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3章
初遠征
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成実「準備はいいか?」
伊沖隊はうなずいた。
景鈴「なんであんたも緊張してんのよ。」
遥「わ、私だって初めてですよ!緊張しますよ!」
景鈴「ふふっ。でも、連れていく側よ。もっと凛としなさい。」
遥「はいっ!」
重宗「どうだ?里帰りの気分は。」
成実「生まれ故郷だけど記憶ないし、緊張するよ。」
事務員「ゲート、展開します!」
高さ2mほどある門の形をした枠に、エネルギーが流し込まれる。
空洞だった枠の中に、黒く渦巻く空間ができあがる。中を覗き込んでも奥が見えない。ただ黒があるだけだった。
景鈴「行くわよ。」
柿崎 景鈴隊長を先頭に、柿崎隊、伊沖隊と続いて門をくぐる。
門を出た先は白く、何も無い部屋が広がっていた。
景鈴「門を出てすぐ待ち伏せをしたりすることがないように、ここには人がいないようになっているの。」
景鈴は出口に近づくと、通信機を手にした。
景鈴『柿崎隊、伊沖隊、到着しました。』
アナウンス『承知しました。今、開けますね』
出口のドアが開き、景鈴らは外へと出た。
外へ出た景鈴を、1人の女性魔族が待ち受けていた。彼女は深くお辞儀をし、自己紹介をした。
ネムリ「初めまして。『アレストラ』のネムリと申します。今回の付き人としてお仕えいたします。よろしくお願いします。」
景鈴「柿崎隊、隊長の柿崎景鈴です。」
成実「伊沖隊、隊長の伊沖成実です。よろしくお願いします。」
ネムリ「1週間の滞在と聞いております。交代式は2日後の予定です。先にお部屋を案内いたしますね。」
景鈴らは、ネムリについて行き、宿泊用の部屋に案内された。隊に1つの部屋で、中には1人ひとつのベッドが用意された広い部屋があった。寝室と合わせて3つの部屋がある。
成実「広いな。」
ネムリ「満足いただけて光栄です。まずは、荷物を整理なさってください。何かありましたら、そちらの通信機でご連絡ください。私と、柿崎隊の方へ内線をかけることが可能になっております。外出の際も、一報ください。ご案内いたします。」
成実「わかりました。ありがとうございます。」
ネムリが退室し、成実らは各々のベッドを決め、荷解きを始めた。
昭夫「成実、この前みたいに魔力を身体に感じたりしないのか?」
成実「そうだな。魔界は魔力があるから少し不安だったんだが、今のところは関係なさそうだ。あの時は、生身なのに戦える力が欲しいと思ってしまったせいだろう。」
昭夫「戦闘体じゃ魔力が流れないってことかな。魔界じゃ戦闘体を解くのも絶対禁止だし、安心だな。」
成実「そうだなぁ。」
昭夫「成実、無茶なことするなよ。」
成実「わかってるよ。」
成実がぶっきらぼうに返事する。
伊沖隊と柿崎隊は、ネムリの案内で現王のケーニヒに挨拶へ向かった。
ネムリがノックをし、返事を待って入室する。
王室の中には大きなベッドがあり、王が横になっていた。
ケーニヒ「人間の皆様、申し訳ない。横になったまま挨拶させていただきたい。『アレストラ』の国王、ケーニヒです。」
病に伏した国王は、病気を感じさせぬ身体つきで、優しげながらも鋭い眼光を宿らせていた。白髪は綺麗に整えられ、後ろに流している。その威圧感とは裏腹に丁寧な挨拶を成実らにした。
景鈴「はじめまして、柿崎隊隊長、柿崎景鈴です。」
成実「伊沖隊隊長、伊沖成実です。」
ケーニヒ「!!君があの…。…聞いているよ。お父上の足跡を辿る任務も兼ねていると。」
成実「はい、よろしくお願いします。お父上のことをご存知で?」
ケーニヒ「ああ、精悍な男だったよ。人間界へ任務に行く前に話したくらいだが。国民の人気も高い、軍隊長だったよ。」
成実「そうなんですね…。」
ケーニヒ「ゴホッゴホッ!…まあ、交代式への参加も感謝いたします。ゆっくりしていってください。」
景鈴「お身体のこと、伺っております。お大事にされてください。」
