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5 ペネロペside
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「お父様……?」
「あぁ、ペネロペ。私の執務室で待つように言っておいたのに、どうして王族の休息室にいるんだい? 迷子にでもなって潜り込んでしまったのかな? まぁ、ちょうどいい。王太子殿下は最近公務に駆り出されてお忙しくてお疲れのご様子でね。私としても心配でこちらで休息頂こうと思ってお連れしたのだよ。私の代わりにペネロペが殿下のお世話をして差し上げなさい」
迷子?
お父様が連れてきたのに?
口元まで出かかった言葉を私は飲み込む。
お疲れの様子の殿下を、お父様は支えながら部屋に入ってらした。
そうか、この部屋は王族の方が役人との打ち合わせなどにいらした際に休む部屋だったのね。
「……キャンベル伯爵。私は疲れてなどいない。貴族院の会合で隣国との協議内容をつめるために王宮に戻ってきたのだ。時間がない。キャンベル伯爵令嬢、この部屋に迷い込んだ事は咎め立てたりしない。キャンベル伯爵の執務室に早く戻りなさい」
私に向かって微笑んではくださったけど、言葉は有無を言わせない。
でも、最初からこの部屋に連れてこられた私はどこにどう戻ればいいのか見当がつかない。
お父様は笑みを浮かべて、殿下を続き部屋に連れて行く。
「殿下。そうおっしゃらずに。この部屋は私の信頼が厚い部下を見張りに立てますので、ゆっくりお休みください。決議結果の書類はお休みいただいた後にお持ちしますよ」
そう言ってお父様は殿下をベッドに座らせる。
「……キャンベル伯爵。どういうつもりだ」
「どういうつもりもありませんよ。どうぞごゆっくり」
殿下は本当に具合が悪いのか、口ではお父様を咎めているのにベッドから立ち上がる事もままならない様で心配になる。
「……この好機を物にするんだ。わかってるなペネロペ」
固まっていた私に耳打ちして部屋を去るお父様が、扉を閉める時に見張りに立てた部下と下卑た笑顔で目配せしているのが見えた。
殿下を籠絡せ。
つまり、そういう事よね?
背中に嫌な汗が流れる。
姦計を謀るなんて本当に私に出来るの?
ううん。
……出来るかじゃない。
やらなきゃいけない。
やらなきゃ、お父様の娘としての存在意義はない。
私は決意して続き部屋に入り、殿下に顔を向ける。
……⁉︎
ベッドに座り込んでいらっしゃる殿下の顔色は先ほどより血の気がない。
ハンカチを口元に当てて震えている。
「殿下! 大丈夫ですか? 顔色が……」
「……キャンベル伯爵令嬢。私はいま寝不足なだけだ。落ち着いたらすぐ部屋を出る。心配はいらないから一人にしてくれないか」
駆け寄って近づくと脂汗を額にびっしりと浮かべている。
「横になって休まれた方がよろしいわ」
殿下は貴族院の会合に出られるご予定とおっしゃっていたからか、詰襟の正装をお召しになっている。
素敵だけど、今はきっと苦しいはず。
服装を緩めて差し上げないと……
「殿下。失礼します」
「近寄るな!」
私が服を緩めるために伸ばした手を乱暴に払い除けられる。
いつもの微笑みと異なり眉間に皺をよせ睨みつける。まるで威嚇するような眼差し……
頭の中をガンガン殴られているみたいなショックを受ける。
「ちっ……ちが……苦しそうだから……」
何か言おうとしても言い訳にしか聞こえない。
だってお父様の期待に応えるっていうのはそういう事だもの。
そんなつもりなかったなんて綺麗事だわ。
殿下のお怒りをかったなら、それ相応の罰を受けなくては。
私だって貴族の端くれとしてプライドがある。
自ら罰を受けに行こう。
「……近衛騎士をお呼びしますか」
「……キャンベル伯爵令嬢。私の体調不良を心配して友人がこの部屋の近くに控えているはずだ」
「……え?」
「偶然この部屋にいた君は私を心配してくれているのだよね? 友人を呼んできてくれないか?」
殿下はそう言って力なく笑った。
殿下が部屋を出る口実を与えて下さった。
私は殿下に姦計を企てたわけじゃない。
偶然居合わせて具合の悪い殿下を助けた事にしようとして下さっている。
「もちろんです」
私はそう言って、部屋を飛び出した。
「あぁ、ペネロペ。私の執務室で待つように言っておいたのに、どうして王族の休息室にいるんだい? 迷子にでもなって潜り込んでしまったのかな? まぁ、ちょうどいい。王太子殿下は最近公務に駆り出されてお忙しくてお疲れのご様子でね。私としても心配でこちらで休息頂こうと思ってお連れしたのだよ。私の代わりにペネロペが殿下のお世話をして差し上げなさい」
迷子?
