魔術師アルガは、親友の夢の果てに何を見るか

椎名

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第十章:力の衝突、交錯する運命

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数日が立ち、静かな夏の夜、アルガは湖のほとりで焚き火を囲んでいた。パチパチと燃え盛る薪の音と、香ばしいチーズとハーブの香りが混じり合う。今日の旅の疲れを癒やすかのように、彼の表情はどこか穏やかだ。
『さて、続いては旅の特集です。遥か彼方、知られざる絶景スポットをご紹介しましょう。』
ポータブルテレビから流れるキャスターの快活な声に、アルガは小さく頷いた。
「へぇ、俺以外にも旅する者たちがいるのだな。しかもこんな楽しげな場所を、よく見つけるものだ。」
そう言いながら、画面に映し出される清流や、古き良き温泉街の映像に目を細める。落ち着いたらあの地へ赴いてみようかと、新たな旅の計画を立てるかのように、口元のピザを拭った。
その時だった。アルガの耳に、テレビから飛び込んできた報せが、あまりにも衝撃的な響きを伴っていた。
「――先ほど、峻厳なるベルガール監獄より、闇の魔術師の一団が脱獄したとの情報が入りました。」
耳を疑う報せに、アルガは驚きのあまり、座っていた折り畳み椅子から勢いよく転げ落ちた。食べかけのピザが床に落ち、小さな音を立てた。
(まさか、そんな馬鹿な……)
慌てて立ち上がると、震える足で再びテレビ画面に視線を向けた。画面には、脱獄囚たちの面影が次々と映し出されていく。どの顔もいかにも悪辣な雰囲気を纏っていたが、アルガの意識は、その中のたった一枚に釘付けになった。
「レイ!」
アルガの叫びが、静まり返った夜の空間に虚しく響き渡った。
映し出されたレイ・ブラッドの顔は、かつての面影を残しつつも、その双眸には常軌を逸した狂気が宿り、口元はまるで獲物を嘲笑うかのように歪んでいた。しかし、アルガの脳裏には、まだ鮮明なあの日の記憶が蘇る。
シュテルン魔法学院の図書館。分厚い魔導書を読み解きながら、時に意見を戦わせ、時に笑い合った日々が脳裏に蘇る。アルガの隣には、いつもレイがいた。共に魔法の道を究めようと誓い合った、唯一無二の親友。レイは、アルガとは対照的に、常に物静かで、しかしその内に秘めた魔力は、アルガに匹敵するほどだった。二人は互いに高め合い、支え合い、そして、将来は必ずこの世界を良い方向に変えようと語り合っていたはずだった。
しかし、いつからか、レイの瞳に暗い影が宿り始めた。彼はより強力な魔法を求め、その力に取り憑かれていった。アルガは、何度も彼を止めようとした。かつての友情を盾に、必死に説得を試みた。だが、レイの心は闇に深く蝕まれており、アルガの声は届かなかった。そして、あの忌まわしい事件が起こり、アルガは自らの手で親友を捕らえるという、最も辛い決断を下さざるを得なかったのだ。
(まさか、レイが……いや、ありえない。ベルガール監獄は、脱獄不可能と言われたはずだ……!)
