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第38話
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ギルドマスター室は、外の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
重厚な机の向こうで、グランは腕を組み、ライトの話を一言も挟まずに聞いている。
洞窟で遭遇した外套の集団。投げナイフ。連携の動き。撤退の仕方。
最後まで話し終えたとき、部屋には短い沈黙が落ちた。
「……やはりな」
グランが低く呟く。
「やはり、ですか」
「ああ。最近、この街の周辺で同じような報告が増えている。魔獣ではない。明らかに人間の手による襲撃だ」
グランは机の引き出しから数枚の書類を取り出し、広げた。
「洞窟、森、街道。場所は違うが、共通点がある」
「共通点?」
「単独行動の冒険者。それも、目立つ存在だ」
ライトの視線が、自然とミリュウに向く。
ミリュウは状況を察したのか、胸元で小さく鳴いた。
「ミュ……」
「竜を連れている者の報告も、いくつかある。全員が無事に戻ってきたわけじゃない」
その言葉に、胸の奥がひやりと冷える。
「……狙いは、ミリュウですか」
「可能性は高い。だが、それだけじゃない」
グランは書類の一枚を指で叩いた。
「最近、魔獣の動きが妙だ。異常な活性化、縄張りの移動、人里への接近。どれも偶然とは思えん」
「誰かが、裏で動いている」
「そうだ」
グランはゆっくりと視線を上げ、ライトを見据えた。
「ライト。お前は今、二つの意味で目立っている」
一つは、竜を連れていること。
もう一つは、異常な速度で力をつけていること。
言葉にされなくても、意味は分かった。
「……ギルドとしては、どうするつもりですか」
「表向きは調査だ。だが、水面下では警戒を強めている」
グランは少し声を落とす。
「勇者パーティも、この件に関わっている」
その名前が出た瞬間、胸の奥がわずかに軋んだ。
「彼らが?」
「ああ。国から正式に動員がかかっている。異変の調査と、危険因子の排除だ」
排除、という言葉が、耳に残る。
「……俺も、その対象に含まれてますか」
グランは即答しなかった。
しばらく考え込むように目を伏せ、それから言う。
「今のところは、違う。だが……保証はできん」
正直な言葉だった。
「だから、お前に伝えておく」
グランは身を乗り出す。
「しばらくの間、単独行動は控えろ。できれば、街の外へ出るときはギルドを通せ」
「分かりました」
ライトは素直にうなずいた。
無謀に動くつもりはない。
守るものが、増えている。
「ミリュウの存在は、まだ正式には報告していない。だが、いずれ知られる」
グランはミリュウに目を向け、静かに言った。
「その時、お前がどう動くかで、状況は大きく変わる」
「……はい」
部屋を出ると、ミィナが心配そうに待っていた。
「大丈夫でしたか?」
「ええ。色々、分かりました」
ミィナは少し迷ったあと、小さく声を落とす。
「……勇者パーティの話、出ました?」
「出ました」
ミィナは一瞬、言葉に詰まったが、すぐに笑顔を作る。
「ライトさんなら、大丈夫です。前とは……違いますから」
その言葉に、胸の奥がわずかに温かくなる。
「ありがとうございます」
ギルドを出ると、夜の街は思ったよりも賑やかだった。
だが、その賑わいの裏に、見えない緊張が潜んでいるのを、ライトは感じ取っていた。
宿へ戻る途中、ふと視線を感じて足を止める。
路地の奥。
誰かが、こちらを見ている気配。
ライトは歩みを止めず、何事もないふりをして通り過ぎた。
だが、確信はあった。
(……まだ、終わってない)
宿の部屋に戻ると、ミリュウをベッドに下ろす。
「今日は、色々あったな」
「ミリュ」
ミリュウは小さく鳴き、ライトの指に頭を擦りつけた。
「大丈夫だ。守る」
その言葉は、誰に聞かせるでもなく、自然と口から出た。
外では、どこかで鐘が鳴っている。
動き始めた者たち。
迫ってくる勇者パーティ。
そして、自分を狙う存在。
