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15■ゆらめく月夜☆白樺祭 SIDE:希(了)
5.充電中
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「おはよう」
「おはよ、珠希」
あゆが部屋を出てしばらくすると、珠希が僕の部屋をノックした。
「歩くんは?」
「あゆは、なんか今日もクラスの子と朝ご飯食べるって。あ、空也先輩は? もう食堂?」
「ああ、いいや。空也も今日は早朝から前夜祭の準備で飛び回ってるんだ」
「そっか…」
まさか、空也先輩もあゆを避けようとした、とかじゃ、ないよね。
僕が心配になって視線を落とすと、珠希が僕の頭をぽんぽんっと撫でた。驚いて顔を上げると、珠希が優しい顔で微笑んでいた。
「心配性だね、希は」
「え……」
「心配なんでしょ? 歩くんと空也のことが」
「うん、そう」
やっぱり、珠希にはなんでもすぐばれちゃうな。
ふいに、珠希の長い腕が伸びてきて、僕はその広い胸にすっぽりと包まれた。
「大丈夫だよ。あのふたりは。どっちも意地っ張りだからなあ。そう簡単にはいかないかもしれないけど」
珠希の低くて柔らかな声が、耳元で響く。
僕はこくんとうなずく。
「きっと大丈夫だよ」
「うん、そうだよね?」
「そうだよ」
珠希の言葉で、どんどん気持ちがほぐれて行く。珠希が大丈夫だって言えば、ほんとに大丈夫な気がしてくるから不思議だ。
僕が単純なだけかな。
「それに、いくら歩くんが逃げ回ったって、あの空也が簡単に逃がす訳ないよ」
そう言って珠希はくすくす笑う。
「僕も今日、仕事がたっぷりなんだ」
「大変なの?」
「うん、まあ。白樺祭に付随する仕事が増えてるし。でも、これで今日一日頑張れそ」
そう言って珠希は僕の首筋に埋めていた顔を挙げた。
それって、僕にぎゅってしたから、今日も一日頑張れるって、そういうこと、って取ってもいいのかな。
嬉しくって、僕はもう一度珠希にぎゅうっと力一杯抱きついた。
「ん? どうしたの」
「僕も、珠希から今日の栄養もらうの」
力一杯珠希に抱きつくと、上からくすくす笑う声が聞こえて、また珠希に苦しいくらいぎゅっと抱きしめられた。
「じゃあ、僕ももうちょっと充電しよ」
うーん、息苦しいけど、でも幸せ。そう噛み締めていると、後ろで咳払いが聞こえて、人の気配がした。
はっとして顔を珠希の胸から顔を起こすと、おそるおそる廊下を覗いて見た。
「希ちゃーん、おっはよーん」
にやにや笑うシュウ。それに、ちょっと顔を赤くしてる順平、その後ろに髪が長めの実……かと思ったら、晴海くんがいた。
「お、おおはよ、みんな」
「おはようございます、久慈先輩」
「おはよう」
珠希は余裕でにっこり。僕はといえば、金魚みたいに真っ赤になってぱくぱく。
「あはは、なんだか恥ずかしいとこ見られちゃったね。希」
そう言って珠希は微笑む。恥ずかしいなんてぜんっぜん思ってなさそうにない口調だけど。
「いやいや、朝から目の保養させて頂きました」
シュウは僕らをからかうように冗談っぽく言う。前は珠希のことをサイボーグとかみたいな完璧人間だって思って近づきがたい、なんて言ってたシュウも順平も。夏のバカンスやパーティーの準備ですっかり打ち解けた。
「みんな今から朝食?」
「はい、食堂に降りるとこです」
「そう、じゃあ僕らも降りようか」
「うん」
僕はまだ顔が火照っていたけど、珠希に笑顔を返した。
珠希は僕の手をひいて歩き出す。
「そうだ、ねえ舟木くん矢野くん、ありがとうね、いつも希にいろいろ気を回してくれて」
エレベーターに向かって歩いている途中で、珠希がふたりを見て言った。僕は何のことだかわかんなくて、ただ見ていた。
「採寸の時のこととか、聞いたよ」
「あー、あれですか、いいっす。だって、かわいい希をあんな獣たちにさらすなんて、なあ順平」
「ああ」
「ありがと、君らと一緒だと思うと、僕も安心してられる」
「久慈先輩…なんか、そんなふうに言ってもらえるなんて」
「なんでおまえが照れてんだよ」
順平がシュウにつっこみを入れる。
なんだかいまいち話が見えないけど、とにかく僕を挟んで三人はとっても仲良しな感じだから、よかった、と思った。
その視線を感じるまでは。
エレベーターが来るのを待っている時だった。
僕らから2.3歩下がって、歩いて来た晴海くんが、僕をじっとみつめているのに気がついた。
まるで、怒ってるみたいに。
目があった瞬間、心臓がびくんっと跳ねて、思わず息をのんだ。