アルガの心臓が、激しく警鐘を鳴らす。かつて自分がその手で送り込んだはずの男が、信じられない、いや、信じてはならない場所にいる。峻厳なベルガール監獄は、脱獄不可能と言われたはずだ。その絶対のはずだった壁が、こうも呆気なく破られた事実が、アルガの胸に鉛のような重さでのしかかった。一人で、この闇に立ち向かえるのか。かつて親友であった男の、歪んだ力が、どれほど恐ろしいものに変貌しているのか、今のアルガには想像もつかなかった。あのレイが、闇の魔術師の一団と共に脱獄した。それは、ただの報せではない。彼の、過去と現在、そして未来をも巻き込む、個人的な「戦い」の始まりを意味していた。旅の終わりは、思いもよらない形で訪れた。
その時、焚き火の傍ら、アルガの旅の車の僅かな隙間から、ひらりと一枚の羊皮紙が舞い落ちた。普段であればすぐに気づくはずのない、微かな音。だが、張り詰めた神経を研ぎ澄ませていたアルガの耳は、その音を確かに捉えた。
「なんだ……?」
彼は屈み込み、床に落ちたそれ――一枚の封筒を拾い上げた。差出人の名は書かれていないが、封筒のロウには、シュテルン魔法学院の校章がはっきりと刻印されていた。
アルガは、震える手で封筒を開けた。中には、折りたたまれた上質な羊皮紙が収められていた。開くと、そこには理事長であるロゼリア・ヴァインシュタインの、厳かで美しい筆跡が綴られている。
「アルガ・リングス殿」
書き出しは、彼のフルネームだった。
「闇は再び目覚め、世界は混乱の淵にある。ベルガール監獄からの脱獄は、その序章に過ぎぬ。貴殿の類まれなる才能と、この危機に対する深い理解が必要とされている。シュテルン魔法学院は、貴殿に協力を要請する。即刻、本校へ帰還せよ。」
そして、その署名の下には、短く、しかし重い追伸が添えられていた。
「レイ・ブラッドの件、詳細を伝えたい。」
アルガの顔から、血の気が引いた。学院理事長からの手紙……。それは、ただの要請ではない。彼がかつて首席で卒業した学院からの、厳然たる「命令」にも等しい。そして、その内容が、まさしくレイの脱獄と連動しているとは。なぜ、理事長は彼の居場所を正確に把握していたのか。そして、なぜこの時に連絡が来たのか。疑問が頭の中を駆け巡る。手紙の文面は、レイの脱獄が、学院が把握しているよりもはるかに深刻な事態であることを示唆していた。
アルガは、再びその場にへたり込んだ。ピザの匂いは、もはや彼には届かない。彼の旅は、運命的な使命へと変貌を遂げようとしていた。旅の道具を片付ける際、彼は幾度か手を止めた。これまで訪れた風光明媚な場所、出会った人々、全てが自由という甘美な響きを帯びていた。しかし、レイの面影が脳裏をよぎるたび、その未練は使命感へと姿を変えていく。理事長からの手紙は、彼が過去から逃れることを許さない、新たな「始まり」の合図だった。そして親友の存在が、否応なしに彼をその渦中へと引きずり込もうとしている。
その時、焚き火の傍ら、夜の闇の中から、静かに、しかし明確な足音が近づいてくる。ひやりとした夜風が吹き抜け、アルガは反射的に顔を上げた。そこに立っていたのは、物見の画面の中で見たばかりの、あの男だった。黒いローブは夜の闇に溶け込み、顔の半分はフードに隠れているが、その僅かな隙間から覗く鋭い眼光は、間違いなく彼が知る人物のそれだった。
「レイ……」
アルガの口から、乾いた声が漏れた。信じられない、という感情が全身を支配する。レイは、何も言わず、ゆっくりと焚き火へと近づいてきた。その一歩一歩が、アルガの心臓に直接響くように重い。
「なぜ……ここに?」
絞り出すようなアルガの問いに、レイは表情の見えない顔でフッと笑った。
「会いに来たのですよ、アルガ。あなたにね。」
その声は、かつて共に笑い合った親友の声とは似ても似つかない、底冷えのする響きを帯びていた。アルガは、震える膝を奮い立たせ、立ち上がった。焚き火の炎が、彼とレイの間に揺らめく。
「お前は、ベルガール監獄にいるはずだった。なぜ脱獄した?」
「そのようなことはどうでもいいのです。」レイはアルガの言葉を遮った。彼の纏う魔力が、夜の空気を重くする。「私は、あなたを連れ戻しに参りました。あの頃のように、また二人で世界を変えましょう。」
レイの言葉は、かつての約束を思い起こさせる甘い誘惑だった。アルガの脳裏に、シュテルン魔法学院の図書館での日々が鮮明に蘇る。共に語り合った理想、目指した未来。しかし、レイの瞳に宿る暗い輝きは、それがもう戻らない過去であることを告げていた。
「レイ、お前は道を誤った。今ならまだ引き返せる。今回は見逃してやるだから……ここから消え失せろ!」
アルガの言葉に、レイはフッと静かに笑った。その笑みは、蔑みと、どこか深い傷を含んでいた。