伊沖隊と柿崎隊は、ネムリの案内で王宮をまわった。
成実「こんな広い王宮のうちの一室が、俺らの宿泊部屋か。迷子になりそうだな…。」
昭夫「なんでだ?トイレさえ覚えてれば、あとはネムリさんと行動する場所しかないだろ。」
成実「ったく、真面目なんだから。」
ネムリ「ふふっ。冒険心は結構ですが、王宮ではやめてくださいね。」
成実「はい、もちろん。」
成実はいい笑顔で答えた。
ネムリの案内で、高所の中庭に通された。
ネムリ「ここから国が一望できます。」
遥「すごい…」
重宗「うわぁ。すげえ。」
高地に建造された王宮の、上層にある中庭からは『アレストラ』の街並みが見えた。奥にある山までスッキリと見えている。
???「!!先客ですか。初めまして。」
成実らの背後から声がかかる。振り向くと、スタイルの整った高身長で、衣服に派手さはないものの高貴さを感じさせる雰囲気を漂わせ、腰に剣を帯びた青年が歩み寄っていた。
ハーン「私はハーン。ヴァッサー家の長男です。柿崎隊、伊沖隊の皆様、よろしくお願いします。」
景鈴「初めまして、ハーン王子。柿崎隊、隊長の柿崎景鈴と申します。」
成実「初めまして。伊沖隊の隊長、伊沖成実です。此度は、よろしくお願いします。」
ハーン「資料で拝見しました。交代式も含め1週間の滞在、ゆっくりされてください。」
それからハーンは中庭の端まで歩き、街を眺め始めた。
伊沖「王子で長男ってことは、あの人が国王になるのか。」
ネムリ「それが…、そうではないんです。」
景鈴「あら、なにか事情が?」
ネムリ「2日後の交代式では、次男のシャリゼ様が国王になられます。ハーン様は、無能力者なんです。」
ネムリは遠い目でハーンを見ながらこぼした。
ネムリ「シャリゼ様は黒炎を操る剣術の使い手で、国王として申し分ない戦闘能力をお持ちです。一方、ハーン様は魔力量こそ多いですが能力を持たず、国王としての戦闘力が不十分なんです。」
重宗「…魔界の国は戦いが全てか。難しいな。」
ネムリ「ただ…」
ネムリは何かを言いかけて口を閉じた。成実らは、空気を読んで話を広げず王宮の案内を続けてもらうことにした。
伊沖隊はうなずいた。
景鈴「なんであんたも緊張してんのよ。」
遥「わ、私だって初めてですよ!緊張しますよ!」
景鈴「ふふっ。でも、連れていく側よ。もっと凛としなさい。」
遥「はいっ!」
重宗「どうだ?里帰りの気分は。」
成実「生まれ故郷だけど記憶ないし、緊張するよ。」
事務員「ゲート、展開します!」
高さ2mほどある門の形をした枠に、エネルギーが流し込まれる。
空洞だった枠の中に、黒く渦巻く空間ができあがる。中を覗き込んでも奥が見えない。ただ黒があるだけだった。
景鈴「行くわよ。」
柿崎 景鈴隊長を先頭に、柿崎隊、伊沖隊と続いて門をくぐる。
門を出た先は白く、何も無い部屋が広がっていた。
景鈴「門を出てすぐ待ち伏せをしたりすることがないように、ここには人がいないようになっているの。」
景鈴は出口に近づくと、通信機を手にした。
景鈴『柿崎隊、伊沖隊、到着しました。』
アナウンス『承知しました。今、開けますね』
出口のドアが開き、景鈴らは外へと出た。
外へ出た景鈴を、1人の女性魔族が待ち受けていた。彼女は深くお辞儀をし、自己紹介をした。
ネムリ「初めまして。『アレストラ』のネムリと申します。今回の付き人としてお仕えいたします。よろしくお願いします。」
景鈴「柿崎隊、隊長の柿崎景鈴です。」
成実「伊沖隊、隊長の伊沖成実です。よろしくお願いします。」
ネムリ「1週間の滞在と聞いております。交代式は2日後の予定です。先にお部屋を案内いたしますね。」
景鈴らは、ネムリについて行き、宿泊用の部屋に案内された。隊に1つの部屋で、中には1人ひとつのベッドが用意された広い部屋があった。寝室と合わせて3つの部屋がある。
成実「広いな。」
ネムリ「満足いただけて光栄です。まずは、荷物を整理なさってください。何かありましたら、そちらの通信機でご連絡ください。私と、柿崎隊の方へ内線をかけることが可能になっております。外出の際も、一報ください。ご案内いたします。」
