誰も火力をやりたがらないVRMMO

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第2話 余計な煽り

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「死にたくないいい!!」

 ……。

 …………。

 ………………気がつくと俺は、自分を神視点で見下ろしていた。

 いや、自分だったはずのソレは赤く染まり、モザイク処理がなされている。そこから出てくるGAME OVERの文字も赤い。

 死んだ状態をスクリーンショットしたような画面は気持ち悪く、ヘッドギアを取ろうと頭を手で触るがヘッドギアの感触はない。髪を乱雑に掻いているだけだった。

 冷静になってみると、ここはゲームの中だ。ヘッドギアなんて外せるわけがないよな。

 浮き上がるログアウトの文字を選択すると視界が切り替わり、見慣れた天井を映し出す。

 俺はヘッドギアをすぐさま脱いだ。



「はぁ……」

 深呼吸しながら胸に手を当てる。心臓の鼓動が手のひらいっぱいに伝わった、現実はちゃんと生きてる。こんなにビビる事はこのゲームだとこれが最後だろう。そうであって欲しい。


 汗をかいたのか、体がベタつく。だがそんな事よりこのゲームをパラシュートで攻略したかった。

 再びヘッドギアを付ける、次回起動はタイトル画面が現れるらしい。

 デカデカと【Armaアルマ.Lethalリーサル.Onlineオンライン】というイケイケな文字が画面上部に現れた、俺は見向きもせずはじめからを選択する。

 白い空間にウィンドウ、手馴れた操作で決めていく。服装はファンタジーチックに革の衣服に変え、パラシュートを付ける。

 背中だけ現代的だな。

 クラスも選択し、パパっと画面が暗転するとパラシュートを背負ってダイブしている状態に変わる。

 パラシュートがあるだけで身の安全という安心感があった。女神の手の中に居るような、自然と焦りは出ない。


 ふと、落下ポジションが最初に降りた場所と違うことに気づく。真下は森の中、ランダムだとするなら火山は確実に殺されるポイントだろう。

「この辺でいいか」

 俺は意気揚々とパラシュートのヒモを引っ張る。パラシュートは開かない。

 ……いや、固くて引っ張れない。

「あれ?」

 どんなに引っ張ってもびくともしない、壊れたのか? いや、ゲームなのにそんなこと有り得てたまるかよ!


 俺の視界に大きく映り始める木々、焦りを感じた俺は全力で紐を引っ張る。引き抜けた時、反動で体が一回転してしまった。

「よし! 開け!」

 だが、いくら待ってもパラシュートは開かれない。


 ヒモを見てみると、ちぎれているだけだった。


「クソがああああ!!」

 ウィンドウに「このパラシュートは見た目です」という文字が現れ、俺は地面に叩きつけられた。


 ……その衝撃で見るも無残に飛び散り、辺りが血で染まった草原を見下ろしていた。

 ふと、GAME OVERの文字の下にある一言が書き加えられていることに気づく。
 
【どう思う? パラシュートは見た目だったけど、どう思う?】

「は?」

 こんなピンク色の文字は、最初なかったぞ。どういう嫌がらせなんだ。


 考えあぐねていると文字が消え、新しい文字が薄く浮かび始めた。

【ねえねえ、パラシュート開かなかった時どんな気持ち?www】


「……」

 俺はそっとログアウトの文字を押した。







「煽りすぎだろうが!」

 俺はログアウトの処理がされるやいなや、即座にヘッドギアを外し、枕に乗せると必殺のチョップを構える!

「でぃやああああ!!」

 ふんっと手刀を振り下ろしそうになった所で我に返った。

 危ない、この機器って最新じゃないとはいえ、VR装置だから高いんだっけ。


「はあ」

 ため息が漏れる。攻略出来ると思ったのに、また詰んでしまった。しかも煽られた。


 攻略サイトを見てみるか……いや、やめとこう。自分でクリアしないとダメだ。

 こんな煽り文に負けたくないのもあった。

「さすがに説明書くらいはいいか」

 パッケージから説明書を抜き取り、目次からチュートリアルについて探す。そんなページはある訳がなかった。

 利用規約とかプライバシーポリシー程度しかなく、説明書とは思えない内容だ。こんな説明書あっていいのか。


 それでもパラパラめくって流し読みし、目次に戻る。よく見てみると最後のページ数と一緒に「メンテナンスについて」と書かれていた。

 それとなくメンテナンスの項目を開いてみる。



 メンテナンス中はログインシステム、ログアウトシステムを一時制限させていただきます。メンテナンス時刻までにログインしていた場合、申し訳ありませんがメンテナンス終了まで通常のVR世界をご堪能頂きますようご協力お願いいたします。