「見逃してくださる、ですか?」
レイの言葉が、焚き火の音すら掻き消すほどに、静かに、だが鋭く響いた。彼の顔は、アルガのその哀れみに満ちた眼差しを捉えた瞬間、激しい怒りと屈辱に歪んだ。まるで、幼い頃に手の届かなかった光を、今も届かないと突きつけられたかのように。その瞳の奥には、長年押し殺してきた嫉妬と、全てを支配したいという歪んだ欲望が燃え盛っていた。
「フフ……アハハハハハハハハ!!」
レイは狂ったように高笑いを始めた。その笑い声には、絶望と狂気、そして全てを嘲笑うかのような響きが混じり合っていた。
「ッッ!! その目で見下すな! 私を憐れむな! 貴様に何がわかるというのだ! 私は負けない! 負けてたまるか! 私が支配する! 全てを! 全てを我がものにするのだ! 世界を! 世界を我がものにするのだ!」
レイは狂気と恐怖に染まった顔で叫んだ。彼の全身から黒い魔力が制御不能なほどに溢れ出し、周囲の草木を焼き尽くすほどの紅蓮の炎が爆発的に放たれた。それはもはや魔法の域を超え、純粋な破壊そのものだった。怒り、嫉妬、絶望、そして底なしの劣等感。全ての負の感情が混じり合い、レイの魔力を異常なまでに膨れ上がらせていた。その攻撃は予測不能で、非常に強力だった。
アルガはその勢いに押され、後退せざるを得なかった。しかし、彼の瞳は決して揺るがない。押し寄せるレイの魔力を、アルガは全て受け止めた。彼は杖を構え、その先端から静かに、しかし限りなく広がる水膜を張った。レイの放つ破壊の炎が、その水膜に触れると、まるで無限の沼に吸い込まれるかのように、次々と威力を失い、相殺されていく。
「そんな、馬鹿な……! 私のこの力が……なぜ、なぜ効かないのだ! おのれ、アルガ! この私が、貴様に……貴様のような凡俗に、阻まれるとでも言うのか!?」
レイは、自身の攻撃が完璧に相殺されていく光景に、瞳を見開き、子供のように絶叫した。その顔には、驚愕と、信じられないという感情が混じり合っている。彼の必死の叫びが、虚しく響いた。
アルガは、レイの焦燥と怒りに満ちた表情を、ただ静かに見つめ返した。彼の瞳は、いかなる感情の揺れも見せず、ただあるがままの現実を写し取っている。それは、目の前の狂気が、もはや言葉を尽くしても届かない領域に達していることを悟った、諦念にも似た静けさだった。彼が纏う水膜は、まるで世界のすべてを受け入れるかのように、レイの破壊衝動を吸収し、その力を無に帰している。
アルガは、その強大な魔力を全て受け止め、表情は、依然として冷静で、まるでレイの狂気を全て包み込むかのように、穏やかだった。
その時だった。アルガの背後から、突然黒い影が現れた。その影はレイと同じく黒いローブを纏い、左手には禍々しい紋章の入った革手袋をはめていた。それは闇の魔術師の一味の一人であり、彼らが脱獄した際の共犯者だった。レイがアルガと戦っている間に、その仲間がアルガの背後を狙っていたのだ。
「アルガ!」
レイは絶望と焦燥が入り混じった叫び声を上げた。しかし、アルガの霧に包まれた彼は動けず、アルガの背後に迫る刺客に対して何もできなかった。レイの声には、親友を失うことへの恐れと、その仲間への怒りが込められていた。その声がアルガの耳に届くと同時に、背後から冷たい刃が迫る。
「……邪魔をするなよ」
アルガの声は静かだった。まるで、道に落ちる石でも見るかのような、深く、静かな怒りが込められていた。彼は振り返ることなく、水の魔力を集中させ、霧を操った。その霧は、まるで硬質な壁のように背後の刺客を弾き飛ばし、焚き火の炎を瞬時に飲み込んだ。刺客は呻き声を上げながら、数メートル先まで吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。アルガの霧は単なる攻撃手段だけでなく、彼の様々な魔力を引き出すための触媒でもある。その一瞬の出来事によって、戦局は大きく変化した。
「アルガ……」レイは驚愕の眼差しでアルガを見つめた。彼がその力を解放した瞬間、レイはアルガの潜在能力が想像以上に高いことを改めて痛感した。レイの脳裏には、かつての学院生活で目にしたアルガの姿が蘇る。彼はいつも冷静で、努力家で、その才能は誰もが認めるものだった。しかし、レイはそのアルガの優れた力を嫉妬と羨望の目で見ていたのだ。それが彼を闇に導く一因となったのかもしれない。だが今、彼はその圧倒的な力に恐怖すら感じ始めていた。かつては肩を並べていた親友が、いまや自分を遥かに凌駕する存在となりつつある。その事実がレイの心をかき乱し、彼は苦悶の表情を浮かべた。
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