誰も火力をやりたがらないVRMMO

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第1話 初見殺し

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 自室の勉強机に置かれたピンク色のボックス型VR機器に、青いディスクを挿入する。ディスクを認識すると機械音を発して飲み込んだ。

 これは姉のおさがりで「最新機種を買ったから」と言って捨てるようにくれた。俺は姉の事をそんなに良いとは思っていなかったのだが、この時ばかりは届いた荷物の前で頭を下げた。

 機器とヘッドギアがランプを青と白に変化し始める、起動準備中。少しパッケージでも見てみるか。

 ゲームソフトを手に取り、デザインから内容を汲み取る。


 剣を持った青年と鎧を着込んで盾を背負う伊達男、看護師のような服を着た女性が走っている。看護師だけは並走するのが限界なのか、全力で腕を振っていた。3人の背後には火を吐きながら後を追う、ファンタジーな青いドラゴンが空を駆けていた。

「……面白そうだな」



 呟いた所でヘッドギアと機器の色が青に統一され、準備完了の合図が告げられる。

 俺はベッドに飛び込みながら、ヘッドギアを装着する。俺の視界には見慣れた部屋の天井など映らず、白い空間が広がっていた。

 目の前は鏡らしい、俺の姿がそのまんま映っている。その証拠に近づくと俺の体が大きくなっていく。

 これはVRゲームでよくある設定ポイントで、ここで色々済ませておく……って友達が言っていた。

 どうやって設定するのか分からなかったが、視界の端にメニューページが表示されていることに気づく。キャラメイクという部分をタップすると目を覆いたくなるほどの文字がブワーっと現れた。

 どうやらこれは部位らしく、頬骨やら鎖骨やら沢山ある。体全ての設定があるかもしれない、もう一度タップして設定を隠す。

 ……めんどくさ、俺は精密身体スキャンという部分を押して現実の俺を反映させた。ちなみにこういうモノは知らなかったが、友達が「頭痛くなるからこれ使った方がいいよ」と予知してくれて今に至る。


「スタート時の服装もあるのか」
 
 何故かパラシュートまである。カジュアルにジーンズとパーカーで整えたので使うことは無かった。

 準備完了という部分を押し、もう行けるのかなとワクワクしていたら次のウィンドウが現れる。


 クラス選択と書かれている。


 アタッカー、ナイト、リアルモンク。それぞれの強みがこの白い空間に看板のごとく立てかけられている。


 アタッカー。武器を使って戦うクラス、防御力のステータスが存在せず、武具から補われる防御値の60%を身体能力に振り分ける。ダメージを受ける度に相手に与えるダメージが5%上昇する特性がある。

 俺はナイトとリアルモンクの説明を見ずに壊れだと思うアタッカーを選択した。ちなみにリアルモンクは回復クラスって意味らしい。

「ゲーム開始まで5、4、3、2……」

「さて! ようやく始まるな!」

 ゲーム空間でこのソフトを教えてくれた友達に会える。そう思うと気持ちを高鳴ってくる。

「1、行ってらっしゃいませ」


 画面が暗転した直後、ワクワク感を撤回したくなる現実が俺を襲う。

「うわあああああ!!」


 風が俺の全身を掠めていくことに気づく。足が地面を踏みしめれず、体のバランスを崩して空を掻いた。

 視界の端っこには海も見える。

 絶景を眺めている暇なんて、当然あるわけがない!

「ああああ……」


 大量の空気が入り、リスのように膨らむ口内。

 多分これは……絶賛大空にダイブ中ということだ! パラシュート降下している!


 ――パラシュート無しで。

「無理だろこれ」

 いや待てよ、これは初見殺しでデスペナルティーを教える為のスカイダイビングなんじゃないか!?

 もしこれを突破できる方法が無かったらそういう事になる。本当に無かったのだろうか。




 段々街に近づき、造形が見え始める所まで降下した辺りで考えあぐねた。風が目にしみやがる、次はサングラスをキャラメイクで付けよう。

 ……もしかして。


 ふと、一つの生存方法が教えられている事に気づく。これは生優しいチュートリアルの負けイベントなんかじゃない。




『パラシュートがあったああああああ!!!』




 最強の街、アステガで龍樹りゅうきの悲鳴が響いたのだった。






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