檻から抜け出せない

かえねこ

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11 自慰でイけない

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 助かったのか・・・

 そんな風に正輝が実感できたのは、入院してから一週間程経ってからだった。


 初めのうちは意識がぼんやりしており、医師や看護師が時折来ては診察して話しかけてくるのだが、言葉が耳をすり抜けていた。
 長く意識を保っていることが出来ず、直ぐに眠りに落ちた。

「お前が生きていて良かったよ。心配したんだぞ」
 相棒の相川の親っさんが来てくれて、目じりに涙を浮かべながら、頭をくしゃりと撫でてきた。

「今はとにかく身体を治すことだけに集中してろ。後のことはこっちに任せておけ」
 朦朧とする意識の中で、そんな言葉を聞いた気がする。


 正輝の意識がハッキリしてきたころ、事情聴取を受けた。
 来たのは、正輝が所属している一課の課長と確か四課の課長だった筈。

 事情を説明した後、一課の課長は忌々し気に正輝の失態をなじってきた。
 彼は上司の命令を度々無視する正輝を疎んでいたし、今回のことは先走った正輝の失態だ。
 ましてやヤクザに掴まってヤクを打たれ、輪姦された正輝を自業自得だとでも思っているのだろう。

 それを四課の課長が宥め、正輝を痛ましげに労ってから一課の課長を引っ張るように病室を出て行った。
 元々暴力団専門の四課はヤクザのやり口をよく知っている為、正輝に同情的だった。



 正輝が退院する際に態々来てくれたのは相川の親っさんだけだった。

「だいぶ顔色もよくなったな。お前を見つけた時はどうなるかと思ったが・・・。
 何はともあれ、退院おめでとう」
「サンキュー、親っさん。
 親っさんには随分と心配かけちまって、悪かったよ」

 相川だけは、ほぼ毎日のように見舞いに来てくれた。

「霧島、お前に課長から言付けだ。・・・今月中に退職届を出すようにと。
 ・・・・・・すまん。
 わしの力では課長の決定を覆すことは出来んかった」

 心底申し訳なさそうに、相川が正輝に頭を下げた。

「親っさん、頭を上げてくれよ。親っさんのせいじゃないって。
 今回のことは俺の失態だ。
 上層部が刑事の不祥事を隠蔽するのは仕方ないさ」

 ヤクザを取り締まる刑事がヤクを打たれてマワされたなんぞ、公には出来ないだろう。

「霧島、これからどうするんだ?」
「そうだな・・・暫くは大人しくしてる。そのうち、どっかの警備会社にでも雇ってもらうよ」

 幸いヤクを使用されたのは一日だけだったので、禁断症状に悩まされることはなかった。
 だが混ぜ物の多い質の悪いモノだったらしく、倦怠感と頭痛、そして吐き気が長く続いたのだ。
 一応、肛門の傷は塞がったために退院したが、まだ本調子とはいえない。

「・・・そうか。それがいいだろう。・・・・・・ところで、霧島」
 抑えた声で相川が真顔で正輝を見てきた。

「なんすか?」
「黄龍会の海棠はあれから接触してきたのか?」
「海棠? ・・・なんで?」
 何故そんなことを問われるのかと訝しみながら正輝は問い返した。

「お前を見つける前に、海棠からタレコミがあった」

「・・・え?」
 海棠が・・・?

「お前の居場所と救急車の手配を頼んできたのは、恐らく海棠の指示だろう」

 あの時、海棠の声が聞こえたのは夢か幻だと思っていたのだが、現実だったのか・・・?



