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道間という家系
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フィリピンから戻った翌日の土曜日。
昼近くまで寝ていたので、昼食を大目に食べていた。
大葉のパスタに、ガーリックで炒めた鶏肉を乗せている。
電話が鳴っている。
誰も取らないので、皇紀がいつものように出た。
亜紀ちゃんたちはもちろんだが、レイも柳も夢中で食べている。
全員が皇紀が出ろと思っていた。
早乙女から電話だと皇紀が言った。
「あんだよ、今食事中なんだが」
「それはすまない。ところでな」
「お前、友達いないだろ?」
「ああ?」
俺はちゃかしたが、早乙女の用件は予想外のものだった。
「俺なりに、あのバケモノのことを調べたんだ」
赤星綺羅々の怪物化の話だった。
早乙女はあの戦闘の後に、いろいろと調べていたらしい。
「幾ら何でも、あんなものがそうそうあっては困るからな」
「そりゃそうだな」
「綺羅々のことをいろいろ調べたんだ」
「何か分かったのか?」
「お前が信じるかは分らんがな。日本には太古からとんでもない系統がある」
「ほう」
「その一つが「花岡」だ。絶大な破壊力を持つ闘技によって国体を守ろうとする系統だ」
「……」
「もう一つが、今はもう潰れて無いけどな。特殊な武器を作る家系があった」
「そうか」
「もう一つある。これはオカルトだけどな。妖怪のようなものを使う流派がある」
「お前、大丈夫か?」
「石神に言われたくは無いけどな。これは本当のことだ。公安でもほんの一部の人間しか知らない」
「へー」
「三つとも、天皇家に仕えるものだったんだ。だから我々とも直接の協力関係には無いが、近い存在だと認識されている。過去に何度か関わり合ったこともある」
「そうなんだ」
俺は驚いていた。
「花岡」はもちろん分かっている。
斬のじじぃも、日本のためにというようなことを言っていた。
武器の家系というのは、「虎王」ではないのか。
そして「クロピョン」の記憶のようなものの一部を俺は観ていた。
過去に、クロピョンは人間と関わっていた時期が確かにあった。
「綺羅々は、三つ目の妖怪の流派と関りがあることが分かったんだ」
「なんだと?」
「母方の家系が、その「道間家」だった。道間の家では、妖怪を呼び出し使役する術があるらしい」
「信じられんな」
「俺も実を言えばそうだ。しかし、俺たちは実際に現実にあり得ないものを見ている」
「……」
早乙女も戸惑っているのを感じる。
「お前、道間の人間に会ってみないか?」
「俺がか?」
「ああ。お前ならば、何か聞き出せるかもしれない」
「どうして俺なんだ」
「勘だよ。あの家は外部と接触を断っている。でもお前なら会ってくれるかもしれん」
「まあ、聞きたいことはあるけどな」
しかし早乙女はとんでもないことを言った。
「じゃあ、京都へ行ってくれ」
「なんだと!」
「道間の家は京都にあるんだ」
♪ きょうとー おーはらさんぜんいんー ♪
「その歌は知ってるぞ」
「俺は京都の恋に疲れているんだ」
「何言ってんだ、お前?」
「とにかくそーゆーことで」
「おい!」
「あのな! 俺は京都へは行かないぞ!」
「なんでだぁ!」
「嫌なんだぁ!」
「ふざけんな!」
怒鳴り合った。
亜紀ちゃんたちが俺を見ている。
「あのさ、名古屋辺りから攻撃していい?」
「話を聞くんだろうがぁ!」
「潰しちゃえばいいじゃん」
「京都をどうすんだ!」
とにかく俺は絶対に行かないと言った。
「は、話がしたいなら東京へ来いって言え!」
「こっちが聞きたいんだろう!」
「いいからそう言ってみろ! ああ、俺が何でも斬る刀を持ってることと、山よりもでかい黒い玉みたいなのを舎弟にしてると言え」
「あ?」
「とにかくそう言え! それから生八つ橋を忘れるなってな!」
「石神、お前!」
俺は電話を切った。
一時間後、また早乙女から電話が来た。
「信じられんが、お前に会いに東京へ来るそうだ」
「生八つ橋は伝えたか!」
「あ、ああ。お前が言った通りに話したら、是非会いたいと言って来たんだよ」
「生八つ橋は美味いからなー」
「それはどうでもいい! 刀は、あの時のものなんだろ?」
「どうだかな」
「刀の話を興味を持ったようだが、黒い玉と言ったら、物凄く驚いていたぞ」
「そうか」
「おい、説明しろ」
「やだ」
早乙女が怒りを隠しながら喋っているのが分かる。
あいつも綺羅々の真相を知りたがっている。
「とにかく、日時はすり合わせるからな」
「土曜日がいいな」
「分かった。伝えておく」
「生八つ橋な!」
「しつこいな!」
「硬い奴だったら、お前に買いに行かせるぞ!」
「通販でも買えるだろう!」
「俺は「土産」のがいいんだ!」
早乙女が怒って電話を切った。
神からのものはまだあるが、毎日食べる量を我慢している。
通販かー。
発想に無かった。
まあ、何にしても、俺が京都へ行かなくて済んで良かった。
俺は亜紀ちゃんと遊んでいるロボを呼んで膝の上に乗せた。
「あー! 私が遊んでたのにー!」
亜紀ちゃんが叫ぶ。
俺は手を振ってやった。
「もー!」
