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第五章 毒花令嬢は俺の可愛い婚約者
第五十八話 満ち足りた日々17 俺の婚約者は結局のところ毒花が似合うし、薔薇にはなれない
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マグナレイ侯爵家の馬車で賑わいのある街区まで送り届けてもらう。
「ここで降ろしてくれ」
馬車から降り、街を歩く。
ネリーネから『気の利かない俺が丁度いい』と言われたからと何もしないわけにはいかない。
花束の一つでも買って訪ねよう。
海向かいの隣国との国交回復に王都は祝賀ムード一色だ。迎賓であるイスファーンの王女殿下の愛称が『ひまわり姫』ということもあって今若い女性たちに向日葵が流行っているらしい。というのをケインとニールスから聞いた。
花売りをしている子供に声をかけ小ぶりな花束を選ぶ。
俺は、照り返す日差しをものともせずにデスティモナ伯爵邸に向かった。
***
相変わらず目に痛い色彩のドレスを見に纏ったネリーネがフスフスと鼻息を荒くして自慢げに座っている。
今日は少女趣味なリボンとフリルのたくさんついた派手なドレスではない。
身体に沿ったデザインはネリーネの肉感的な身体つきを強調し、胸元や背中はレース生地で覆われてはいるけれど、透けて見える肌は余計艶かしい。宝石や真珠がこれでもかと縫い付けてあり、まるで歩く宝石箱だ。胸元につけたネリネの花のブローチがまるで陳腐な玩具に見える。
一体どういうつもりなのだろう。いつもの派手な格好とはまた異なる種類の派手な装いに戸惑う。
「……ネリーネお嬢様がステファン様に会うからと、お気に入りのドレスでおめかししていらっしゃいます」
ミアがお茶を置くときに俺に耳打ちする。
俺の、ために、おめかし、だと……
可愛い。
褒め言葉を探そうとネリーネを見るが、正直にいえば結局派手なこと以外の感想はない。
「今日は随分派手な……」
ネリーネの期待がこもった眼差しは普段にも増して派手な化粧で睨みが効いている。俺はごくりと唾を飲み込む。
「えっと……そうだ。大人びて見えるな」
ネリーネは満足気に髪の毛をかき上げる。筒状に巻いた髪の毛がぶるんと揺れる。
「いつもの子供みたいなリボンやフリルがいっぱいのドレスは、わたくしはもう大人ですからそろそろ卒業しても良い頃なのですけど、お父様はまだまだわたくしに幼いネリーネでいて欲しいのですわ。わたくしだってこういう大人っぽい格好も似合いますでしょう?」
「……あぁ、そうだな」
以前、自分の趣味ではないドレスを父親の趣味で着させられている話を聞いた時に、皆が噂するよりも控えめなのだと思っていたが、ネリーネのお気に入りのドレスも派手で趣味がいいとは言い難い。
よくまぁ、他人のことを悪趣味扱いしたものだ。
「どうせ、周りから毒花令嬢と呼ばれるのであれば、お祖母さまのように男性とも議論が交わせるような強い女性でありたいと思いますの」
ネリーネは自分の胸に手を当てて誇らし気に胸を張る。毒花令嬢と呼ばれることになんの反省もないらしい。
「ロザリンド夫人は男性とも議論を交わされていたが、社交界の薔薇と呼ばれていたと聞いている。わざわざ毒花令嬢らしい振る舞いをする必要はないのではないか? それにその格好だと毒花令嬢というよりも毒花夫人の方がお似合いだな」
呆れた俺が言い返すとネリーネの顔が赤くなる。
「夫人の方がお似合いだなんて……まだ結婚しておりませんのに……」
美しい姿に棘を隠し、強かに勝ち抜く社交界の薔薇のような強い女性になれるわけがない。真っ赤な顔して身悶えるネリーネは俺には可愛い素直な少女にしかもう見えなかった。
「ここで降ろしてくれ」
馬車から降り、街を歩く。
ネリーネから『気の利かない俺が丁度いい』と言われたからと何もしないわけにはいかない。
花束の一つでも買って訪ねよう。
海向かいの隣国との国交回復に王都は祝賀ムード一色だ。迎賓であるイスファーンの王女殿下の愛称が『ひまわり姫』ということもあって今若い女性たちに向日葵が流行っているらしい。というのをケインとニールスから聞いた。
花売りをしている子供に声をかけ小ぶりな花束を選ぶ。
俺は、照り返す日差しをものともせずにデスティモナ伯爵邸に向かった。
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相変わらず目に痛い色彩のドレスを見に纏ったネリーネがフスフスと鼻息を荒くして自慢げに座っている。
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身体に沿ったデザインはネリーネの肉感的な身体つきを強調し、胸元や背中はレース生地で覆われてはいるけれど、透けて見える肌は余計艶かしい。宝石や真珠がこれでもかと縫い付けてあり、まるで歩く宝石箱だ。胸元につけたネリネの花のブローチがまるで陳腐な玩具に見える。
一体どういうつもりなのだろう。いつもの派手な格好とはまた異なる種類の派手な装いに戸惑う。
「……ネリーネお嬢様がステファン様に会うからと、お気に入りのドレスでおめかししていらっしゃいます」
ミアがお茶を置くときに俺に耳打ちする。
俺の、ために、おめかし、だと……
可愛い。
褒め言葉を探そうとネリーネを見るが、正直にいえば結局派手なこと以外の感想はない。
「今日は随分派手な……」
ネリーネの期待がこもった眼差しは普段にも増して派手な化粧で睨みが効いている。俺はごくりと唾を飲み込む。
「えっと……そうだ。大人びて見えるな」
ネリーネは満足気に髪の毛をかき上げる。筒状に巻いた髪の毛がぶるんと揺れる。
「いつもの子供みたいなリボンやフリルがいっぱいのドレスは、わたくしはもう大人ですからそろそろ卒業しても良い頃なのですけど、お父様はまだまだわたくしに幼いネリーネでいて欲しいのですわ。わたくしだってこういう大人っぽい格好も似合いますでしょう?」
「……あぁ、そうだな」
以前、自分の趣味ではないドレスを父親の趣味で着させられている話を聞いた時に、皆が噂するよりも控えめなのだと思っていたが、ネリーネのお気に入りのドレスも派手で趣味がいいとは言い難い。
よくまぁ、他人のことを悪趣味扱いしたものだ。
「どうせ、周りから毒花令嬢と呼ばれるのであれば、お祖母さまのように男性とも議論が交わせるような強い女性でありたいと思いますの」
ネリーネは自分の胸に手を当てて誇らし気に胸を張る。毒花令嬢と呼ばれることになんの反省もないらしい。
「ロザリンド夫人は男性とも議論を交わされていたが、社交界の薔薇と呼ばれていたと聞いている。わざわざ毒花令嬢らしい振る舞いをする必要はないのではないか? それにその格好だと毒花令嬢というよりも毒花夫人の方がお似合いだな」
呆れた俺が言い返すとネリーネの顔が赤くなる。
「夫人の方がお似合いだなんて……まだ結婚しておりませんのに……」
美しい姿に棘を隠し、強かに勝ち抜く社交界の薔薇のような強い女性になれるわけがない。真っ赤な顔して身悶えるネリーネは俺には可愛い素直な少女にしかもう見えなかった。
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