 その後、相川とどんなやり取りをしたか覚えていない。
 気が付けば、正輝は自宅アパートに帰宅していた。

 海棠のことを思い浮かべた途端、身体の奥がゾクリと疼いたのだ。 

「クッ!」
 そして、チンピラたちに輪姦された時のことが思い出され、正輝は自身の腕を強く握りしめた。

 ・・・悔しい。

 ヤクのせいだということは解っている。
 拘束されたせいで逃れることも出来なかった。

 あんな連中に好き勝手されて、それに喜悦した身体。

 白濁を身体の奥深くに注ぎ込まれる熱に溺れた。

 性感帯を同時に責め立てられながら熱を吐き出すことも許されず、男たちの肉杭でイカされ続けて善がり狂った。

 今も思い出しただけで飢渇している疎ましい身体。



「グゥッ!」
 こみあげてきた吐き気に正輝は洗面所に駆け込んだ。

「グッ! ゲホッ・・・ゴホッ」
 胃の内容物を全て吐き出し、顔を上げると、鏡面に映った青白い貌。

 久しぶりに吐いた。
 病院では思い出すたびに何度も吐いた。
 随分落ち着いてきたと思っていたが、自分でも情けない。



 燻る熾火を鎮めようと、バスルームへ向かう。

 湯船に湯を溜めながら、脱衣所で服を脱ぎ始めた。
 病院ではシャワーしかしていないから、久々にゆったり浸かりたかった。


 ざっと身体を洗うが、貧相な体が目に付く。
 刑事として鍛えていた身体の筋肉が落ち、体重も落ちたせいで厚みがなくなっている。

 海棠に囚われてからひと月近くたっている。
 それからはセックス以外の運動などしていないのだから、当然か。

 海棠の愛撫を思い出してしまい、身体の中心に熱を帯びる。

 そろり、と前に手を添えると既に半起ちしている己自身。

「ふ・・・んっ」
 自分を慰めるが、イケるところまでいかない。

 病院でもそうだった。
 何度か我慢できずに自身を慰めたが、結局イケなかった。

 病院では躊躇われて触れなかった後ろに指を這わせてみるが、シャワーで濡れているだけの蕾は固く閉じていた。

 思い切ってボディシャンプーを手に取り、手のひら全体に泡立て、もう一度後ろに指を這わす。
 何度か蕾の周辺を解しているうちに、指が少しずつ中へ潜り込んだ。

「ふぅ・・・んんっ」
 漸く中指が根元まで埋まった。
 内襞が久々に受け入れた異物に歓喜し、指に纏わりつくのが判る。

 正輝は自分の痴態に恥ずかしくなったが、誰が見ているわけでもなしとその先の快楽を求めて指を動かした。

「んんっ・・・・ん、ふ・・・・ん。ち、くしょう・・・イケねぇ・・・」
 二本の指を後ろに突っ込んで掻き回しながら前を擦るが、イキそうでイケない。

「かい・・どう・・」
 男の熱い雄根を思い浮かべながら三本の指で後孔を何度も擦りあげる。
 だが己の指では肉杭に穿たれた奥まで届かない。

「あ・・・ぁ、もっと・・奥、・・・あぁ、奥に・・・欲しい・・・」
 身体の奥深くで悦楽を覚えた身体は、指では物足りない。
 あの熱い肉塊が欲しい・・・

「あ、・・・ぁぁ・・・かいどぅ・・・」

 男の名を呼んでしまった瞬間、正輝は我に返った。
 まるで女のように男を求める身体に愕然とする。

「ち・・・くしょう!」
 男としてのプライドが自分自身を許せず、正輝はバスルームの床に拳を叩きつけた。



 あれから思い出さないようにと思っても、自分の躰が目に入る度に自己嫌悪に陥る。

 特に輪姦されたときのことを思い出してしまうと、吐いてしまう。

 病院では、親っさんに心配かけまいと無理にでも食べていたが、家に帰ってからは吐くからとあまり食べていない。
 身体に良くないのは解っているが、吐くのも体力を消耗して辛い。

 せめて、カロリーの高いゼリー状のサプリでも買うか、と正輝はコンビニへ向かった。

 サプリと缶ビールにつまみのチーズ、ついでにアイスクリームも買った。



 自宅アパートの前まで帰ってきたところで、すぐ横に車が止まった。

「かい・・・どう」
 見覚えのあり過ぎる男に、正輝は呆然とした。

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