こいつもただの猫じゃない。
道間の人間は気付くだろう。
俺は考えていた。
昼近くまで寝ていたので、昼食を大目に食べていた。
大葉のパスタに、ガーリックで炒めた鶏肉を乗せている。
電話が鳴っている。
誰も取らないので、皇紀がいつものように出た。
亜紀ちゃんたちはもちろんだが、レイも柳も夢中で食べている。
全員が皇紀が出ろと思っていた。
早乙女から電話だと皇紀が言った。
「あんだよ、今食事中なんだが」
「それはすまない。ところでな」
「お前、友達いないだろ?」
「ああ?」
俺はちゃかしたが、早乙女の用件は予想外のものだった。
「俺なりに、あのバケモノのことを調べたんだ」
赤星綺羅々の怪物化の話だった。
早乙女はあの戦闘の後に、いろいろと調べていたらしい。
「幾ら何でも、あんなものがそうそうあっては困るからな」
「そりゃそうだな」
「綺羅々のことをいろいろ調べたんだ」
「何か分かったのか?」
「お前が信じるかは分らんがな。日本には太古からとんでもない系統がある」
「ほう」
「その一つが「花岡」だ。絶大な破壊力を持つ闘技によって国体を守ろうとする系統だ」
「……」
「もう一つが、今はもう潰れて無いけどな。特殊な武器を作る家系があった」
「そうか」
「もう一つある。これはオカルトだけどな。妖怪のようなものを使う流派がある」
「お前、大丈夫か?」
「石神に言われたくは無いけどな。これは本当のことだ。公安でもほんの一部の人間しか知らない」
「へー」
「三つとも、天皇家に仕えるものだったんだ。だから我々とも直接の協力関係には無いが、近い存在だと認識されている。過去に何度か関わり合ったこともある」
「そうなんだ」
俺は驚いていた。
「花岡」はもちろん分かっている。
斬のじじぃも、日本のためにというようなことを言っていた。
武器の家系というのは、「虎王」ではないのか。
そして「クロピョン」の記憶のようなものの一部を俺は観ていた。
過去に、クロピョンは人間と関わっていた時期が確かにあった。
「綺羅々は、三つ目の妖怪の流派と関りがあることが分かったんだ」
「なんだと?」
「母方の家系が、その「道間家」だった。道間の家では、妖怪を呼び出し使役する術があるらしい」
「信じられんな」
「俺も実を言えばそうだ。しかし、俺たちは実際に現実にあり得ないものを見ている」
「……」
早乙女も戸惑っているのを感じる。
「お前、道間の人間に会ってみないか?」
「俺がか?」
「ああ。お前ならば、何か聞き出せるかもしれない」
「どうして俺なんだ」
「勘だよ。あの家は外部と接触を断っている。でもお前なら会ってくれるかもしれん」
「まあ、聞きたいことはあるけどな」
しかし早乙女はとんでもないことを言った。
「じゃあ、京都へ行ってくれ」
「なんだと!」
「道間の家は京都にあるんだ」
♪ きょうとー おーはらさんぜんいんー ♪
「その歌は知ってるぞ」
「俺は京都の恋に疲れているんだ」
「何言ってんだ、お前?」
「とにかくそーゆーことで」
「おい!」
「あのな! 俺は京都へは行かないぞ!」
「なんでだぁ!」
「嫌なんだぁ!」
「ふざけんな!」
怒鳴り合った。
亜紀ちゃんたちが俺を見ている。
「あのさ、名古屋辺りから攻撃していい?」
「話を聞くんだろうがぁ!」
「潰しちゃえばいいじゃん」
「京都をどうすんだ!」
とにかく俺は絶対に行かないと言った。
「は、話がしたいなら東京へ来いって言え!」
「こっちが聞きたいんだろう!」
「いいからそう言ってみろ! ああ、俺が何でも斬る刀を持ってることと、山よりもでかい黒い玉みたいなのを舎弟にしてると言え」
「あ?」
「とにかくそう言え! それから生八つ橋を忘れるなってな!」
「石神、お前!」
俺は電話を切った。
一時間後、また早乙女から電話が来た。
「信じられんが、お前に会いに東京へ来るそうだ」
「生八つ橋は伝えたか!」
「あ、ああ。お前が言った通りに話したら、是非会いたいと言って来たんだよ」
「生八つ橋は美味いからなー」
「それはどうでもいい! 刀は、あの時のものなんだろ?」
「どうだかな」
「刀の話を興味を持ったようだが、黒い玉と言ったら、物凄く驚いていたぞ」
「そうか」
「おい、説明しろ」
「やだ」
早乙女が怒りを隠しながら喋っているのが分かる。
あいつも綺羅々の真相を知りたがっている。
「とにかく、日時はすり合わせるからな」
「土曜日がいいな」
「分かった。伝えておく」
「生八つ橋な!」
「しつこいな!」
「硬い奴だったら、お前に買いに行かせるぞ!」
「通販でも買えるだろう!」
「俺は「土産」のがいいんだ!」
早乙女が怒って電話を切った。
神からのものはまだあるが、毎日食べる量を我慢している。
通販かー。
発想に無かった。
まあ、何にしても、俺が京都へ行かなくて済んで良かった。
俺は亜紀ちゃんと遊んでいるロボを呼んで膝の上に乗せた。
「あー! 私が遊んでたのにー!」
亜紀ちゃんが叫ぶ。
俺は手を振ってやった。
「もー!」
こいつもただの猫じゃない。
道間の人間は気付くだろう。
俺は考えていた。
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