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第19話:オフィスの“好き”が聞こえる日
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月曜の朝。
出社してすぐ、オフィスがざわついているのがわかった。
「ねぇ、見た? 昨日の投稿!」
「“理想の上司”と“部下の返信”、完全に両想いじゃん!」
「公式アカウントみたいに“お似合い”とか言われてた!」
(うそ……またバズってるの!?)
スマホを開く。
やっぱり――通知の嵐。
《@WORK_LIFE_BALANCE》
「“想い”は伝えるためにある。隠す言葉なんていらない。」
《@mayu_worklife》
「じゃあ、今日の言葉は全部“本音”ってことで。」
いいね数、桁違い。
コメント欄は“お幸せに”で埋まっていた。
(お幸せにって……! まだ、そういう関係じゃ――)
「おはよう」
背後から聞き慣れた声。
「か、課……誠さん!」
「おっと、言いかけたな」
「す、すみません! 職場モードとごっちゃになって!」
「別に構わない。どちらも“俺”だから」
「そ、そういう言い方やめてくださいっ!」
(朝から破壊力強すぎ……!)
⸻
午前中。
広報部会議。
美咲が書類を配りながら、ニヤリとする。
「さて、“対談という名の告白”が大反響だった件について~」
「や、やめてください!」
「いやぁ、社外でも記事になってるのよ。“理想の上司ペア、再炎上せず好感度爆上がり”って」
「なにそれ、タイトルがもう……!」
「世の中、“恋と仕事”が同時進行してる話に弱いのよ」
「恋じゃ……」
「恋じゃなかったら、あんな目で見ないでしょ」
「……え?」
顔を上げると、柊がこちらを見ていた。
穏やかな笑顔。
まっすぐ、視線が交わる。
(――バレてる。全部、バレてる!)
⸻
昼休み。
成田がカフェの席にどっかと座る。
「お前ら、もう付き合ってんの?」
「な、なななに言ってるの!」
「だってもう、社内の空気が“両想い確定”だぞ?」
「そんなこと……!」
「だってさ、“誠さん”って呼んでたよな?」
「っ! 聞いてたの!?」
「そりゃ聞こえるよ。俺、隣のデスクだもん」
(うわぁ……終わった……)
「でもまあ、いいんじゃね? ちゃんとお互いリスペクトしてる感じ、見てて気持ちいいし」
「……リスペクト、ですか」
「そう。恋愛も仕事も、どっちも本気な人って、見てて羨ましいわ」
成田は笑いながらコーヒーをすすった。
(……そっか。私、ちゃんと本気なんだ)
⸻
午後。
社内チャットに通知。
《誠:広報部・営業部 全員へ
15時からの打合せ、会議室Cに集合。》
会議室に集まるメンバー。
資料を配りながら、柊が言った。
「今回のプロジェクト、“BRIDGE”の最終フェーズに入る。
“人が人をつなぐ”をテーマに、動画を制作する」
美咲「つまり、“理想の上司”のリアル版ってこと?」
柊「……まあ、そういうことになるな」
成田「主演はもちろん、柊さんと藤原で!」
真由「えぇぇっ!?」
一瞬、空気が凍る。
柊が少し笑って言った。
「……それでいい」
「え!?」
「君が隣にいることで、この企画は完成する」
(……もう、この人ほんとに……!)
「っ、わかりました……やります!」
「いい返事だ」
会議室がざわつく中、二人の視線がまた重なる。
⸻
夕方。
編集室。
撮影の打ち合わせを終え、柊が帰り際に立ち止まる。
「藤原」
「はい?」
「……“好き”って言葉、仕事中には言わない」
「え?」
「でも、仕事が終わったら、言うかもしれない」
一拍の沈黙。
その一言で、時間が止まったように感じた。
「……予告、みたいなものですか?」
「そうだな」
「反則です」
「また言われた」
(“好き”が、聞こえた。
誰にも聞こえない声で、ちゃんと届いた)
⸻
夜。
スマホの通知。
《@WORK_LIFE_BALANCE》
「“好き”は言葉じゃない。
誰かを見つめる視線の中にある。」
《@mayu_worklife》
「じゃあ、私は今日も見てます。“好き”の証拠を。」
コメント欄は静かだった。
けれど、それでよかった。
――この“好き”は、もう誰のためでもない。
出社してすぐ、オフィスがざわついているのがわかった。
「ねぇ、見た? 昨日の投稿!」
「“理想の上司”と“部下の返信”、完全に両想いじゃん!」
「公式アカウントみたいに“お似合い”とか言われてた!」
(うそ……またバズってるの!?)
