魔術師アルガは、親友の夢の果てに何を見るか

椎名

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第六章:レイの思い、迷宮の奥へ

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『忘れ去られた迷宮』へと向かうアルガたちの足取りは、かつてないほどに重かった。特にアルガの脳裏には、友人であるレイ・ブラッドの面影が繰り返しよぎっていた。迷宮の深部へと足を踏み入れるごとに、魔力の波動は強まり、それはまるで過去の痛みが蘇るようだった。
迷宮の入り口は、シュテルンの地下深く、かつての魔法学校の地下通路と繋がっていた。分厚い石の扉を開けると、ひんやりとした空気が肌を刺す。そこは、闇の奥へと続く無限の回廊のようだった。アルガを先頭に、リアス、レオン、ユリウスが続き、その後ろをラミア、ルディ、グスタフが緊張した面持ちで追う。アリスは、魔力反応を解析する装置を抱え、彼らの後方から指示を出していた。
「魔力反応の震源は、この先、さらに深部にあるようです。ですが、この迷宮の構造は、通常の空間把握魔法では解析できません」
アリスの声が、暗闇に響く。この迷宮は、古の魔法使いたちによって築かれたものだとされ、その内部は常に変化し、侵入者を惑わせるよう設計されていた。
「大丈夫だ、アリス。この迷宮の構造は、昔から俺たちが散々遊び回った場所だからな」
アルガが不敵に笑うと、レオンが肩をすくめた。
「ったく、あの時のいたずらがお役に立つとはね。しかし、今回は命懸けだぜ、アルガ」
ユリウスが冷静に注意を促す。
「闇の遺物の影響か、迷宮の魔力流動が不安定だ。罠や幻影に注意しろ」
アルガの探知魔法と水の道
アルガは一歩踏み出すと、静かに目を閉じた。彼の翡翠の瞳が再び開かれた時、そこには微かな魔力の光が宿っていた。
「探知魔法――『水の囁き(みずのささやき)』」
アルガが低い声で唱えると、彼の周囲の空間に、目には見えない微細な水の粒子が瞬時に広がった。それは迷宮の壁や床、そして空気中を漂う魔力の流れに触れ、彼に正確な情報を伝えてくる。アルガは、この探知魔法で迷宮の複雑な構造や、隠された罠、そして微細な魔力異常までをも察知することができた。
「右だ。この先に魔力的な歪みがある。おそらく罠か、あるいは闇の遺物の影響だろう」
アルガが告げると、その指示通りに彼らは進む。彼の水魔法の探知能力は、この不安定な迷宮において、まさに命綱だった。
突破する仲間たち
その時、彼らの行く手を阻むように、巨大な土の壁が突如として現れた。
「これは……!」
グスタフが驚きの声を上げる。その壁は、ただの土の塊ではなかった。複雑な魔力網が張り巡らされ、並大抵の魔法では破壊できない。
「グスタフ、お前の出番だ」
アルガが促すと、グスタフは頷いた。彼は集中し、壁の魔力網の隙間を見つけると、そこに自身の土魔法を正確に流し込み、壁を無力化していく。
「すごい……こんな高度な土魔法を!」
ラミアが感嘆の声を漏らす。グスタフの土魔法は、ユリウスの指導によって、堅牢さと精密さを兼ね備えるまでになっていた。
壁を突破すると、迷宮はさらに深い闇へと誘い込んだ。通路は入り組み、幻覚のような人影がちらつき、彼らの心を惑わせる。
「これは、アルガの『霧散幻影』に似てる……!」
ルディが息をのむ。幻影は彼らの記憶を刺激し、心に潜む不安や恐怖を増幅させた。それは、レイ・ブラッドの悲劇を思い起こさせるような、陰鬱な幻影だった。
「ひるむな!これは相手の心理を揺さぶる罠だ!」
アルガの声が響き渡る。彼は杖を構え、自身の水魔法で周囲の幻影を霧のようにかき消していく。しかし、その瞬間、アルガの脳裏に、より鮮明なレイの記憶がフラッシュバックした。
それは、レイが闇の遺物に触れた瞬間の光景だった。
強い魔力の波動。苦しみに顔を歪めるレイ。そして、彼の瞳に宿る、深い絶望の色。
「やめろ、レイ!その力を解放するな!」
アルガは叫んだ。しかし、記憶の中のレイは、もはや彼の声に応えることはなかった
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