誰も火力をやりたがらないVRMMO

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第3話 降下成功

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 その後は運良く海に降下。偶然にも街があり、海の中で服を脱ぎ捨てて上陸した。

 石で作られた地面はとても歩きやすく、辺りの花壇には綺麗なチューリップが植えられている。割と発展している街のようだ。



 しばらく歩いていると、女性の姿が見えた。急いで駆け寄り、声をかけてみる。きっと、NPCだろう。

 その証拠に女性Eという名前が付いている。


「すみません、この街ってなんて言うところですか?」

 振り向いた女性は俺に気づくと、顔を赤らめて叫ぶ!

「きゃー! 変態がいるぅ!」

「お姉さん大丈夫ですか! 俺に任せてください!」

 女性の近くに変態がいるらしい、ランダムイベントの類なんだろうな~。そうだと言ってくれ。

 俺は変態の情報を伺ってみた。

「お、お前じゃああ!」


 やっぱりな。

 変態の犯人はブリーフ一丁の俺だった。


 瞬く間に看守に捕まり、画面が暗転。

 ……そこには体育座りでうずくまる俺が映っていた。いつの間にか神視点になり、性欲を持て余すという赤い文字が浮かぶ。

「別に持て余してたわけじゃ……」

 俺の言い訳の前にピンク色のメッセージが立ち塞がった。

【お兄ちゃんの将来みたい】

「そんなことよりはじめからゲームをさせろよ」

 一向に選択系の文字が現れず、ピンク色の文字が消えて新たな煽り文が浮かび上がる。


【この露出狂めが!】


「とうとう言いやがったな……子供の癖にどうしてそんな言葉を……」

 ようやく現れたはじめからを選択し、キャラメイク画面で考える。

「攻略手順に水を吸わない服を追加……っと」

 服を着ていないと、露出狂という前科をつけられる。つまり、カジュアルなジーパンとかは水を吸いまくるから、海の中で脱ぎ捨てざるをえない服って時点でアウトだろうな。

 徹底して細かいところがリアルだなぁ。あの無邪気な煽り文もあるし、やる気を削ぐには充分すぎる。



 そんなこんなで俺は服に関して考えあぐねていた。キャラメイク画面で水を吸いそうにない服を見た目と偏見で分けていく。

「もしかして、水を吸わないならなんでもいいんじゃないか……?」

 例えば、男で網タイツのランニングシャツという服を選択した場合だ。本当の意味での「変態」として看守に捕まるのかどうか。

 案外行けるとか……いや、男としての尊厳が許さない以前に煽り文のネタにされそうだから短パンにしよう。

 服とクラスを選択し、降下する。街のど真ん中だったので海になるまでGAME OVERになっては煽り文と会話する。


【ところがどっこい火山だよ! これが、火山!】

【ぺちゃんこ……! 圧倒的ぺちゃんこっ! お兄ちゃんは「負けを素直に受け入れる事が敗者の誇り……!」と言って譲らない……なんで?】

【なんで……こんな……こんな理不尽な事が俺の身ばかりにって思ってきたでしょ? 大丈夫?】



「うるさい、気が散る。一瞬の油断が命取り」というと、ギャラリーの煽り文はだま……らなかった。


 地面に叩きつけられる事、数しれず。気がつくと煽り文が哀れみの言葉を掛けてくれるようになっていた。

 ランダム降下に不安をボヤき始めた辺で、ようやく海のポイントで始まった。なおかつ近くに町が見える位置、さっきとは違う街らしい。

 降下に慣れてきた俺は、体を傾けて着水ポイントをずらす。出来るだけ陸に近い方が楽だからだ。

 ザップーンっと全身を柔らかい水に叩きつけられるのは慣れないが、体の軽さを確認する。大丈夫だ、今はなんの問題も起きていない。
 
 水上に浮き、今度は平泳ぎで陸を目指す。息継ぎは現実だと得意ではないが、ゲームだと何らかの補正が掛かっているのか、割と泳げる。



