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さあ、決戦の日だ!続き
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トイレは、店の入口を挟んで、テーブル席の反対にあった。ドアを開けると鏡と手洗いがあり、中で男女別れていた。
用をたし、手を洗っていると、斉藤さんがドアを開けてきた。
突然二人きりになるチャンス到来。だが、僕は迷った。今このチャンスを逃さずに会話をするべきなのか。急ぎなら大した会話も出来ないし、まさか斉藤さんが用をたすのをこの場で待つわけにもいかないし。
結局ここは諦めて、挨拶程度で次に賭けようと斉藤さんに声をかけようとした瞬間、向こうから話かけてきた。
「ちょっと話そうよ」
もちろんいいですとも!
内心小躍りしながら話しかけようとしたら、またしても斉藤さんから話し出す。
「ねえ、大分気を使ってるでしょ? 」
僕は黙ってしまった。この流れはいったい?
斉藤さんは更に続けた。
「私達にもそうだけど、そっちがわにもね。アンちゃんも好きにしていいんだよ。私達も歳なりに、それなりに経験豊富なんだから」
斉藤さんの優しそうな笑顔とアンちゃんと呼ばれた嬉しさに、時間よ、流れてばっかりじゃなくて、たまには止まってみろよと心の中で呟く。
「別に気を使ってる訳じゃないけど、見ての通り、両隣があれだから」
斉藤さんはクスッと笑って僕の顔を見る。
せっかく二人きりなったし、早いが僕も本音をぶつけてみることにした。
「斉藤さんは多分、前に3Bとつきあってたでしょ?全部制覇したかは分からないけど」
僕のちょっと茶化した物言いに、斉藤さんは笑顔で答えてくれた。
「何で分かったの? バンドマンはないけどね」
「やっぱりそうだよね」
僕は自慢気に言った。
「本当に何で分かったの?雰囲気? 」
僕は答える。
「そうだね。雰囲気もそうだし、僕が一目惚れしたからかな。きっとそういう業種にモテるだろうし、斉藤さんも嫌いじゃないでしょ? 」
「当たり。嫌いじゃないよ。アンちゃんのことも今結構気にいってるかも」
「じゃあ、僕があなたのことを気にいってるのも気がついたでしょ? だから話に来た。どうでしょうか?この読みは? 」
「すごい! 当たってるよ。アンちゃん何者? 」
僕は当たりついでに、あんまり言いたくないけど、これも正解だろうと思うことを投げてみた。
まあ、話してて何となく気がついてたことを。
「そして斉藤さんは、もう卒業しました。どう? これも正解でしょ? 」
斉藤さんは、ちょっと寂しく笑って答えてくれた。
「本当にすごいね。それも正解だよ」
少し間を置き、続ける。
「疲れたんだよね。やっぱり、アンちゃんもそうだけど、そういう職業の人には魅力をかんじるよね。だけどさ、なんか安定が欲しくなってね」
僕らの職業のネックである。例えば身体を壊した時の保証がない。保険があるにはあるが、微々たるものだし、職業柄中々潰しもきかない。雇われになる手もあるが、中途半端な歳まで頑張れてしまうと、その雇われの口すら狭き門になる。若い方が体力も勢いもあるし、何より給料が安くてすむ。雇用者がどちらを選ぶかは明らかである。もちろん例外もあるが。
「斉藤さんはいっぱい振り回されたんだね。大変だったでしょ? 」
「散々苦労したわよ。もうお金のない男はこりごり」
斉藤さんはあきれ顔で言った。
「だから話に来たのよ。アンちゃんなら
私の気持ちに気づいて、止めてくれると思って」
僕もあきれ顔で返す。
「ねえ、普通止めないよね。絶対いただくでしょ? 」
「大丈夫。アンちゃんなら絶対止めてくれると思ったから」
まったく身勝手な女だ。でも、そう言われたら止めるしかないよね。
「斉藤さん、巷でよくいうでしょ。3Bとはつきあうな。例外もいっぱいいるんだけど、僕ではなかったということで、御卒業おめでとうございます」
斉藤さんははにかんで答える。
「ありがとう、アンちゃん。アンちゃんは優しいから言ってくれると思ったよ」
はい、はい、どういたしまして。
僕は悔し紛れに言う。
「まあ、卒業したといっても同窓生なんだから、いつでも帰ってきなよ。待ってるよ。それに進学かもしれないしね」
「絶対やだ」
僕は斉藤さんにトドメの一撃をくらった。
用をたし、手を洗っていると、斉藤さんがドアを開けてきた。
突然二人きりになるチャンス到来。だが、僕は迷った。今このチャンスを逃さずに会話をするべきなのか。急ぎなら大した会話も出来ないし、まさか斉藤さんが用をたすのをこの場で待つわけにもいかないし。
結局ここは諦めて、挨拶程度で次に賭けようと斉藤さんに声をかけようとした瞬間、向こうから話かけてきた。
「ちょっと話そうよ」
もちろんいいですとも!
