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番外編(短編)
コミカライズ記念短編
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コミカライズ記念の、本当に短い小話です!
時期は一章と二章の間辺りかなと……コミカライズにかけて、画力についてのお話です!
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「うわぁ……暇だぁ」
サンルームにある白い椅子の上で、俺は伸びをする。テーブルの上には本とノートとペン。水やりも終わったから勉強していたんだけど……それも飽きてしまった。
麗らかな春の日差しが目に入る。気持ちいいけれど、心は晴れない。今日も今日とてのどかで暇過ぎる……
「やっぱり、新しい趣味でも見つけるしかないか……」
頭の後ろで手を組み、瞼を閉じて、今までライア様に提案された趣味を思い浮かべた。
狩猟、楽器、歌……あとは絵画か。
「絵……絵ねぇ……」
ぱちりと目を開けると、たまたま美しいピンクの花がひょっこり目に入る。
ふと思いついて、ノートの隅にその美しい花を描いてみた。
「な、なんだこれは……」
思えば、ちゃんと絵を描こうと思ったのは初めてかもしれない。実家にいた頃は絵を描く気力なんて湧かなかったし……
だからだろうか、俺の手が出力した像は、到底花と呼べるものではなかった。
「うー……うん、絵画は道具を揃えるのにお金も必要だし、やめよう、やめよう!」
一人頷き、席を立つ。ちょうどお茶もなくなったので、気分転換にナティさんでも探しに行こうかな……
そう思って、花らしきものを描いた紙をそのままに、俺はサンルームを出たのだが……
数十分後、ティーポットを片手にサンルームに戻ってくると、ライア様が帰ってきていた。
しかも、テーブルに置かれたノートをまじまじと眺めている。
俺はそのとき、麗しき公爵様に会えた嬉しさですっかり落書きをした紙の存在を忘れてて……
「ライア様っ!」と駆け寄った瞬間に、あっ、と思い出した。
「ジル、これは……空想の生き物か?」
「うぁ、え、えっと…………は、はい」
「そうか。可愛いな。この細い手足とか」
ライア様……その指差しているものは手足ではなくて、おしべとめしべで……とは言えず、俺は頬が熱くなる。
「この口とか、丸くて可愛らしい……ジルは絵の才能があるな!」
「あ、あはは……」
不自然に額にかいた汗がライア様に見つかる前に、俺はティーポットを置いて、さっとノートを胸元に抱き寄せた。
「? どうしたジル、別に隠さなくても……」
「いや、その、えへへ」
笑顔で誤魔化されるわけないと思ったけれど、他に方法が思い付かず笑うしかない。
するとライア様がきょとん、と首を傾げた後に、にっこりと微笑む。
「褒められて恥ずかしいのか……? 可愛いな、ジルは」
そう言って軽い口付けを落とされ、俺は嬉しさと恥ずかしさで曖昧に微笑むしかなくなった。
時期は一章と二章の間辺りかなと……コミカライズにかけて、画力についてのお話です!
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「うわぁ……暇だぁ」
サンルームにある白い椅子の上で、俺は伸びをする。テーブルの上には本とノートとペン。水やりも終わったから勉強していたんだけど……それも飽きてしまった。
麗らかな春の日差しが目に入る。気持ちいいけれど、心は晴れない。今日も今日とてのどかで暇過ぎる……
「やっぱり、新しい趣味でも見つけるしかないか……」
頭の後ろで手を組み、瞼を閉じて、今までライア様に提案された趣味を思い浮かべた。
狩猟、楽器、歌……あとは絵画か。
「絵……絵ねぇ……」
ぱちりと目を開けると、たまたま美しいピンクの花がひょっこり目に入る。
ふと思いついて、ノートの隅にその美しい花を描いてみた。
「な、なんだこれは……」
思えば、ちゃんと絵を描こうと思ったのは初めてかもしれない。実家にいた頃は絵を描く気力なんて湧かなかったし……
だからだろうか、俺の手が出力した像は、到底花と呼べるものではなかった。
「うー……うん、絵画は道具を揃えるのにお金も必要だし、やめよう、やめよう!」
一人頷き、席を立つ。ちょうどお茶もなくなったので、気分転換にナティさんでも探しに行こうかな……
そう思って、花らしきものを描いた紙をそのままに、俺はサンルームを出たのだが……
数十分後、ティーポットを片手にサンルームに戻ってくると、ライア様が帰ってきていた。
しかも、テーブルに置かれたノートをまじまじと眺めている。
俺はそのとき、麗しき公爵様に会えた嬉しさですっかり落書きをした紙の存在を忘れてて……
「ライア様っ!」と駆け寄った瞬間に、あっ、と思い出した。
「ジル、これは……空想の生き物か?」
「うぁ、え、えっと…………は、はい」
「そうか。可愛いな。この細い手足とか」
ライア様……その指差しているものは手足ではなくて、おしべとめしべで……とは言えず、俺は頬が熱くなる。
「この口とか、丸くて可愛らしい……ジルは絵の才能があるな!」
「あ、あはは……」
不自然に額にかいた汗がライア様に見つかる前に、俺はティーポットを置いて、さっとノートを胸元に抱き寄せた。
「? どうしたジル、別に隠さなくても……」
「いや、その、えへへ」
笑顔で誤魔化されるわけないと思ったけれど、他に方法が思い付かず笑うしかない。
するとライア様がきょとん、と首を傾げた後に、にっこりと微笑む。
「褒められて恥ずかしいのか……? 可愛いな、ジルは」
そう言って軽い口付けを落とされ、俺は嬉しさと恥ずかしさで曖昧に微笑むしかなくなった。
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ハッピーハロウィンのライア様とジルは相変わらずのいちゃいちゃぶりで楽しかったです😊 黒猫ナティさんと羊のセバスさんも、ぜひ読みたいところですが、なんと❗
新章スタートがcoming soonとは🤣
楽しみ過ぎます✨
はな様、返信遅くなり申し訳ございません。
ライア様が吸血になろうと二人はずっといちゃこらしていると思います……!笑
新章スタートというか、改稿作業になるので元のを改変する形にはなるのですが……
楽しみにしてくださり嬉しです☺️
今後ともよろしくお願いいたします!
表紙イラスト見ました❣️
ジル君!可愛い❤️
Madame gray-01様、ご感想に気づくのが遅くなり申し訳ございません💦
書籍見てくださりありがとうございます……!
ジルのライア様を見つめる表情が可愛いんですよね……☺️
いつもご感想いただきありがとうございます!
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします☺️
書籍化おめでとうございます🎊🎉
改めて読みましたがやっぱり好きな作品です❤️
レンタルで読むのが楽しみです😊
Madame gray-01様! ありがとうございます!
改めて読んでいただけて嬉しいです……!😭
いつもご感想いただきありがとうございます。
この度は応援してくださる読者様のおかげで書籍化することができました。
本当にありがとうございます💦
9月10日前後を目処に小話を追加する予定なので、久しぶりに仲睦まじい二人を見ていただけたら嬉しいです☺️
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!