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7.寮での会話
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その日の夜。
私は寮の自室で鏡台の前に座り、リーリルに髪を梳かしてもらいながら、クラヴィスとの会話をリーリルに伝えた。
リーリルはその話を聞くと、嬉しそうに「クラヴィス様は見る目がありますね……!」と話している。
「あら、リーリル。そんなに簡単な話なのかしら?」
「お嬢様の噂を信じずに話してくれるだけで十分です。それでお嬢様は何と答えたのですか?」
「クラヴィスは『助けが欲しい時はいつでも言って』とだけ言ってテラスを出ていったわ。味方になってくれたのかはまだ分からないけれど……」
「お嬢様は魅力的ですもの。そのうちクラヴィス様もお嬢様の魅力に気が付きますわ。それに私がもっと気になるのは……」
リーリルが私の髪を梳かしていた手を止めた。
「お嬢様。実際に学園での生活を過ごしてみて、辛くはないですか?」
「リーリル……」
「クロルから聞いています。直接的に攻撃してくる者はいないが、聞こえるように悪口を言われるのは日常茶飯事だと」
リーリルが顔を顰めた。
「相手に聞こえるように悪口を言うなど、直接攻撃しているのと同じですわ! しかし、クロルが悪口を言う者を注意しようとしたら、お嬢様が毎回のように止めるのだとも聞いています」
私は鏡を向いていた身体をリーリルの方に向けるように振り返る。
「ねぇ、リーリル。攻撃を最大限防御……いや、やり返す時があったとする。どんな時が一番良いと思う?」
「……??」
「私はね、相手が一番力を入れている時にその攻撃をやり返せるのならば、それが最も効果的だと思うわ」
「しかし……!それでは、お嬢様の心が待ちません!」
「そうね。でも、私は思うの。『国一番の大悪女』と呼ばれると言うことは、それだけ私が国民に嫌われているということ。それだけ私がユーキス国の民を救ったと言うことだわ。それって、とても誇らしいことだと思わない?」
リーリルの目が少しだけ潤んだのが分かった。
「お嬢様、鏡の方を向いて下さい」
「??」
私はリーリルの言葉の意味が分からないまま、もう一度鏡台に向き直る。
すると、リーリルが私の髪をもう一度梳かし始めた。
「あら、もう髪は梳かし終わったのではないの?」
「……いつもより念入りに梳かします。明日の学園も美しい髪にするので、自信を持ってお嬢様らしくいて下さいませ」
「ふふ、ありがとう」
髪を梳かし終わると、リーリルが私の隣で膝を着いた。
「お嬢様、それと報告が一つ」
「何かあったの?」
「本日、カートル公爵家から婚約記念パーティーの招待状が届いていました」
「カートル公爵家といえば、確か私より二歳上のご令嬢が居たわよね」
「はい、その方がミクリード侯爵家の次男と婚約を結んだようです」
「それは欠席するわけには行かないわね」
私は幼い頃以降パーティに参加したことはない。
身体が弱かったこともあったが、元気になった後すぐに「嫌われ者」になってしまったから。
屋敷の外に出るわけには行かなかった。
状況が変わった後も、初めて参加するパーティーを見定めていた。
「リーリル、パーティー用のドレスを用意しておいて。それと、クロルにも参加することを伝えて」
「分かりました」
「それと、婚約記念パーティーまでダンスレッスンとマナーの勉強をもっと増やしたいわ」
「お嬢様はもう完璧では……」
「あら、王女たるもの国一番の淑女でないといけないわ」
私は胸を張って、子供っぽく笑ってみせた。
「ふふ、分かりましたわ。お嬢様。では、私もお嬢様に一番似合うドレスを屋敷から送ってもらいます。それに当日のヘアセットも期待していて下さいませ。国一番の淑女に相応しい美しい髪型にしてみせますわ」
私とリーリルは顔を見合わせて、笑い合う。