 びしょ濡れで街に上がり、辺りを見渡した。港と言った所か、ボートなどが括りつけられている。

 石垣の壁がファンタジーさを醸し出す。


 問題はこのあとどうするべきかなんだが、問題ないだろう。NPCに聞けばいい。

 近くの男性Kに声をかける事にした。


「すみません」

「どうしました?」

 会話が通じた……! クリアだな。

 もうやり直さなくていいんだ。そう思うと、不思議な事に足が軽くなる。

「ここに来たばっかりなんですが、何処に行けばいいでしょうか」

「冒険者の方でしたか。向こうの居酒屋に色んな人が集まりますよ」




 お礼を言って言われた方向を歩く。石の階段を上ってしばらくすると、レンガ造りの街に出た。その中に、一際大きな木の家に目が行く。

 看板が立て掛けられていて「居酒屋」と書かれている。

「どう見てもここだな」

 入ってみると、木造のテーブルを囲って小さな樽のコップを使い、様々な色の飲み物を煽る人達で溢れかえっていた。

 座る場所は満員なのか見当たらない。カウンターも店主と会話する人が陣取っていて、隅っこに座らないといけないだろう。

 びしょ濡れの俺にとっては、かなり居心地が悪い。どんな人でも良い、このゲームのユーザーはいないのか。

 グルっと一周して見回すと、ある女性に目がつく。カウンターの一席に足を組んで座り、綺麗なグラスでワインのような液体を上品に嗜む女性に。

 赤い髪だから目立つのもあるが、名前が女性Aなどではなく、ヴァイパーという名前が頭上についていた。

 丁寧に、クラス:アタッカーなんて文字もある。声をかけないわけがない、確実にユーザーだ。

「すみません」

「なんだい……ってNPCが話しかけるなんて珍しいわね」

「いえ、NPCじゃないです」

「という事は新規ユーザーくん?」

 コクコクと頷き、びしょ濡れのズボンを見てもらった。

 女性はへぇーとか言いながら足を組み直す。


「で、なんか用? 初心者には興味ないわよ」

「友達を呼ぶにはどうすればいいんですか?」

「そういう事ね……これあげる。これを持ってあっちの電話ボックスを使えばいいよ」

 硬貨を6枚、俺に握らせると女性はしっしと仕草で追い払った。たしかに外に出てみると、居酒屋のそばに電話ボックスがある。

 昔の黒電話の様に、番号の書かれた円盤を回して入力するタイプのようだ。

「これか」


 友達は言っていた、6桁の番号を。それをこの電話ボックスに入力すればいいんだな。

 俺は肝心の電話ボックスを教えてくれなかった友達を心底恨んだ。


 早速コインを4枚入れ、番号を打ち込む。受話器を耳に当てると聞きなれた声が聞こえはじめた。

 同時に切り裂く音とか獣の鳴き声が聞こえる。

「もしもし、こちらカズ」

 こいつは俺の友達でこのクソゲーに誘った酷い奴。中山なかやま和哉かずやって言うんだが、ゲーム内ではカズらしい。

「俺だよ俺、龍樹だよ」

「よくやれたな」

「話は会ってからだ、迎えに来てくれ」

「今どこだ?」

「分からん」

「聞いてこい」

 ガチャっと通話は切られた。コインが2枚帰ってくる。つまり、今4枚ということ。

 早速、居酒屋に戻ってさっきの女性に声を掛けた。この町の名前を聞いてみると、気持ち悪いくらいニヤニヤされた。



 コインを4枚入れ、番号を打ち込む。

「コチラカズ、聞いてきたか」

「アステガらしい。迎え待ってるぞ」

「は? そこはエンドコンテンツだ。俺はまだ行けない、敵が強すぎる」


 ガチャっと通話が切られた。コインが1枚帰ってくる。


「どうやって戻りゃいいんだよ……」



 コインは残り1枚。受話器を置いた時、居酒屋のドアがカランカランと鳴った。









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