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五章
160.ロキばなれ
しおりを挟む今日も今日とて友達のロキを招待し、邸で遊ぶのももう何度目だろうか。
会う度ロキは魅力を増していく。初めて会った時から子供にしては色気のある風貌だったから、それが十八歳の青年に成長したともなると尚更だ。
雪みたいな純白の髪は変わらず艶やか。赤い瞳も底知れぬ仄暗さと美しさを宿していて、思わず見ているこっちが震えちゃうくらい。
現実のロキからは、原作で読んだ以上の“攻め主人公っぽさ”を強く感じた。
きっとこれからもっと魅力的になるであろうそんなロキに、今日は先日の近親結婚騒ぎの件を何気なく話してしまった。
お友達との世間話みたいな、そんな感覚で話してみたわけなのだが……返ってきたのは、ものすごく重苦しい声音だった。
「──……ルカちゃん、ほんとにしちゃうの?アンドレアと、結婚……」
「するわけないし、できるわけないんだぞ」
やーん酷い目にあったのねよしよし、みたいな女子会の共感的な返しが欲しかったのに、俺の話を聞いたロキが発した言葉はシクシクメソメソとした至って普通のメンヘラ男子っぽいものだった。
そもそも俺ってば、どうしてこの話の吐き出し先をロキにしてしまったのか自分でもわけわかめである。こういう話で、ロキが一般的なご意見を返してくれるわけがないのに。
とは言え、ロキ以外にこういう話が気軽にできる友達がいないのも事実。心に溜まったモヤモヤを家族以外に吐き出せる相手と言えばロキしかいないのである。
不格好な花冠を作りながらうぅむと唸り、クオリティの高い売り物みたいな花冠を作るロキを見据えて呟いた。
「……おれ、ロキに依存、しすぎてたかも」
「えっ!?ルカちゃん、俺に依存してくれてたの!?うそッ!」
ぽつりと独り言みたいに零した呟きに、ロキは過剰なくらい反応してポポッと頬を染めた。
「うそ、うそ、うれしい……」と乙女みたいにリンゴほっぺに手を添えるロキからスッと視線を逸らし、これまたぽつりとした呟きを零した。
「ほかにもお友だち、つくろうかな。ロキ以外にも、なかよしのお友だち。それで、ロキとはしばらく、遊ばないんだぞ」
つい数秒前までの乙女な声音はどこへやら。焦燥を滲ませた「ルカちゃんッ!?」という呼び掛けが飛んできてぱちくり瞬いた。
なにごとかね?と視線を戻すと、そこにはサーッと顔面蒼白したロキの姿がある。完成間近と思われるとっても綺麗な花冠は、ロキの手から滑り落ちて虚しく地面に伏せてしまった。
あらま落ちちゃったぞ、と眉尻を下げつつ花冠を拾い上げる。その時、ちょうど花冠を持ち上げた手をロキにぎゅうっと握られてナヌッと硬直した。
なんだなんだ、急にそういうことされるとびっくりしちゃうんだぞ。
「ル、ルルルカちゃん……?ど、どういうことっ?俺を捨てるの……?俺を捨てて、新しい男に乗り換えるってこと?なんで?ねぇなんで?」
なんでなんで、と壊れた機械みたいに同じ問いを繰り返すロキにちょっぴりビビる。
あわわと目を回しながらも、この状態のロキを放置したら碌なことにならない気がする……と本能が警鐘を鳴らしているので素直に答えた。
「だって……おれ、ロキのことばっかりなんだもん。遊びたいなーって思ったら、ロキしか浮かばない。これは、まずいぞ。こんなの、いつかロキのことぎゅってして、離せなくなっちゃうぞ……」
ぷるぷる震えながら何とか答えると、何故かロキはピシャッと硬直してしまった。
あんぐりと口を開き切った、珍しい間の抜けた表情を見てきょとんとしつつ言葉を続ける。
「流石にずっとぎゅってされるのは、いやだろ?おれ、ロキに嫌われたくない……だから、がんばってロキばなれ、するんだぞ」
ふんすと意気込みをあらわに宣言する。
“ただの友達”であるロキに異常なまでの依存をしてしまうのはいけないことだ。お友達ってのは距離感が大切なんだって、何かの本に書いていた。
前世でも友達とかは全然いなかったから、距離感やら何やらはいまいち理解しにくいけれど……でも、ロキは前世含めて初めてとっても仲良しになれた人だから、嫌われたくない。
大切で大好きな友達に嫌われたくないから、依存したくないから。だからこうしてもじもじ悩むなんて、誰にだってよくあることだよな?
「うぅ……ロキとはなればなれ、やだぞぉ……」
クールに『ロキ離れするんだぞ(キリッ)』と宣言したは良いものの、ふえぇっと油断した隙に思わず本音を零してしまった。
慌ててむぐっと口を噤み、聞こえちゃわなかったかなそわそわ……と慌ててロキをチラ見する。ロキは何やら俯いてぷるぷる震えていた。反応が何もないのを見る限り、聞こえていなかったと判断していいのかな。
それならよきよき安心ほっ……と息を吐いた直後、ふいにロキがバッ!と顔を上げた。なぬっ、なにごとかねっ!はっ、まさか聞こえていたとか……ッ!
「──……こんなの」
初めにポツリとした呟きが聞こえたかと思うと、ロキはクワッと目を血走らせて叫んだ。
「こんなの生殺しだぁッ!!」
うえぇぇんッ!とめちゃんこ辛そうに嘆き泣き喚くロキを前にあわあわと慌てる。
なにがなんだかわけわかめなのだが、とにかくロキが今とっても苦しんでいるのだということは察した。どうしてそんな辛そうなのかは分からないけれど。
何はともあれロキがすごく苦しそうにしていることは確かなので、手持ちのものでなんとか励ましてみることに。
俺が作った不格好な花冠をロキの頭にぽすっとのっけて、ハッと息を呑んだロキにえへへっと緩い笑顔を向ける。
「よくわかんないけど、元気だすんだぞ。お花さんのかんむり、あげるからな。ロキすっごくきれい。シクシク泣いてちゃ、もったいないぞ」
ロキが作った完璧な花冠は、自分でそっと頭にのっけた。交換っこだぞ、と悪戯っぽい笑みを浮かべて言うと、ロキはたちまちぐにゃっと表情を歪めて涙目になった。
「……もう、もうッ!ルカちゃんったら……まだ自覚してくれないの?誰が見ても、俺のこと絶対好きなくせに……」
「む?うむ、しってるぞ。おれ、ロキのこととっても大好きだぞ?」
突然何を分かりきったこと言っちゃってるんだ?と困惑気味に眉尻を下げる。
そんな俺を見て更にぐぬぬ……と呻いたロキが「そうじゃなくて……」とガックシ項垂れた。
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