すべてが、静かに絡み合い始めている。
ライトは窓の外を見つめながら、ゆっくりと拳を握った。
逃げるつもりは、もうなかった。
重厚な机の向こうで、グランは腕を組み、ライトの話を一言も挟まずに聞いている。
洞窟で遭遇した外套の集団。投げナイフ。連携の動き。撤退の仕方。
最後まで話し終えたとき、部屋には短い沈黙が落ちた。
「……やはりな」
グランが低く呟く。
「やはり、ですか」
「ああ。最近、この街の周辺で同じような報告が増えている。魔獣ではない。明らかに人間の手による襲撃だ」
グランは机の引き出しから数枚の書類を取り出し、広げた。
「洞窟、森、街道。場所は違うが、共通点がある」
「共通点?」
「単独行動の冒険者。それも、目立つ存在だ」
ライトの視線が、自然とミリュウに向く。
ミリュウは状況を察したのか、胸元で小さく鳴いた。
「ミュ……」
「竜を連れている者の報告も、いくつかある。全員が無事に戻ってきたわけじゃない」
その言葉に、胸の奥がひやりと冷える。
「……狙いは、ミリュウですか」
「可能性は高い。だが、それだけじゃない」
グランは書類の一枚を指で叩いた。
「最近、魔獣の動きが妙だ。異常な活性化、縄張りの移動、人里への接近。どれも偶然とは思えん」
「誰かが、裏で動いている」
「そうだ」
グランはゆっくりと視線を上げ、ライトを見据えた。
「ライト。お前は今、二つの意味で目立っている」
一つは、竜を連れていること。
もう一つは、異常な速度で力をつけていること。
言葉にされなくても、意味は分かった。
「……ギルドとしては、どうするつもりですか」
「表向きは調査だ。だが、水面下では警戒を強めている」
グランは少し声を落とす。
「勇者パーティも、この件に関わっている」
その名前が出た瞬間、胸の奥がわずかに軋んだ。
「彼らが?」
「ああ。国から正式に動員がかかっている。異変の調査と、危険因子の排除だ」
排除、という言葉が、耳に残る。
「……俺も、その対象に含まれてますか」
グランは即答しなかった。
しばらく考え込むように目を伏せ、それから言う。
「今のところは、違う。だが……保証はできん」
正直な言葉だった。
「だから、お前に伝えておく」
グランは身を乗り出す。
「しばらくの間、単独行動は控えろ。できれば、街の外へ出るときはギルドを通せ」
「分かりました」
ライトは素直にうなずいた。
無謀に動くつもりはない。
守るものが、増えている。
「ミリュウの存在は、まだ正式には報告していない。だが、いずれ知られる」
グランはミリュウに目を向け、静かに言った。
「その時、お前がどう動くかで、状況は大きく変わる」
「……はい」
部屋を出ると、ミィナが心配そうに待っていた。
「大丈夫でしたか?」
「ええ。色々、分かりました」
ミィナは少し迷ったあと、小さく声を落とす。
「……勇者パーティの話、出ました?」
「出ました」
ミィナは一瞬、言葉に詰まったが、すぐに笑顔を作る。
「ライトさんなら、大丈夫です。前とは……違いますから」
その言葉に、胸の奥がわずかに温かくなる。
「ありがとうございます」
ギルドを出ると、夜の街は思ったよりも賑やかだった。
だが、その賑わいの裏に、見えない緊張が潜んでいるのを、ライトは感じ取っていた。
宿へ戻る途中、ふと視線を感じて足を止める。
路地の奥。
誰かが、こちらを見ている気配。
ライトは歩みを止めず、何事もないふりをして通り過ぎた。
だが、確信はあった。
(……まだ、終わってない)
宿の部屋に戻ると、ミリュウをベッドに下ろす。
「今日は、色々あったな」
「ミリュ」
ミリュウは小さく鳴き、ライトの指に頭を擦りつけた。
「大丈夫だ。守る」
その言葉は、誰に聞かせるでもなく、自然と口から出た。
外では、どこかで鐘が鳴っている。
動き始めた者たち。
迫ってくる勇者パーティ。
そして、自分を狙う存在。
すべてが、静かに絡み合い始めている。
ライトは窓の外を見つめながら、ゆっくりと拳を握った。
逃げるつもりは、もうなかった。
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