お父様が連れてきたのに?
口元まで出かかった言葉を私は飲み込む。
お疲れの様子の殿下を、お父様は支えながら部屋に入ってらした。
そうか、この部屋は王族の方が役人との打ち合わせなどにいらした際に休む部屋だったのね。
「……キャンベル伯爵。私は疲れてなどいない。貴族院の会合で隣国との協議内容をつめるために王宮に戻ってきたのだ。時間がない。キャンベル伯爵令嬢、この部屋に迷い込んだ事は咎め立てたりしない。キャンベル伯爵の執務室に早く戻りなさい」
私に向かって微笑んではくださったけど、言葉は有無を言わせない。
でも、最初からこの部屋に連れてこられた私はどこにどう戻ればいいのか見当がつかない。
お父様は笑みを浮かべて、殿下を続き部屋に連れて行く。
「殿下。そうおっしゃらずに。この部屋は私の信頼が厚い部下を見張りに立てますので、ゆっくりお休みください。決議結果の書類はお休みいただいた後にお持ちしますよ」
そう言ってお父様は殿下をベッドに座らせる。
「……キャンベル伯爵。どういうつもりだ」
「どういうつもりもありませんよ。どうぞごゆっくり」
殿下は本当に具合が悪いのか、口ではお父様を咎めているのにベッドから立ち上がる事もままならない様で心配になる。
「……この好機を物にするんだ。わかってるなペネロペ」
固まっていた私に耳打ちして部屋を去るお父様が、扉を閉める時に見張りに立てた部下と下卑た笑顔で目配せしているのが見えた。
殿下を籠絡せ。
つまり、そういう事よね?
背中に嫌な汗が流れる。
姦計を謀るなんて本当に私に出来るの?
ううん。
……出来るかじゃない。
やらなきゃいけない。
やらなきゃ、お父様の娘としての存在意義はない。
私は決意して続き部屋に入り、殿下に顔を向ける。
……⁉︎
ベッドに座り込んでいらっしゃる殿下の顔色は先ほどより血の気がない。
ハンカチを口元に当てて震えている。
「殿下! 大丈夫ですか? 顔色が……」
「……キャンベル伯爵令嬢。私はいま寝不足なだけだ。落ち着いたらすぐ部屋を出る。心配はいらないから一人にしてくれないか」
駆け寄って近づくと脂汗を額にびっしりと浮かべている。
「横になって休まれた方がよろしいわ」
殿下は貴族院の会合に出られるご予定とおっしゃっていたからか、詰襟の正装をお召しになっている。
素敵だけど、今はきっと苦しいはず。
服装を緩めて差し上げないと……
「殿下。失礼します」
「近寄るな!」
私が服を緩めるために伸ばした手を乱暴に払い除けられる。
いつもの微笑みと異なり眉間に皺をよせ睨みつける。まるで威嚇するような眼差し……
頭の中をガンガン殴られているみたいなショックを受ける。
「ちっ……ちが……苦しそうだから……」
何か言おうとしても言い訳にしか聞こえない。
だってお父様の期待に応えるっていうのはそういう事だもの。
そんなつもりなかったなんて綺麗事だわ。
殿下のお怒りをかったなら、それ相応の罰を受けなくては。
私だって貴族の端くれとしてプライドがある。
自ら罰を受けに行こう。
「……近衛騎士をお呼びしますか」
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「……え?」
「偶然この部屋にいた君は私を心配してくれているのだよね? 友人を呼んできてくれないか?」
殿下はそう言って力なく笑った。
殿下が部屋を出る口実を与えて下さった。
私は殿下に姦計を企てたわけじゃない。
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「もちろんです」
私はそう言って、部屋を飛び出した。
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