スマホを開く。
やっぱり――通知の嵐。
《@WORK_LIFE_BALANCE》
「“想い”は伝えるためにある。隠す言葉なんていらない。」
《@mayu_worklife》
「じゃあ、今日の言葉は全部“本音”ってことで。」
いいね数、桁違い。
コメント欄は“お幸せに”で埋まっていた。
(お幸せにって……! まだ、そういう関係じゃ――)
「おはよう」
背後から聞き慣れた声。
「か、課……誠さん!」
「おっと、言いかけたな」
「す、すみません! 職場モードとごっちゃになって!」
「別に構わない。どちらも“俺”だから」
「そ、そういう言い方やめてくださいっ!」
(朝から破壊力強すぎ……!)
⸻
午前中。
広報部会議。
美咲が書類を配りながら、ニヤリとする。
「さて、“対談という名の告白”が大反響だった件について~」
「や、やめてください!」
「いやぁ、社外でも記事になってるのよ。“理想の上司ペア、再炎上せず好感度爆上がり”って」
「なにそれ、タイトルがもう……!」
「世の中、“恋と仕事”が同時進行してる話に弱いのよ」
「恋じゃ……」
「恋じゃなかったら、あんな目で見ないでしょ」
「……え?」
顔を上げると、柊がこちらを見ていた。
穏やかな笑顔。
まっすぐ、視線が交わる。
(――バレてる。全部、バレてる!)
⸻
昼休み。
成田がカフェの席にどっかと座る。
「お前ら、もう付き合ってんの?」
「な、なななに言ってるの!」
「だってもう、社内の空気が“両想い確定”だぞ?」
「そんなこと……!」
「だってさ、“誠さん”って呼んでたよな?」
「っ! 聞いてたの!?」
「そりゃ聞こえるよ。俺、隣のデスクだもん」
(うわぁ……終わった……)
「でもまあ、いいんじゃね? ちゃんとお互いリスペクトしてる感じ、見てて気持ちいいし」
「……リスペクト、ですか」
「そう。恋愛も仕事も、どっちも本気な人って、見てて羨ましいわ」
成田は笑いながらコーヒーをすすった。
(……そっか。私、ちゃんと本気なんだ)
⸻
午後。
社内チャットに通知。
《誠:広報部・営業部 全員へ
15時からの打合せ、会議室Cに集合。》
会議室に集まるメンバー。
資料を配りながら、柊が言った。
「今回のプロジェクト、“BRIDGE”の最終フェーズに入る。
“人が人をつなぐ”をテーマに、動画を制作する」
美咲「つまり、“理想の上司”のリアル版ってこと?」
柊「……まあ、そういうことになるな」
成田「主演はもちろん、柊さんと藤原で!」
真由「えぇぇっ!?」
一瞬、空気が凍る。
柊が少し笑って言った。
「……それでいい」
「え!?」
「君が隣にいることで、この企画は完成する」
(……もう、この人ほんとに……!)
「っ、わかりました……やります!」
「いい返事だ」
会議室がざわつく中、二人の視線がまた重なる。
⸻
夕方。
編集室。
撮影の打ち合わせを終え、柊が帰り際に立ち止まる。
「藤原」
「はい?」
「……“好き”って言葉、仕事中には言わない」
「え?」
「でも、仕事が終わったら、言うかもしれない」
一拍の沈黙。
その一言で、時間が止まったように感じた。
「……予告、みたいなものですか?」
「そうだな」
「反則です」
「また言われた」
(“好き”が、聞こえた。
誰にも聞こえない声で、ちゃんと届いた)
⸻
夜。
スマホの通知。
《@WORK_LIFE_BALANCE》
「“好き”は言葉じゃない。
誰かを見つめる視線の中にある。」
《@mayu_worklife》
「じゃあ、私は今日も見てます。“好き”の証拠を。」
コメント欄は静かだった。
けれど、それでよかった。
――この“好き”は、もう誰のためでもない。
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