しそうにしていることは確かなので、手持ちのものでなんとか励ましてみることに。
 俺が作った不格好な花冠をロキの頭にぽすっとのっけて、ハッと息を呑んだロキにえへへっと緩い笑顔を向ける。


「よくわかんないけど、元気だすんだぞ。お花さんのかんむり、あげるからな。ロキすっごくきれい。シクシク泣いてちゃ、もったいないぞ」


 ロキが作った完璧な花冠は、自分でそっと頭にのっけた。交換っこだぞ、と悪戯っぽい笑みを浮かべて言うと、ロキはたちまちぐにゃっと表情を歪めて涙目になった。


「……もう、もうッ!ルカちゃんったら……まだ自覚してくれないの?誰が見ても、俺のこと絶対好きなくせに……」

「む?うむ、しってるぞ。おれ、ロキのこととっても大好きだぞ?」


 突然何を分かりきったこと言っちゃってるんだ?と困惑気味に眉尻を下げる。
 そんな俺を見て更にぐぬぬ……と呻いたロキが「そうじゃなくて……」とガックシ項垂れた。
しおりを挟む
感想 118

あなたにおすすめの小説

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます

大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。 オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。 地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...