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西さんとの出会い
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僕と西さんは出会って五年程になる。
西さんが海外の研究所を辞めて、この土地の大学に勤め始めて一年程の頃だった。
ある時、西さんが僕の店にやってきた。僕がお世話になっているバーのマスターの紹介だった。
スコッチが大好きで、僕のオススメや興味があるものを上限なく飲んでいた。
その時の西さんは、身長はあるが太っていて、大分頭もきているし、ダブダブのチノパンに、これまたダブダブのチェックのシャツとまったく冴えないことこのうえない。
そんな西さんが変わり始めたのは、服飾関係の仕事についている女性に恋をしたからだ。その女性とは西さんの行きつけのバーで出会った。
西さんには、人生の師匠と慕うマスターが二人いる。一人は僕の店を紹介してくれたマスター。もう一人は、西さんが教授に初めて連れていってもらったバーのマスターで、女性とはそこで出会った。
何とかその女性とお近づきになりたいと、西さんはそのバーのマスターにアドバイスを求めた。
マスターは快く引き受けた。
先ずは服装。値は張っても、良いものを長く着なさいと。マスター流のコーディネートも含め、西さんはマスターの教え通りの服を買っていく。
次は食事。マナーはもちろん、料理と酒の組み合わせや、連れてく店選び。和洋中を問わず、マスターの知る限りを叩きこんでいく。マスターも燃えていたのかもしれない。
そして平行してダイエット。西さんは、毎日縄跳び三十分、腕立て伏せ百回を続けた。休むことなく。日々結果のどうなるか分からない研究を黙々と続ける忍耐力と集中力のなせる技か。
そして、西さんは生まれ変わった。元々身長もあったし、痩せて引き締まった身体に、それに似合う服。若干猫背気味なのと、大分きてる頭を差し引いても、いや、その頭も味になり、渋い大人の男風に。
その甲斐があってか、西さんと女性は二人で食事に行くまでの仲になっていた。たまにうちに来ては、嬉しそうに経過を話してくれた。
でも、それだけだった。西さんの口からは、段々女性の話しは聞こえなくなっていった。ひょっとしたら、一回くらいは男女の関係になったかもしれないが、こちらから聞くこともない。
まあ、女性とは上手くいかなかったけど、良い風に変われたんだから、とりあえずはね。とは話が終わらない。
西さんは、急激に変わる代償に失ったものがあった。そう、金である。
良く考えなくても当たり前の話で、普通の成人男性が、使える範囲の金でコツコツと年数をかけて身につけることを、四十前の西さんは、取り戻すかのように急激に身につけた。
それだけでなく、維持費もあった。変わったことで相対的にかかる維持費。落としたくないから、多少嵩むのは分からなくもないが、西さんのそれは、僕の感覚したらありえないことだっだ。
維持費とは主に服にかかる費用だが、痩せて色々な着こなしが出来るようになったことが楽しいのは分からなくもないが、余りもかけすぎだった。
四万円のジーンズ、二万円のシャツ、七万円のジャケット、二十万円のオーダースーツ。それをポンポンと買っていく。上を見ればきりがないが、僕にはその感覚が理解出来なかった。
西さんは買う度に僕に見せに来た。決して自分からは言わない。僕に言わせたいのだった。
僕はいつも素っ気なく、しかたなく、
「また買ったんですか?色味が前と被ってるから、違うの買ったら良かったのに」
と突っ込むしかなかった。
西さんの海外研究所勤務時代に蓄えていた金はみるみる減っていた。
人生の師匠はそんなこと言ってないでしょ?良いものを長くじゃなかったの?僕が言っても聞かない、そんな現状が続いて今に至る。
西さんが海外の研究所を辞めて、この土地の大学に勤め始めて一年程の頃だった。
ある時、西さんが僕の店にやってきた。僕がお世話になっているバーのマスターの紹介だった。
スコッチが大好きで、僕のオススメや興味があるものを上限なく飲んでいた。
その時の西さんは、身長はあるが太っていて、大分頭もきているし、ダブダブのチノパンに、これまたダブダブのチェックのシャツとまったく冴えないことこのうえない。
そんな西さんが変わり始めたのは、服飾関係の仕事についている女性に恋をしたからだ。その女性とは西さんの行きつけのバーで出会った。
西さんには、人生の師匠と慕うマスターが二人いる。一人は僕の店を紹介してくれたマスター。もう一人は、西さんが教授に初めて連れていってもらったバーのマスターで、女性とはそこで出会った。
何とかその女性とお近づきになりたいと、西さんはそのバーのマスターにアドバイスを求めた。
マスターは快く引き受けた。
先ずは服装。値は張っても、良いものを長く着なさいと。マスター流のコーディネートも含め、西さんはマスターの教え通りの服を買っていく。
次は食事。マナーはもちろん、料理と酒の組み合わせや、連れてく店選び。和洋中を問わず、マスターの知る限りを叩きこんでいく。マスターも燃えていたのかもしれない。
そして平行してダイエット。西さんは、毎日縄跳び三十分、腕立て伏せ百回を続けた。休むことなく。日々結果のどうなるか分からない研究を黙々と続ける忍耐力と集中力のなせる技か。
そして、西さんは生まれ変わった。元々身長もあったし、痩せて引き締まった身体に、それに似合う服。若干猫背気味なのと、大分きてる頭を差し引いても、いや、その頭も味になり、渋い大人の男風に。
その甲斐があってか、西さんと女性は二人で食事に行くまでの仲になっていた。たまにうちに来ては、嬉しそうに経過を話してくれた。
でも、それだけだった。西さんの口からは、段々女性の話しは聞こえなくなっていった。ひょっとしたら、一回くらいは男女の関係になったかもしれないが、こちらから聞くこともない。
まあ、女性とは上手くいかなかったけど、良い風に変われたんだから、とりあえずはね。とは話が終わらない。
西さんは、急激に変わる代償に失ったものがあった。そう、金である。
良く考えなくても当たり前の話で、普通の成人男性が、使える範囲の金でコツコツと年数をかけて身につけることを、四十前の西さんは、取り戻すかのように急激に身につけた。
それだけでなく、維持費もあった。変わったことで相対的にかかる維持費。落としたくないから、多少嵩むのは分からなくもないが、西さんのそれは、僕の感覚したらありえないことだっだ。
維持費とは主に服にかかる費用だが、痩せて色々な着こなしが出来るようになったことが楽しいのは分からなくもないが、余りもかけすぎだった。
四万円のジーンズ、二万円のシャツ、七万円のジャケット、二十万円のオーダースーツ。それをポンポンと買っていく。上を見ればきりがないが、僕にはその感覚が理解出来なかった。
西さんは買う度に僕に見せに来た。決して自分からは言わない。僕に言わせたいのだった。
僕はいつも素っ気なく、しかたなく、
「また買ったんですか?色味が前と被ってるから、違うの買ったら良かったのに」
と突っ込むしかなかった。
西さんの海外研究所勤務時代に蓄えていた金はみるみる減っていた。
人生の師匠はそんなこと言ってないでしょ?良いものを長くじゃなかったの?僕が言っても聞かない、そんな現状が続いて今に至る。
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