上司がSNSでバズってる件

KABU.

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第24話:恋と会議と、ちょっとのキス

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翌朝。
社外広報から正式な通知が届いた。

【取材依頼】
テーマ:「理想の上司と部下、信頼を超えたチームワーク」
出演:柊 誠 × 藤原 真由
撮影:都内カンファレンスルーム

(……逃げ道、なし)

「うわぁ……本当に外部取材なんですね……」
「うむ」
「課長、まさかこれ、全部“自分で承諾した”とか言いませんよね」
「言う」
「やっぱりぃぃぃ!」

成田「でもまぁ、いいじゃん。“社外デビュー”だぞ!」
美咲「“恋する上司と部下”特集、写真映え最高よ」
「恋するって書かないでください!」

柊「……書かれても、否定しない」
「課長ぉぉぉ!」

(この人、本当に隠す気ないんだ……!)



昼。
都内ホテルの会議室。
取材チームが慌ただしく動く中、
二人は並んで座っていた。

カメラマン「今日は自然体でお願いしますねー!」
「自然体……ってどのくらい自然なんでしょう……」
「いつもの会話で大丈夫です」
「えっ、いつもの!? それ一番危険なパターンでは!?」

柊「……危険?」
「課長の“天然直球セリフ”が飛び出すからです!」
「そうか」
「自覚ないんですか!?」



撮影開始。

「では、お互いに“信頼している理由”を一言でお願いします」

「えっ、一言……」
柊「“隣にいるから”」
「はやっ!」
「真由は?」
「い、今のでだいぶハードル上がったんですけど!?」

笑いが起きる。

(ずるい、今のタイミング……完全に恋愛番組みたいじゃん!)

「えっと……“見ててくれるから、です”」
「おお~」
スタッフが小声で「これ、記事タイトルになるやつだ」と言った。

柊「それは、嬉しいな」
「え、なにがですか」
「“見ててくれる”って、俺の好きな言葉だ」
「課長、今は取材中!」
「自然体だろ?」
「限度があるんですよっ!」



カメラのシャッターが止まり、
次は“対談風景”の撮影。

記者「ちょっと距離近めでお願いしますね~」
(……いや、これもう近いどころじゃないんですけど!?)

椅子の間、数センチ。
肩と肩がほとんど触れそう。

「……緊張してる?」
「当たり前です! 至近距離なんですよ!?」
「距離が近い方が、伝わることもある」
「それ、なんの名言ですか!?」
「俺の中では、今日のベストショットだ」
「意味がわかりません!」

(……顔、近っ!)

その時、フラッシュが光った。

カメラマン「はい、今の最高です~!」

(最悪、あれ絶対変な誤解される!)



休憩中。
外のロビー。
スタッフが機材を整える間、二人きり。

「……なんか、息が合ってましたね」
「俺たちはチームだからな」
「……チーム、ですか」
「“好きな人”がチームメイトでもいいだろ」

「……」
「反則です」
「また言われた」
「毎回ちゃんと狙って言ってますよね?」
「自然体だ」
「自然体でそんな破壊力あります!?」

彼が少し笑って、
コーヒーカップを差し出す。

「カフェラテ。甘い方が落ち着くだろ」
「……ありがとうございます」
「仕事の前は、君に“甘い”のがちょうどいい」
「だからそういう言い方っ!」

(ほんとにもう……わざとでしょ)



撮影再開。
最後のシーンは、“笑顔で挨拶”。

「じゃあ、藤原さんから“また明日も頑張りましょう”って言って、
 柊さんがそれを受ける感じでお願いします」

「はい!」

「また明日も頑張りましょう、誠さ――」

その瞬間。
柊が一歩近づいた。
ふっと、頬に軽く触れる。

ほんの一瞬の、触れるだけの“キス”。

(――えっ)

スタジオが凍る。
一拍の沈黙。

「……すまない、アドリブだ」
「アドリブの範囲、越えてますっ!」
「自然体だ」
「自然体の基準おかしいです!」

カメラマン「……今の、奇跡の一枚です」
美咲「伝説、できたわね」
成田「映画化決定だな」

「違うんです! あれは取材事故です!」
「事故じゃない」
「……もうやめてぇぇぇ!」



夜。
帰りの電車。
真由のスマホに通知が届く。

《@WORK_LIFE_BALANCE》
「“仕事”と“恋”の境界は、曖昧でいい。
 だって、どちらも本気だから。」

《@mayu_worklife》
「その本気、もう全部バレてます。」

コメント欄には“キスの真相”を巡る騒ぎ。
でも、真由はもう笑っていた。

(……本気って、ちゃんと伝わるんだ)

隣の車両。
同じ電車に乗る柊が、スマホを見て微笑んでいた。
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