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3章
次期国王
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成実「本当に広い王宮だな。さすが魔界1の大国。」
ネムリ「ありがとうございます。王族の方々だけでなく、たくさんの客人や使用人の生活スペースでもありますから。」
ネムリの案内で景鈴らは自室に戻っていた。その道中、複数の侍女を連れた男性とすれ違った。
ハーンと同じような服装に身を包んでいる。歩き方から、相当な強者であることが伝わる。
ネムリ「シャリゼ様。こんにちは。こちら、エヴィデンスからの使者様です。」
シャリゼ「これが…。ったく、来なくてもいいって伝えたのに。」
シャリゼは見下ろすように成実らを見た。
成実(なんだ…この目は…憎悪…侮蔑…嫌悪…、ほんとに兄弟か?!)
景鈴「は、初めまして。柿崎隊の…」
景鈴が自己紹介を終える前にじゃリゼは歩き始めた。
ネムリ「シャリゼ様!」
シャリゼ「うるせぇ。何を聞く必要がある。資料で見た。どうでもいいだろ。」
シャリゼはネムリと目も合わせず、立ち去った。
ネムリ「申し訳ありません。」
景鈴「いえ、大丈夫です。」
成実(ハーン王子と見た目はそっくりなのにな。)
言葉に出来ないモヤモヤを抱え、成実たちは自室へ戻った。
昭夫「シャリゼ王子が即位したら、どうなるんだろうな。」
重宗「どう、ってのは?」
昭夫「『アレストラ』との同盟は、国王と国民の親和性によって成り立ってる。人間界との技術や情報の共有やエネルギーの提供など、『アレストラ』にメリットがある同盟としても、国王が排他的な思想だったら、同盟自体がなくなることもありえる。」
成実「確かにな…。同盟がなくなったら、人間界は終わりだぞ…。」
男部屋に重い沈黙が流れた。
翌日は、『アレストラ』の街並みを2隊で観光に行った。
ネムリには王宮の中での仕事があるということで、ガイドとして王宮の目の前にある街「カウスト」の役人、ベアムテが案内した。
重宗「国民もフレンドリーで、話しやすいな。とても魔族とは思えない。」
盛也「魔族にも様々いるってことだな。飯も美味くて助かる。」
成実「魔族とは思えないって差別だぞ。気をつけろ。」
重宗「あぁ、すまない。そうだな。ただ、安心したんだよ。人間界だけで生きてたら、魔族は人攫いも人殺しもする極悪人だ。同盟なんて、魔族にいいように搾取されているだけでメリットを産むから成り立つ、綱渡りのようなものだって思ってた。でも、そんな背景を全然感じない。親和的で本当に人間が好きなんだろうな。」
景鈴「そうね、この国は種族の垣根もなくて過ごしやすいわ。でも、この国だけじゃないのよ。私が前に潜入した国にも、人間族に優しい魔族は何人もいたよ。魔族のふりをして潜入してた中、そんな人たちを見たから、根っこからそうなんでしょうね。まあ、敵とか家畜としか見てない魔族がほとんどだったけど。」
重宗「遠征って、見方変わるな…。」
柿崎隊の遠征話を交えつつ、街を散策していたが、成実たちに聞こえてきたのは不思議な話だった。
露店売り「いやぁ、しかしやっと明日か。新王の就任は。」
客「前王政もやっと終わりだな。シャリゼ王なら、きっと国民を充実させてくれるだろ。」
露店売り「あのクソ王よりましさ。ギャハハ。」
客「ハーン王子もよく顔を見せに街におりてきてくれるし、あの兄弟ならいい国になりそうだ。」
通りかかった店先から、常連客と店主の会話が聞こえた。その会話に、成実は首を傾げた。
成実「シャリゼ王子は国民には人気なんだな。公の前ではいい顔するタイプなのか?」
重宗「俺らにとってのいい顔が、魔族にとってもいいとは限らないだろ。温和な人間が魔族にとっての悪かもしれない。」
成実「…それもそうだな。」
ネムリ「ありがとうございます。王族の方々だけでなく、たくさんの客人や使用人の生活スペースでもありますから。」
ネムリの案内で景鈴らは自室に戻っていた。その道中、複数の侍女を連れた男性とすれ違った。
ハーンと同じような服装に身を包んでいる。歩き方から、相当な強者であることが伝わる。
ネムリ「シャリゼ様。こんにちは。こちら、エヴィデンスからの使者様です。」
シャリゼ「これが…。ったく、来なくてもいいって伝えたのに。」
シャリゼは見下ろすように成実らを見た。
成実(なんだ…この目は…憎悪…侮蔑…嫌悪…、ほんとに兄弟か?!)
