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 「セム様、最後に一度お話できませんか?」

 「えっ」

 卒業式が終わり、大広間から出る人波に乗ってちょうど外へ出たときだった。

 ソフィーが話しかけてきたのだ。

 「セム様とちゃんとお別れのご挨拶をしたくて……あと、謝罪も」

 悲しそうに微笑む表情に、俺は戸惑ってしまう。

 「いや、でももう俺らだけで会わないほうがいいと思うんだ。ソフィーにはルーカスもいるし、俺だってアデルがいるし……」

 「わかっていますわ。でも、もうこれで一生のお別れでしょ?」

 正直、あまりここで別れとか、謝罪とか言わないでほしい。まだ周りに人はいるし、だんだん立ち止まっている俺らに視線が集まり始めている。

 「……ソフィー、このあとルーカスと一緒にプロムに出るんでしょ? なら急いで準備しないと」

 このあとは卒業を祝って、大広間で舞踏会が開かれる。飾り付けも今の式典風ではなく、華やかなパーティー仕様に変わるはずだ。

 学園生活の一大イベント。聖夜会よりも大事だろうに。

 「それに間に合うように、終わらせます。だから……」

 「セム、どうしたの?」

 肩に腕が乗るのと、アデルの怖い声が聞こえたのは、ほぼ同時だった。

 「……アデル様」

 「やあ、ソフィーさん。まだここにいたんだ」

 見えない視線の火花がばちばちっと散る。通りすがりの卒業生が

 「見て、修羅場だわ……」
 「本当だわ……ていうか結局アデル様と無能令息はどういう関係だったの?」
 「わかんないけど……ソフィー様が泣きそう。かわいそうに……」

 ざわざわと囁く声が、大きくなった。

 「あ、あの! ここじゃなんですし、その、どこか人目のつかない場所へ行きませんか……?」

 俺は慌てて、一触即発の二人に提案する。

 ルーカスはいないけど、アデルがいる。二人きりで会うわけじゃないから、大丈夫なはず……!

 「……わかりましたわ。ではこちらへ」

 俺とアデルはソフィーに言われるがまま、そのあとをついて行った。

                                      
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