僕は珠希と一緒にいるのが楽しすぎて、一瞬忘れていた。
晴海くんも珠希のことが好きだって。
「おはよ、珠希」
あゆが部屋を出てしばらくすると、珠希が僕の部屋をノックした。
「歩くんは?」
「あゆは、なんか今日もクラスの子と朝ご飯食べるって。あ、空也先輩は? もう食堂?」
「ああ、いいや。空也も今日は早朝から前夜祭の準備で飛び回ってるんだ」
「そっか…」
まさか、空也先輩もあゆを避けようとした、とかじゃ、ないよね。
僕が心配になって視線を落とすと、珠希が僕の頭をぽんぽんっと撫でた。驚いて顔を上げると、珠希が優しい顔で微笑んでいた。
「心配性だね、希は」
「え……」
「心配なんでしょ? 歩くんと空也のことが」
「うん、そう」
やっぱり、珠希にはなんでもすぐばれちゃうな。
ふいに、珠希の長い腕が伸びてきて、僕はその広い胸にすっぽりと包まれた。
「大丈夫だよ。あのふたりは。どっちも意地っ張りだからなあ。そう簡単にはいかないかもしれないけど」
珠希の低くて柔らかな声が、耳元で響く。
僕はこくんとうなずく。
「きっと大丈夫だよ」
「うん、そうだよね?」
「そうだよ」
珠希の言葉で、どんどん気持ちがほぐれて行く。珠希が大丈夫だって言えば、ほんとに大丈夫な気がしてくるから不思議だ。
僕が単純なだけかな。
「それに、いくら歩くんが逃げ回ったって、あの空也が簡単に逃がす訳ないよ」
そう言って珠希はくすくす笑う。
「僕も今日、仕事がたっぷりなんだ」
「大変なの?」
「うん、まあ。白樺祭に付随する仕事が増えてるし。でも、これで今日一日頑張れそ」
そう言って珠希は僕の首筋に埋めていた顔を挙げた。
それって、僕にぎゅってしたから、今日も一日頑張れるって、そういうこと、って取ってもいいのかな。
嬉しくって、僕はもう一度珠希にぎゅうっと力一杯抱きついた。
「ん? どうしたの」
「僕も、珠希から今日の栄養もらうの」
力一杯珠希に抱きつくと、上からくすくす笑う声が聞こえて、また珠希に苦しいくらいぎゅっと抱きしめられた。
「じゃあ、僕ももうちょっと充電しよ」
うーん、息苦しいけど、でも幸せ。そう噛み締めていると、後ろで咳払いが聞こえて、人の気配がした。
はっとして顔を珠希の胸から顔を起こすと、おそるおそる廊下を覗いて見た。
「希ちゃーん、おっはよーん」
にやにや笑うシュウ。それに、ちょっと顔を赤くしてる順平、その後ろに髪が長めの実……かと思ったら、晴海くんがいた。
「お、おおはよ、みんな」
「おはようございます、久慈先輩」
「おはよう」
珠希は余裕でにっこり。僕はといえば、金魚みたいに真っ赤になってぱくぱく。
「あはは、なんだか恥ずかしいとこ見られちゃったね。希」
そう言って珠希は微笑む。恥ずかしいなんてぜんっぜん思ってなさそうにない口調だけど。
「いやいや、朝から目の保養させて頂きました」
シュウは僕らをからかうように冗談っぽく言う。前は珠希のことをサイボーグとかみたいな完璧人間だって思って近づきがたい、なんて言ってたシュウも順平も。夏のバカンスやパーティーの準備ですっかり打ち解けた。
「みんな今から朝食?」
「はい、食堂に降りるとこです」
「そう、じゃあ僕らも降りようか」
「うん」
僕はまだ顔が火照っていたけど、珠希に笑顔を返した。
珠希は僕の手をひいて歩き出す。
「そうだ、ねえ舟木くん矢野くん、ありがとうね、いつも希にいろいろ気を回してくれて」
エレベーターに向かって歩いている途中で、珠希がふたりを見て言った。僕は何のことだかわかんなくて、ただ見ていた。
「採寸の時のこととか、聞いたよ」
「あー、あれですか、いいっす。だって、かわいい希をあんな獣たちにさらすなんて、なあ順平」
「ああ」
「ありがと、君らと一緒だと思うと、僕も安心してられる」
「久慈先輩…なんか、そんなふうに言ってもらえるなんて」
「なんでおまえが照れてんだよ」
順平がシュウにつっこみを入れる。
なんだかいまいち話が見えないけど、とにかく僕を挟んで三人はとっても仲良しな感じだから、よかった、と思った。
その視線を感じるまでは。
エレベーターが来るのを待っている時だった。
僕らから2.3歩下がって、歩いて来た晴海くんが、僕をじっとみつめているのに気がついた。
まるで、怒ってるみたいに。
目があった瞬間、心臓がびくんっと跳ねて、思わず息をのんだ。
僕は珠希と一緒にいるのが楽しすぎて、一瞬忘れていた。
晴海くんも珠希のことが好きだって。
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