内心小躍りしながら話しかけようとしたら、またしても斉藤さんから話し出す。
「ねえ、大分気を使ってるでしょ? 」
僕は黙ってしまった。この流れはいったい?
斉藤さんは更に続けた。
「私達にもそうだけど、そっちがわにもね。アンちゃんも好きにしていいんだよ。私達も歳なりに、それなりに経験豊富なんだから」
斉藤さんの優しそうな笑顔とアンちゃんと呼ばれた嬉しさに、時間よ、流れてばっかりじゃなくて、たまには止まってみろよと心の中で呟く。
「別に気を使ってる訳じゃないけど、見ての通り、両隣があれだから」
斉藤さんはクスッと笑って僕の顔を見る。
せっかく二人きりなったし、早いが僕も本音をぶつけてみることにした。
「斉藤さんは多分、前に3Bとつきあってたでしょ?全部制覇したかは分からないけど」
僕のちょっと茶化した物言いに、斉藤さんは笑顔で答えてくれた。
「何で分かったの? バンドマンはないけどね」
「やっぱりそうだよね」
僕は自慢気に言った。
「本当に何で分かったの?雰囲気? 」
僕は答える。
「そうだね。雰囲気もそうだし、僕が一目惚れしたからかな。きっとそういう業種にモテるだろうし、斉藤さんも嫌いじゃないでしょ? 」
「当たり。嫌いじゃないよ。アンちゃんのことも今結構気にいってるかも」
「じゃあ、僕があなたのことを気にいってるのも気がついたでしょ? だから話に来た。どうでしょうか?この読みは? 」
「すごい! 当たってるよ。アンちゃん何者? 」
僕は当たりついでに、あんまり言いたくないけど、これも正解だろうと思うことを投げてみた。
まあ、話してて何となく気がついてたことを。
「そして斉藤さんは、もう卒業しました。どう? これも正解でしょ? 」
斉藤さんは、ちょっと寂しく笑って答えてくれた。
「本当にすごいね。それも正解だよ」
少し間を置き、続ける。
「疲れたんだよね。やっぱり、アンちゃんもそうだけど、そういう職業の人には魅力をかんじるよね。だけどさ、なんか安定が欲しくなってね」
僕らの職業のネックである。例えば身体を壊した時の保証がない。保険があるにはあるが、微々たるものだし、職業柄中々潰しもきかない。雇われになる手もあるが、中途半端な歳まで頑張れてしまうと、その雇われの口すら狭き門になる。若い方が体力も勢いもあるし、何より給料が安くてすむ。雇用者がどちらを選ぶかは明らかである。もちろん例外もあるが。
「斉藤さんはいっぱい振り回されたんだね。大変だったでしょ? 」
「散々苦労したわよ。もうお金のない男はこりごり」
斉藤さんはあきれ顔で言った。
「だから話に来たのよ。アンちゃんなら
私の気持ちに気づいて、止めてくれると思って」
僕もあきれ顔で返す。
「ねえ、普通止めないよね。絶対いただくでしょ? 」
「大丈夫。アンちゃんなら絶対止めてくれると思ったから」
まったく身勝手な女だ。でも、そう言われたら止めるしかないよね。
「斉藤さん、巷でよくいうでしょ。3Bとはつきあうな。例外もいっぱいいるんだけど、僕ではなかったということで、御卒業おめでとうございます」
斉藤さんははにかんで答える。
「ありがとう、アンちゃん。アンちゃんは優しいから言ってくれると思ったよ」
はい、はい、どういたしまして。
僕は悔し紛れに言う。
「まあ、卒業したといっても同窓生なんだから、いつでも帰ってきなよ。待ってるよ。それに進学かもしれないしね」
「絶対やだ」
僕は斉藤さんにトドメの一撃をくらった。
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