景鈴「は、初めまして。柿崎隊の…」
景鈴が自己紹介を終える前にじゃリゼは歩き始めた。
ネムリ「シャリゼ様!」
シャリゼ「うるせぇ。何を聞く必要がある。資料で見た。どうでもいいだろ。」
シャリゼはネムリと目も合わせず、立ち去った。
ネムリ「申し訳ありません。」
景鈴「いえ、大丈夫です。」
成実(ハーン王子と見た目はそっくりなのにな。)
言葉に出来ないモヤモヤを抱え、成実たちは自室へ戻った。
昭夫「シャリゼ王子が即位したら、どうなるんだろうな。」
重宗「どう、ってのは?」
昭夫「『アレストラ』との同盟は、国王と国民の親和性によって成り立ってる。人間界との技術や情報の共有やエネルギーの提供など、『アレストラ』にメリットがある同盟としても、国王が排他的な思想だったら、同盟自体がなくなることもありえる。」
成実「確かにな…。同盟がなくなったら、人間界は終わりだぞ…。」
男部屋に重い沈黙が流れた。
翌日は、『アレストラ』の街並みを2隊で観光に行った。
ネムリには王宮の中での仕事があるということで、ガイドとして王宮の目の前にある街「カウスト」の役人、ベアムテが案内した。
重宗「国民もフレンドリーで、話しやすいな。とても魔族とは思えない。」
盛也「魔族にも様々いるってことだな。飯も美味くて助かる。」
成実「魔族とは思えないって差別だぞ。気をつけろ。」
重宗「あぁ、すまない。そうだな。ただ、安心したんだよ。人間界だけで生きてたら、魔族は人攫いも人殺しもする極悪人だ。同盟なんて、魔族にいいように搾取されているだけでメリットを産むから成り立つ、綱渡りのようなものだって思ってた。でも、そんな背景を全然感じない。親和的で本当に人間が好きなんだろうな。」
景鈴「そうね、この国は種族の垣根もなくて過ごしやすいわ。でも、この国だけじゃないのよ。私が前に潜入した国にも、人間族に優しい魔族は何人もいたよ。魔族のふりをして潜入してた中、そんな人たちを見たから、根っこからそうなんでしょうね。まあ、敵とか家畜としか見てない魔族がほとんどだったけど。」
重宗「遠征って、見方変わるな…。」
柿崎隊の遠征話を交えつつ、街を散策していたが、成実たちに聞こえてきたのは不思議な話だった。
露店売り「いやぁ、しかしやっと明日か。新王の就任は。」
客「前王政もやっと終わりだな。シャリゼ王なら、きっと国民を充実させてくれるだろ。」
露店売り「あのクソ王よりましさ。ギャハハ。」
客「ハーン王子もよく顔を見せに街におりてきてくれるし、あの兄弟ならいい国になりそうだ。」
通りかかった店先から、常連客と店主の会話が聞こえた。その会話に、成実は首を傾げた。
成実「シャリゼ王子は国民には人気なんだな。公の前ではいい顔するタイプなのか?」
重宗「俺らにとってのいい顔が、魔族にとってもいいとは限らないだろ。温和な人間が魔族にとっての悪かもしれない。」
成実「…それもそうだな。」
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