追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

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第42話

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 集落の奥から響いてきた足音は、さきほどの魔獣のものとは明らかに違っていた。
 重い金属が擦れる音に、乾いた靴音が混じっている。

 ライトは剣を低く構え、リオナと並ぶ位置を保ったまま前へ進んだ。
 家屋の影が連なり、視界は狭い。逃げ道も限られる。

「数は多くないな」
リオナが小声で言う。

「ああ。でも、厄介なのが出てくる」

ミリュウが肩の上で小さく鳴いた。

 空気が冷える。

 次の瞬間、路地の向こうから人影が現れた。
外套を羽織った男が二人。
 その背後に、金属製の鎧を着込んだ一人が立っている。
 手には歪んだ形状の杖。

「魔獣は囮か」
ライトが呟く。

「そうみたいね」
リオナが視線を細める。

「あの杖、魔導具よ」

 男たちは言葉を交わすことなく散開した。合図もない。だが動きに無駄がない。

 右側の外套が短剣を投げ、左側が距離を詰める。

 ライトは半歩前に出て剣を振る。

「《斬撃強化(中)》」

 刃が弧を描き、投げナイフを弾き落とす。
同時に踏み込み、迫ってきた男の腕を打ち払った。

リオナが後方から詠唱する。

「フレイムボール」

火球が飛び、外套の男を牽制する。

 だが、鎧の男は一歩も動かなかった。
杖を地面に突き立て、低く呟く。

「流れろ」

 空気が一変した。
 地面に溜まっていた水分が一斉に集まり、槍のような形を成して飛んでくる。

「水……!」

 リオナが叫ぶより早く、ライトは横に跳んだ。だが完全には避けきれない。

 冷たい衝撃が肩口を打ち、体勢が崩れる。

その瞬間、視界の奥に確かな感覚が走った。

《ウォーターLv1》を獲得。

 肩に走った冷たさが、痛みではなく情報として身体に残る。水の重さ、流れ、拡散の仕方。
それらが一気に理解できた。

ライトは着地と同時に地面を蹴る。

「まだ終わりじゃないぞ」

 鎧の男が再び杖を振る。今度は地面から水が湧き上がり、渦を巻く。

「来る!」

リオナが距離を取る。

ライトは剣を構え直し、一歩前に出た。

「《ウォーターLv1》」

 掌から放たれた水が、相手の渦と正面からぶつかる。
 勢いは弱い。だが、流れを乱すには十分だった。

渦が崩れ、飛沫が散る。

「……もう使えるの?」

リオナが一瞬だけ目を見開く。

「問題ない」

ライトは即答した。

外套の男が再び距離を詰める。

ライトは踏み込み、剣を振る。

「《斬撃強化(中)》」

 刃が外套を裂き、男は地面に転がった。

 残る一人が逃げようと背を向けるが、リオナが間合いを詰める。

「アイスカッター」

氷の刃が足元を斬り、動きを止めた。

鎧の男は舌打ちし、杖を引いた。

「撤退だ」

 次の瞬間、足元の水が霧となり、視界を遮る。
気配が遠ざかる。

「逃げたか」

 ライトは剣を下ろし、呼吸を整えた。
肩の濡れた部分が冷えるが、動きに支障はない。

「水魔法、確実に使ってたわね」
リオナが近づく。

「さっきの攻撃で覚えた」

「……規格外」

ミリュウが小さく鳴き、ライトの肩で姿勢を正す。

「ミリュ」

 集落には再び静けさが戻っていた。
だが、焦げ跡と濡れた地面が、何が起きたかを物語っている。

「この辺り、まだ終わってないな」
ライトは周囲を見渡した。

「ああ。水を使う連中がいるって分かっただけでも収穫だ」
リオナが頷く。

「次は、もっと大きく動くはず」

ライトは剣を鞘に収め、ミリュウに声をかけた。

「行こう。追える範囲で追う」

「ミリュ!」

 集落には、しばらく誰も動く気配がなかった。ライトは剣を収め、周囲を一度だけ見回してから、静かに歩き出した。
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