成実「わかりました。ありがとうございます。」
ネムリが退室し、成実らは各々のベッドを決め、荷解きを始めた。
昭夫「成実、この前みたいに魔力を身体に感じたりしないのか?」
成実「そうだな。魔界は魔力があるから少し不安だったんだが、今のところは関係なさそうだ。あの時は、生身なのに戦える力が欲しいと思ってしまったせいだろう。」
昭夫「戦闘体じゃ魔力が流れないってことかな。魔界じゃ戦闘体を解くのも絶対禁止だし、安心だな。」
成実「そうだなぁ。」
昭夫「成実、無茶なことするなよ。」
成実「わかってるよ。」
成実がぶっきらぼうに返事する。
伊沖隊と柿崎隊は、ネムリの案内で現王のケーニヒに挨拶へ向かった。
ネムリがノックをし、返事を待って入室する。
王室の中には大きなベッドがあり、王が横になっていた。
ケーニヒ「人間の皆様、申し訳ない。横になったまま挨拶させていただきたい。『アレストラ』の国王、ケーニヒです。」
病に伏した国王は、病気を感じさせぬ身体つきで、優しげながらも鋭い眼光を宿らせていた。白髪は綺麗に整えられ、後ろに流している。その威圧感とは裏腹に丁寧な挨拶を成実らにした。
景鈴「はじめまして、柿崎隊隊長、柿崎景鈴です。」
成実「伊沖隊隊長、伊沖成実です。」
ケーニヒ「!!君があの…。…聞いているよ。お父上の足跡を辿る任務も兼ねていると。」
成実「はい、よろしくお願いします。お父上のことをご存知で?」
ケーニヒ「ああ、精悍な男だったよ。人間界へ任務に行く前に話したくらいだが。国民の人気も高い、軍隊長だったよ。」
成実「そうなんですね…。」
ケーニヒ「ゴホッゴホッ!…まあ、交代式への参加も感謝いたします。ゆっくりしていってください。」
景鈴「お身体のこと、伺っております。お大事にされてください。」
伊沖隊と柿崎隊は、ネムリの案内で王宮をまわった。
成実「こんな広い王宮のうちの一室が、俺らの宿泊部屋か。迷子になりそうだな…。」
昭夫「なんでだ?トイレさえ覚えてれば、あとはネムリさんと行動する場所しかないだろ。」
成実「ったく、真面目なんだから。」
ネムリ「ふふっ。冒険心は結構ですが、王宮ではやめてくださいね。」
成実「はい、もちろん。」
成実はいい笑顔で答えた。
ネムリの案内で、高所の中庭に通された。
ネムリ「ここから国が一望できます。」
遥「すごい…」
重宗「うわぁ。すげえ。」
高地に建造された王宮の、上層にある中庭からは『アレストラ』の街並みが見えた。奥にある山までスッキリと見えている。
???「!!先客ですか。初めまして。」
成実らの背後から声がかかる。振り向くと、スタイルの整った高身長で、衣服に派手さはないものの高貴さを感じさせる雰囲気を漂わせ、腰に剣を帯びた青年が歩み寄っていた。
ハーン「私はハーン。ヴァッサー家の長男です。柿崎隊、伊沖隊の皆様、よろしくお願いします。」
景鈴「初めまして、ハーン王子。柿崎隊、隊長の柿崎景鈴と申します。」
成実「初めまして。伊沖隊の隊長、伊沖成実です。此度は、よろしくお願いします。」
ハーン「資料で拝見しました。交代式も含め1週間の滞在、ゆっくりされてください。」
それからハーンは中庭の端まで歩き、街を眺め始めた。
伊沖「王子で長男ってことは、あの人が国王になるのか。」
ネムリ「それが…、そうではないんです。」
景鈴「あら、なにか事情が?」
ネムリ「2日後の交代式では、次男のシャリゼ様が国王になられます。ハーン様は、無能力者なんです。」
ネムリは遠い目でハーンを見ながらこぼした。
ネムリ「シャリゼ様は黒炎を操る剣術の使い手で、国王として申し分ない戦闘能力をお持ちです。一方、ハーン様は魔力量こそ多いですが能力を持たず、国王としての戦闘力が不十分なんです。」
重宗「…魔界の国は戦いが全てか。難しいな。」
ネムリ「ただ…」
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