 酷い内容だ、簡単に言うと「メンテまでゲームしてたら、メンテ終わるまでログアウト出来ないからそこんところよろしく」って事だろうな。


 これについては理由があるらしく、VRゲームは脳と密接に近づき、情報をやり取りするらしい。何らかの原因でVRヘッドギアを引き抜いてログアウトした時、脳ダメージ保護システムがヘッドギアから作動するようになっているが、このシステム自体はゲームソフト側から操作出来なくなっているんだとか。友達が力説していた。


 ちなみにメンテナンス中はヘッドギアを引き抜けない様に固定具が閉まる。と書いている、よっぽどログアウトするとまずいことが起きるみたいだ。

「色々あるんだな」

 俺は気を取り直してヘッドギアを装着した。適当に性別を女にしてパラシュートも外し、クラスをナースにして始める。ナースっていうのはリアルモンクの女版だ。




 パラシュート無しの降下中、俺は胸に手を当てる。

「やっぱり胸ってある」

 風が俺の長くなった髪を撫でた、真下はまっさらな青い海。どうせ死ぬだろう。

 手を広げ、風を最大限に受け止めて海に着地する。


 爆発するような音と共に、俺の体が沈んでからゆっくり浮き上がり始める。よくよく考えてみると、生存している事に気づく。

 生きてる! でも女か。

 現象に気づいた俺は、水面に上がろうと手で水を掻く。だが服が水を吸っているのか非常に重たい、このままじゃ浮き上がる前に息が切れる。

 この際仕方ねえ!

 下着以外を脱ぎ捨て、必死にもがくこと数秒。水面に顔を出す事が出来た。息を大きく吸い、近くの砂浜に向かって泳いでいく。

 女の下着姿だが幸いにも人は居る地域ではないらしい。暫くクロールしていると砂の地面に上陸出来た。


 こんな抜け道があるんだな。


「でも女だし、これからどうするか」

 下着だからまずい。羞恥心がふつふつ上がっていく内に、俺を太陽から隠す様に影が出来ている事に気づく。

「なんだ?」

 振り返ってみると、パッケージの青いドラゴンが俺を見つめていた。思ったよりも大きく、見下ろされている感じだ。


 もしかして「街に連れてってやろう」とか! そんな展開が!

「フォアアアアア!!!」

「ぎゃあああ!!」

 ある訳もなく、俺はドラゴンの朝食に成り果てた。

 俺の体をガムのように嗜むドラゴンのムービーを見ながら、デカデカと出てくるGAME OVERの文字に舌打ちをかます。

 ログアウトとかつづきからのボタンはまだか?

 あの煽り文を見るのはもうコリゴリなんだが……。

 そんな予感とは裏腹にうっすら文字が浮き上がる。


【ドラゴンにモグモグされるのどんな気持ちwww】


「殺すぞ! 開発したの誰だ!」

 イラつく文字に全力で拳を振るがカスリもしない、殺意が湧く。

 しかもボイスまで再生されやがる、声から言うと幼い子供のような無邪気な声だった。でも草生やしてるのは納得いかない。

【お兄ちゃん弱いね……ゲームやめたら?】

「そんな声で言われると心に来るからマジでやめろ」

 俺はようやく現れるログアウトの文字を押した。





「クソが……」

 ヘッドギアを引き抜いて、深く考え直す。やはり、現実で考えないと何も浮かばない。


 落下地点も重要だ、ある程度の着地ずらしは出来るから海の近くが最低条件。そして街の近くじゃないとドラゴンとかに食われる。

 初心者向けの街が良いよな、チャットで友達を呼べば別にどうでもいいけど。海だけは絶対だ、海じゃなかったらリセットしよう。


「案外、神ゲーかもな」

 ヘッドギアを付け、はじめからリスタート。


 降下したポイントは火山の真下だった、辺りに海は見えない。

 おまけにピンク色の文字で追撃される。

【お兄ちゃんざまあ】


『前言撤回だ! 絶対突破してやめてやるからな!』







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