この時間が幸せすぎるから……大切すぎるから、私は明日も頑張ろうと思えるのだ。
私は寮の自室で鏡台の前に座り、リーリルに髪を梳かしてもらいながら、クラヴィスとの会話をリーリルに伝えた。
リーリルはその話を聞くと、嬉しそうに「クラヴィス様は見る目がありますね……!」と話している。
「あら、リーリル。そんなに簡単な話なのかしら?」
「お嬢様の噂を信じずに話してくれるだけで十分です。それでお嬢様は何と答えたのですか?」
「クラヴィスは『助けが欲しい時はいつでも言って』とだけ言ってテラスを出ていったわ。味方になってくれたのかはまだ分からないけれど……」
「お嬢様は魅力的ですもの。そのうちクラヴィス様もお嬢様の魅力に気が付きますわ。それに私がもっと気になるのは……」
リーリルが私の髪を梳かしていた手を止めた。
「お嬢様。実際に学園での生活を過ごしてみて、辛くはないですか?」
「リーリル……」
「クロルから聞いています。直接的に攻撃してくる者はいないが、聞こえるように悪口を言われるのは日常茶飯事だと」
リーリルが顔を顰めた。
「相手に聞こえるように悪口を言うなど、直接攻撃しているのと同じですわ! しかし、クロルが悪口を言う者を注意しようとしたら、お嬢様が毎回のように止めるのだとも聞いています」
私は鏡を向いていた身体をリーリルの方に向けるように振り返る。
「ねぇ、リーリル。攻撃を最大限防御……いや、やり返す時があったとする。どんな時が一番良いと思う?」
「……??」
「私はね、相手が一番力を入れている時にその攻撃をやり返せるのならば、それが最も効果的だと思うわ」
「しかし……!それでは、お嬢様の心が待ちません!」
「そうね。でも、私は思うの。『国一番の大悪女』と呼ばれると言うことは、それだけ私が国民に嫌われているということ。それだけ私がユーキス国の民を救ったと言うことだわ。それって、とても誇らしいことだと思わない?」
リーリルの目が少しだけ潤んだのが分かった。
「お嬢様、鏡の方を向いて下さい」
「??」
私はリーリルの言葉の意味が分からないまま、もう一度鏡台に向き直る。
すると、リーリルが私の髪をもう一度梳かし始めた。
「あら、もう髪は梳かし終わったのではないの?」
「……いつもより念入りに梳かします。明日の学園も美しい髪にするので、自信を持ってお嬢様らしくいて下さいませ」
「ふふ、ありがとう」
髪を梳かし終わると、リーリルが私の隣で膝を着いた。
「お嬢様、それと報告が一つ」
「何かあったの?」
「本日、カートル公爵家から婚約記念パーティーの招待状が届いていました」
「カートル公爵家といえば、確か私より二歳上のご令嬢が居たわよね」
「はい、その方がミクリード侯爵家の次男と婚約を結んだようです」
「それは欠席するわけには行かないわね」
私は幼い頃以降パーティに参加したことはない。
身体が弱かったこともあったが、元気になった後すぐに「嫌われ者」になってしまったから。
屋敷の外に出るわけには行かなかった。
状況が変わった後も、初めて参加するパーティーを見定めていた。
「リーリル、パーティー用のドレスを用意しておいて。それと、クロルにも参加することを伝えて」
「分かりました」
「それと、婚約記念パーティーまでダンスレッスンとマナーの勉強をもっと増やしたいわ」
「お嬢様はもう完璧では……」
「あら、王女たるもの国一番の淑女でないといけないわ」
私は胸を張って、子供っぽく笑ってみせた。
「ふふ、分かりましたわ。お嬢様。では、私もお嬢様に一番似合うドレスを屋敷から送ってもらいます。それに当日のヘアセットも期待していて下さいませ。国一番の淑女に相応しい美しい髪型にしてみせますわ」
私とリーリルは顔を見合わせて、笑い合う。
この時間が幸せすぎるから……大切すぎるから、私は明日も頑張ろうと思えるのだ。
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